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そう告げると、レイルさんも予想していたのだろう。
一瞬で雰囲気を変え、キリッとした顔つきになった。
「はい、薬草採取体験依頼ですね。では、サブギルドカードの提出をお願いいたします」
依頼の話、となった瞬間に切り替え、受付嬢然としたレイルさんは流石と言うべきなのだろう。
私もそれに習い、いつものおふざけはここまでとした。
いつもカードなどはもとよりほぼ全ての荷物をしまってあるのは専用保有空間……名付けてほっ君なので、さもズボンのポケットから取り出したかのように見せて取り出した。
そのおまけカードをカウンターの隅に置いてある木製トレーに載せる。
……ネーミングセンスがダサいとか言わない。
私がわかれば良いのだし。
「ありがとうございます、お名前はミレイ=シュライク様ですね。確認いたしました。依頼の受理をするため、カードをお預かりいたします。少々お待ち下さいませ」
何故レイルさんが私のようなおまけカードの人間にこれほどまでに丁寧な対応なのか、というと、これも含めて体験依頼だからだ。
普段ならもっと砕けた感じのやりとりとかもするけれど、これは実際の依頼の手続きを体験するという意味合いもあるのです。
ちゃんとしたカードになれば、例え地元の子であろうと、子供扱いはもうされなくなるからね。まぁコミュニケーションとして軽口を叩くことはないとは言わないけれども……。
レイルさんは席を立ってほんの数分もかからずに戻ってきた。
おまけカードというのもあるけれど、そもそも顔見知りだから、私の書類を探すなど苦にもならないのだろうな。
商工ギルドには、書類がびっしりと並んだ書庫があるそうだ。もちろん、ウェリルにもそれは存在する。
探索能力によれば、カウンターの奥にある扉の向こうにはこちらから見ると垂直に規則正しく並んだ背中合わせの本棚で埋まっていて、人がやっと通れる程度の通路しかない。
そこにはその人のおおまかなプロフィールや家族構成、過去にその人が請けた依頼のうち失敗となった依頼の概要、現在のランク、ランクアップとランクダウンの日付、討伐報酬の総金額などの個人情報が詰まっており、その書類は個々の持つギルドカードに描かれた模様で管理しているのだそうだ。
これによって、同姓同名であっても判別でき、また紛失カードの書類はその時点で破棄されるため、紛失カード利用の不正も見抜けるとのこと。
まぁ、全てをカバー出来る訳ではないだろうけどね。
この情報だけでも私ですらわかるような穴があったりするし。
とにかくその部屋には武術ギルドからも通路が繋がっているので、この情報はどちらのギルドでも共通となっているらしい。
え?
なんで私がそんなこと知ってるかって?
場所とか部屋のつくりとかは探索能力のおかげだけれど、その他のことは公表されてるんですよね。まぁ、カードの模様はそのまま書類につけられてる訳でもなく特殊な魔法がかけられているそうで、普通の人には偽装も偽造も出来ないらしいので、公表したところで問題ないそうな。
私はそれより、その特殊な魔法が気になるけども。
ちゃんとしたギルドカード……母さんのやつをこっそり解析させてもらったら、まさかの『商工ギルド、武術ギルドのギルド員であることを示すカード。偽造防止となっている。かけられた魔法は解析不能。』だったんですよ。
今まで私の解析能力で解析不能になったのは、ギルドカードと村に貼られた結界と結界通行許可印くらいなものなんだが。
一体どうやって作ってるのこれ。




