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「ミレイちゃん、順調そうね」
「あ、レベッカさん。はい、ありがたいことに」
薬草摘みに夢中になっていた私を現実に引き戻したのは、近寄ってきた彼女の一声だった。
まぁ周囲の警戒は怠ってませんので、皆の位置や魔獣との距離なんかは把握しているけれどね。
「ただ、あちら……もう少し行ったところに、たぶん私が欲しい薬草があるんですよね……」
ふと立ち上がり、前方に視線を流した。
探索でわかっているものの、採りに行けないもどかしさ。
かといって、錬成でぶんどるのは違うと思っている。
「あっち? うーん、そうねぇ。ミレイちゃん、このあたりに、魔獣は居るのかしら?」
レベッカさんとてわからなくて訊いているのではない。
おそらくこれも依頼の一端なのだろうが、レベッカさんたちは私が魔獣の気配を察知、というのは少し違うけど、見つけられるのを知らされていないのだろうか?
「いえ、周囲……少なくとも100ミーダには居ないと思います。嫌な感じがないので」
500ミーダ以内に居ないことはわかっているが、おそらく普通ならばこのあたりが察知出来る範囲だろう。
疑われないよう、少し控えめにね。
それを告げると、レベッカさんも途端に笑顔となり、前方を指さした。
「そうね、正解よ。あっちに行きたいのね? 少し待っててもらえるかしら」
私が頷いたのを確認すると、レベッカさんのチームのリーダーである、ジョージさんのもとへと向かっていった。
おや、これはもしや。
ほんの二言三言交わしたレベッカさんは、すぐさま私のもとへと戻ってきた。
表情を見るに、おそらく悪いことにはならなそうだが。
「今リーダーの許可を取ってきたわ。私と一緒に行くなら良いって。そのかわり、絶対に勝手な行動はしないこと。私の後ろを歩くこと。良いかしら?」
「はいっ! ありがとうございますっ」
目的も訊かずに許可を取ってきてくれたレベッカさんには感謝しかない。
いくらこのあたりの魔獣が私にとって問題がなく、またレベッカさんにとってはとるに足らないレベルだったとしても、依頼で来ている以上は勝手な行動は取れないから。
……はやく自由になりたいです。
私の示した方向へ進むことわずか5分ほど。
皆がいる採取地からはそれほど離れた訳ではないけれど、レベッカさんの後ろから覗くだけでも十分なまでにそこの様相は先ほどの場所とは一変していた。
「……やっぱり、ありました」
「ミレイちゃん、どうしてこれが?」
不思議そうに振り向くレベッカさんの後ろには、一面の黒い百合が咲いていた。
欲しかったのは、ミリーの花。
私の名前のもととなった花であり、母の一番好きな花。
「……これ、母が好きなんです。ここにしかないから、摘んで行きたくて」




