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「お待たせいたしました、こちらの同意書へのサインをお願いいたします。サインがない場合は、依頼は取り下げとさせていただきます」
さらっと目を通すと、依頼中は自身の不利益となる言い付け以外、必ず同行する冒険者の言い付けを守り、側を離れないこと。それから、離れた場合は死ぬこともあるので安全は保証されないため、それに同意を求めるということ。
そして、思いがけない高ランク魔獣の出現や野盗、天候の急変、など突発的な脅威があった場合は中断して村まで戻ること。
また、これは体験依頼なので、薬草は状態が普通程度のもの以上は1本につき銅板2枚の買い取りとすること、それ以下のものは買い取り対象にならないので丁寧に採取すること、などをわかりやすく噛み砕いて説明した内容。
毎年のものと変わらないのを確認した私は受付カウンター備えつけの羽ペンにインクをつけて書類にサインした。
「ありがとうございます、それでは、12刻半に、集合は村の西門となりますので、時刻厳守でお願いいたします。なお、昼食は各自持参で、終了予定時刻は昼の3刻となります」
昼の3刻は、18刻のことだから、地球時間なら14時半くらいまでだね。
今回は少し早めに終わらせるんだなぁ。ちょっと残念。請けてくれる冒険者チームの都合だろうか。
「はい、わかりました。よろしくお願いいたします」
軽く頭を下げ、私はチラリと周りを見渡した。
……並んでいる人は他には居ないし、木板を見ている冒険者もここには来なさそうだ。
そもそも商工ギルドの依頼は、率先してそれをやる人間は子供や職またはチームさがしの人間くらいなもので、あとはほぼ素材納品の依頼。
木板から依頼書をはがして依頼を請けるのだけれど、一度はがしてしまった依頼は、必ず達成しなければならない、というルールがある。
これを破ると、ランクダウンであったり罰金であったりと、罰則があるのです。
なので、だいたいの人はまず狩りに行く前に、どんな依頼があるかを確認だけして、帰って来てから、素材とともに依頼を請けるのですよ。
中には先取りしておく人も居るけれどね。
ほぼ間違いなく達成出来る自信があって、それを目当てに狩りに行く、というのは居ることは居るが、少数派だ。
もう少ししたら日常の依頼をする側が来るけれど、そういう人はだいたい落ち着いた12刻頃……地球でいう朝10時くらいからとかにお願いするから、混むのはむしろ達成報告の夕方なんです。
昼間に狩って、日が暮れる前に戻って来て、武術ギルドに併設された解体屋にお願いする、というのが一般的だからね。
その流れで商工ギルドの依頼を確認して、解体予定の素材を納品。
現物は解体屋にある訳だから、依頼が達成されないことはない。
そんなわけで、私の後ろには今は人は並んでいない。何かを訊くなら今がチャンス。
「依頼とは別に、レイルさんにお尋ねしたいことがあるのですが、少しよろしいでしょうか?」
「あら、なにかしら?」
もう体験依頼の話は終わったので、レイルさんもいつもの砕けた感じに戻っている。
まぁこのあたりじゃそんなかしこまったやりとりする必要もないからね。他の場所で困らないようにってためのものだし。




