11
宿屋を出て道なりに進んだ中央通り。
通りと言うほど立派なものではないが、踏みかためられた大きな道沿いに商店が建ち並んでいるので、ここは中央通りと呼ばれている。
いつもよりも活気に溢れるこの時期、定期的に訪れる契約商店以外から仕入れが出来た村の商店も呼び込みに必死だ。
「さぁさ、見てらっしゃい! あのサフネスの港町、ドラキア産のキジュの干物だよ! 安く仕入れられたんだ、今夜のおかずに一枚どうだい?」
「アグネチャートのシトラスだよ! おやつにみずみずしいシトラスはどうだい? ひとつなんと銅板2枚だ!」
「新鮮なミルモームの乳はいかがかねー! なんとアグネチャート産のミルマが今なら1タム銀貨2枚だっ!」
ミルマ1タム、大体970ミリリットルくらいで銀貨2枚とは。輸送費が高いのを考えてもやっぱりブランドは高いなぁ。
ミルモームは大陸の東側に生息する牛のような魔獣で、美味しい乳を出してくれるのだが、一年中ではなく、子育ての時のみとなる。
アグネチャートではかなりの数のミルモームをはじめとした家畜を飼っており、更には太古のアイテムボックスならぬアイテム倉庫のようなものまであるそうなので、それで一年中供給しているそうなのだ。
このアイテム倉庫の逸話は有名なのだが、それはまた機会があれば話そうと思う。
「レベッカさん、どこから回りますか?」
隣を歩く彼女に目を向けると、彼女はどうやら既に決めていたようで、まずは命薬商人の店に行きたいと話した。
彼女は意外と背が低い。今の私とほぼ変わらなかった。
この世界の平均身長は大体男性が170セル前後、女性が160セル前後。私は154セルしかないので、大抵見上げる形となるのだが、レベッカさんも小柄な方であるようだった。
セラフィム様の話では私は前世とほぼ変わらない容姿となるそうなので、ここから伸びたところであと2、3セル程度だろう。もうちょっとだけ身長をもらっておけば良かったとは思うものの、善行ポイントがもったいなくも思うので、これで良かったのかもしれない。
私のオススメの店を訊かれたので、『ケルンの命薬商店』に連れて行くことにした。
オススメと言っても、この村は小さい村なのでそれぞれの商店は飲食系統以外はひとつしかない。
その一店舗にそれぞれの職人が納品している形となっている。
カラランっと小気味良い鐘を響かせて扉を開ければ、ところ狭しと薬草が吊り下げられ、木製の棚にはビンが並ぶ。
独特の薬の匂いは、私にとってはとても心地の良い匂いだった。
「こんにちは」
「お、ミレイちゃん。こんな時間に来るたぁ珍しいな? 今日は依頼は出してねぇはずだが……しかもまぁずいぶんなべっぴんさん連れてきたもんだ」
カウンターで頬杖をつきながらケラケラと笑うのは、程よく鍛え上げた筋肉を持つ色黒のケルンさん。店の名前にもある通り、ここの店主である。
アースガイアの店名は、大体が人名と扱ってる商品の種類を表しているので、とても分かりやすいのが良いところだね。
「び、美人だなんて。そんなことないわ」




