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まぁそれはさておき、レベッカさんの横に歩み寄ると、彼女は短剣を手に取ったりして真剣に吟味していた。重さや大きさを測っているのだと思う。
「それよりレベッカさん、良さげなモノはありました?」
「これとか良いわね」
そう言って満足そうに掲げた短剣は刃渡り25セルほどの大ぶりなモノ。
装飾などは特になく、見本品なので少々重さのバランスが悪そうだが、使う分には問題なさそうなほどの品質だ。
一番悪い品物のはずだが、やはりショウタさんの刃物はモノが良いね。
「なら、それに近いヤツを持ってきますね。少しお待ちください」
トール君が裏に武器を取りに行っている間、私は少々気になっていたことがあったので、レベッカさんに尋ねてみた。
「でもレベッカさん、腰にさしてあるのってロングソードですよね? 短剣は何に使うんですか?」
見た目通りなら、彼女は長剣使いだ。短剣を必要とするとは思えないのだが。
「あぁ、私は戦うのはロングソードだけど、雑務もするから。短剣って使い勝手が良いのよ。咄嗟にサブ武器にもなるし、包丁がわりにもなるしね」
なるほど、どうやら主な戦い用ではなく何らかの理由でロングソードがなくなった緊急時や、枝を削ったり、料理をする時に使ったり、などのいわゆるサバイバルナイフのような用途らしい。
それならわかる。
今まで特に必要もなかったから持っていなかったけれど、私も後で一本作って持っておこう。どうせ旅に出る時には作る予定のものだ。
「そうなんですね。勉強になります」
「ミレイちゃんは冒険者になるつもりなのかしら? なら、少しは役に立てたのかな」
レベッカさんはどうやら短剣に興味を示した私が冒険者になりたいのだと勘違いしたらしい。けど、私が目指しているのはあくまでも行商人である。
「あ、いえ、私は冒険者ではなく、方々をまわる行商を目指しているんです。なのでいつかは武術ランクもCくらいにはなりたいです」
家族もまだ知らない、私の目標。
それを話したのは、たぶんこれが初めてだと思う。
「あら、そうなの? でも普通行商って商隊を組んで護衛をお願いするものじゃない? そこまで強くなる必要もないと思うけれど……」
レベッカさんの言う通り、普通の行商は10人から20人くらいの大所帯で移動するものだ。
けれど、私は出来れば自由気ままに生きて行きたい。
ひとりで出来るかはわからないけれど、そもそもあまり大人数とつるむのも得意ではないから。
「何かあった時に、戦えないよりは、戦えた方が死ななくてすむかなって思ったんです」
いつか。この村を出て、私の好きな装飾品とかを売って生きて行きたい。
きっとその時は一人だから、自衛手段くらいは持っておきたい。
「まぁ自衛手段は必要よね。行商をするなら武術ランクもEくらいは持っているのが普通らしいし。頑張ってね。いつか商隊を組むようになったら、私に指名護衛依頼を出して欲しいわ」
ウィンクをしながらちゃっかり自分を売り込むレベッカさんを見て、思わず私は苦笑した。
冒険者も大変だね。
「はい。ありがとうございます」
実際のところ、彼女も真面目に言っている訳ではないだろう。
けれど、応援してくれたのは彼女が初めてだったから、嬉しかった。
話したのも初めてだから、当然といえば当然だけどね。




