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言われ慣れていないのか、レベッカさんの顔がわずかに赤く染まった。
へぇ。レベッカさん美人だし、お世辞とかも息を吐くように言われてるんだと思ってたんだけど。意外。
「おっちゃん、若い美人と見るとすぐまたそうやって。ハンナさんに言いつけるよ」
「バカやろうっ! べっぴんさんがそこにいたら褒めるのが礼儀ってもんだろうがっ! あと俺はまだ26だ、おっちゃんじゃねぇ。……が、嫁には内緒にしてくれ」
うん。こう見えてケルンさんは嫁一筋の愛妻家だし。深い意味がないのも知ってるけどさ。
ケルンさんに呆れた視線を送っておけば、レベッカさんも気を取り直したのか、「あ、やっぱり社交辞令か……そうよね、私そんな綺麗じゃないし……」とか呟いてるけど、レベッカさんアレかな、自分の容姿に無自覚の人かな。
私はレベッカさんは綺麗だと思うけれど。
「まぁおっちゃんは置いておいて。今日は客で来たんだよ。レベッカさん、必要なものはなに?」
「え? あ、えぇと、体力ポーションと魔力ポーションが少し足りなくなってきてたから、それが欲しいの。あとは、見て回りたいかな」
ふむふむ、ポーション類か。水薬のことだね。
「なら、こっち。おっちゃん、ちょっと見させてね~」
「へいへい。まぁミレイちゃんが一緒なら大丈夫だろ。決まったら呼んでくれや。あとおっちゃんじゃねぇ」
そう言い残したケルンさんは、カウンターの奥へと消えてしまった。おそらく商品の整頓でもするのだろう。
まぁもう何回も店番してるしね。品揃えなら把握してますよっと。
ケルンさんのとこには、子供はまだ居ない。
夫婦でやってる店なので従業員も居ないため、昼間一刻だけの店番依頼があったりするのだ。
店の商品を盗んだりしても狭い村なのですぐにバレるので、そんなバカやるヤツも村には居ない。よそ者には細心の注意を払うけれど、どっちみち在庫確認ですぐバレるからね。
「でもレベッカさん、今までどうしてたんです? おっちゃんが顔を知らないってことは、今までここには買い物しに来なかったってことですよね」
ふと気になったので尋ねてみると、なんでも今まではチームの他のメンバーが買い出しを担当していたらしい。
昨日、今年4体目のナッツボアを狩られてしまったとわかったので、今年はもう無理だろう、とレベッカさんたちも断念することを決めたそうだ。
昨日はメンバー全員でやけ酒をあおったため今は寝ているそうで、あまりお酒を好まないレベッカさんが仕方なく買い出しに来たのだそうだ。
薬草採取体験の護衛依頼は、元々今日請けることが決まっていたそうだからね。
「それは……御愁傷様です」
「良いのよ、放っておけば。どうせすぐまたマギあたりで稼ぎ出すんだから」
レベッカさんたちは五人でここウェリルに来たのだが、元々マギ周辺で活動していたチームらしく、息抜きもかねてウェリルへと足をのばしたのだそうだ。
ナッツボアのシーズンが終われば、結果に関わらず、マギへと戻る予定であったという。
「でも、そんな状態で護衛なんて大丈夫なんですか?」
思わず訝しげに見るが、どうやら心配はないらしい。
皆お酒には強いので、予定時刻にはすっかり抜けているだろう、とのことである。
「それくらいの管理が出来ないと、冒険者なんてやってられないわよ」
そう朗らかに笑うレベッカさんを見て、私はずいぶんと失礼なことを言ってしまったな、と反省した。
冒険者は自己管理も仕事のうち、ってことだね。




