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ミレイ、15になりました!
のんびりと成長した私は、ぬいぐるみが居なくなってしまった自室で目覚めた。
もうあの子たちは私の部屋には居ない。町の他の子供たちにあげてしまったからだ。
あれから8年、私は普段はコツコツとおつかいのような依頼をこなし、普段は基礎体力作りのみで、10日に一度だけ夜に抜け出して近くの森で修行をするという日々を過ごしてきている。おかげで昼間は眠たいこともあって、不名誉なアダ名をつけられてしまったが。幸いと言うべきか、両親と兄にはまだバレてはいないようだった。
ベッドを出ると少しだけ肌寒くなってきたが、なるべく急いで着替えてから居間へと降りる。
私の服はいつも白黒。木綿のような白いTシャツに黒いズボン、そして灰色の外套である。
いつもと変わらない朝。
けれど、その日は私にとってはちょっぴり特別な朝だった。
「おはよう、母さん」
「あら、起きたのね! おはようミレイ」
いつもにこやかな母さんが、更に目を細めてニッコリと微笑み、起き抜けの私の頭を柔らかく抱きしめた。
「お誕生日おめでとう!」
今日、7の月10日は、私の15歳の誕生日である。
アースガイアは地球よりも少しだけ大きいのか、一年は500日からなる。
そして、ひと月は50日からなり、一年は10の月に分けられている。
1と2の月は春、3から5の月は夏、6と7の月は秋、8から10の月は冬。
なので、今日である7の月10日は秋もそろそろ終わりに向かう頃。それが、私の誕生日。
おめでとう、に少しくすぐったくなりながら、私は左頬をかきながらも苦笑しつつ、そっと抱擁を抜け出す。
「ありがとう、母さん。父さんと兄さんは仕事?」
「えぇ、ほら、頼まれていた緊急依頼があったでしょ。せっかくのミレイの誕生日なのに、終わるまで顔も見れないって文句言いながら出かけて行ったわ」
「緊急依頼? あぁ、昨日言ってたやつ」
緊急依頼、というのは主に国からの依頼か、突発的な魔獣への対処なので、二人が請けたならば魔獣の方のはずだ。
しかし、武術ギルドBランクだった父さんはともかく、兄さんは大丈夫だろうか……。
特殊ギルド員となった時点での兄さんのランクはC、つまり一般的な武術ギルド員である。
武術ギルドランクの一般的認識としては、Eは駆け出し、Dで慣れてきたくらい、Cで一人前、Bは凄腕、Aはエリート中のエリート、Sは文字通りスペシャルランク、つまり化け物、という認識である。
なので、大体の人はDランクの期間がものすごく長くなるのである。
8年前、パリス兄さんが16の時。
兄さんの武術ギルドランクCへの昇格が決まった瞬間に特殊ギルド員となることを希望した。いくら商工ギルド員とはいえ、戦闘を依頼されることもある特殊ギルド員は、自衛のための最低限のランクとしてCを、そして商工ギルドランクB以上が求められる。兄さんは商工ギルドランクは既にパスしていたので、そこに問題はない。
問題は、今の兄さんで大丈夫なレベルの魔獣なのか、ということだけれど、まぁギルドは大丈夫だと判断したから依頼したのだろう。
特殊ギルド員となってから8年、兄さんはランクが上がることはもうないが、1年でCランクに上がったというのはかなり早いスピードだから、きっと今の兄さんにランクをつけるならば少なくともBくらいにはなるのだろう。
父さんはまぁBランク魔獣1体くらいならひとりでも対処出来るだろうから、一緒なら問題はなさそうだし。
……本来なら、Cランク魔獣ですら普通はひとりでは苦戦するはずなんだが。うちの父はおかしい。
「心配しなくても大丈夫よ、そんな顔しないで」
母は私の眉間を指でトンっと軽く叩いて微笑んだ。
……あー、私、今、眉間にシワよってたか。
「パリスにはあの人がついていったし、貴女のために早く帰って来て一緒にケーキ食べるんだ!って言ってたわ。私も張りきって作らないとね?」
ふふっなんて、朗らかに笑う母には、どうやら私の考えることなどお見通しのようです。母強し。




