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赤ちゃんスタート、かと思いきや……さ、3歳、だと?
「……みおぼえない、てんじょー、だ」
うん、言ってみたかったんだ。どうやら、私は今ベッドの上で仰向けらしい。
起き上がって周りをよく観察すると、白いレンガで出来た壁に囲まれ、なんだか……額に三日月の傷のクマのような何かが首にスカーフを巻いたもの、ウサギのような何かが頭部以外に鎧を身につけているもの、ウシのような何かが長靴をはいて槍を手に持っているもの、そんなぬいぐるみが大小、ところ狭しと床に放置されている。
並んでるのではない。乱雑に放置されていた。
「もふもふ……だと?」
ついもふもふに目がない私が触ろうと手を伸ばすと、急激に世界が反転する。
「うひょえぃっ!?」
その伸ばした右手を見て気づく。
そうか、私はまだ赤ちゃん……よりは成長してるのかな?
それにしたって、子供がいきなり立ち上がるには無理がある。普通は起き上がることすら出来ないはず。
あれ? でも喋れたから0才ではないはずでは? ということは、立てても不思議でない、のか?
というか、そういえば何か日本語でない言語さっきから喋ってるな。意味はわかるけれども。
これがここの言語、なのかな。
ガツンッ!と、なんとも豪快な程の音を響かせて、私は後頭部をしたたかに打ち付けた。
頭から落ちるとは……不覚っ!
「ミレイッ!」
激しい騒音とともに、見目麗しい女性が私の部屋と思われるここに飛び込んできた。
どうでもいいけど、そんな豪快に開けて壊れないんですか?
木製ですよね? その扉……。
「あぁ、ミレイ! またベッドから落ちて……!」
「すこーし、おちつきましょ? かーさ」
まだちょっと喋りなれないなぁ。
お母さま、って言うはずが、かーさ、って!
あなた、誰? なんて疑問は出なかった。私はこの美人を知っている。
不思議な感覚だ。私の中に『山城 桜良』と『ミレイ』がいる。
どちらも私で、今頭を打ったことで状況が整理できた。
怪我の功名ってこのことだねっ!
これまでの私はどうやらただ本能で生きてきたようで、あまり記憶がない。
だが、わかるのだ。目の前の人が母であると。
理屈なんかじゃなく。