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カウンターの奥のキッチンへと消えたおばちゃんをじっと座って待っていると、二階から宿泊客であろう女性が降りてきた。
見た目はおそらく20歳そこそこというところで、身なりからすると冒険者だろう。しかし、なんというか、あまりにも身綺麗すぎる。身につけている鎧などにはあまり傷は見当たらず、流れるような肩下まである茶髪にも傷みが見受けられない。まだ駆け出しなのだろうか?
彼女もナッツボア目当てにウェリルに来たのだろうか。
「……あら、シアンさんは、居ないの?」
キョロキョロとあたりを見渡した後、他にお客も居なかったからだろう、私に声をかけてきた。
「今、お弁当をお願いしたところなんです。もうすぐ戻ってくると思いますよ」
「そう。じゃあ少し待ってるかな。隣良いかしら?」
何故わざわざカウンターのしかも私の隣に。こんなにテーブルが空いているだろうが。
まぁ美人のお姉さんに尋ねられてお断りするようなこともしませんがね。
「私は構いませんけど、お姉さん、ひとりなんですか?」
普通の冒険者であれば、チームメンバーと行動を共にしているはずだ。となると、仲間が後から降りてくるんじゃないだろうか。
「あぁ、チームの皆ならまだ寝てるから良いのよ。今日はまだ依頼まで時間があるしね」
やっぱり冒険者だったか。しかし、依頼を既に請けている、となると。
「お姉さん、もしかして薬草採取体験依頼の護衛を請けてくださった方ですか?」
「あら、貴女もしかして参加者かしら? えぇ、そうよ。私はレベッカ。レベッカ=タイラーよ。今日はよろしくね」
武術ギルドの依頼は危険魔獣や野盗の討伐が主だから、時間指定などはない。商工ギルドの依頼で時間の指定がある依頼となると色々とあるにはあるが、チームを組んでいるような冒険者ともなればウェリルでは薬草採取体験依頼か、村から他の村などへの護衛、それから魔生石への魔法封入依頼くらいしかないので、実質3択だ。
まぁこれで実は店番依頼請けてました! とか言われたら逆にびっくりするけどね?
しかし、あの依頼を請けたということは、彼女も武術ランクDかCにはなっているはずだ。
あの依頼を請けられる冒険者チーム側の条件がそこからだから。
「ミレイです。よろしくお願いしますね」
にこやかに挨拶をして、軽く世間話などをしているうちに、おばちゃんも淹れたてのコーヒーとサンドイッチの入った弁当箱を手に戻ってきた。銀貨一枚を手渡して、お釣りの銅貨2枚を受け取ると、そこからはおばちゃんも交えて三人で話に花を咲かせた。
それによれば、どうやらレベッカさんは朝ごはんを食べてから少し買い物に行くとのこと。
この時期は行商とかも来てるから店揃えも充実してるし、掘り出し物とかもあったりするしね。良いと思う。
「せっかくだから、ミレイちゃん、一緒に行かない?」
ほんの一刻ほど朝食を食べるレベッカさんとおばちゃんに付き合ってお話をしただけだが、ずいぶんと意気投合した気がする。年齢も教えたのに、呼び名もいつの間にかちゃん付けになっているし。
集合は12刻半だからまだ3刻弱はあるし、必要なものは既にほっ君の中に揃っているから問題もないか。
レベッカさんも集合は12刻と少し私たちよりは早いそうだが、それにしたってまだゆうに2刻以上はある。
唯一リュックにはいつも着替え一式を母さんの言い付けで入れている。すぐ汚すから一応持って歩けって厳しく言われてるんですよね。だって普段浄化能力使ったら不審がられるでしょう。だから使えないのだけどそんな毎回汚した記憶はないんだけどなぁ。解せぬ。
まぁ良い時間潰しにもなるだろう。
話した感じでは、悪い人ではなさそうだ。
「レベッカさんが良いなら、お願いします!」




