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あ、あとあれも訊いておかないと。
「すみません、もうひとつお訊きしたいことがありまして。素材募集の、ユニコーンの体毛依頼についてなのですが。詳しく教えていただけますか?」
そう告げると、なぜかコナさんは渋い顔になった。
「……ユニコーンの体毛依頼ですか」
「そんな顔をなさるなんて、何か問題でも?」
依頼人が実はヤバすぎる、とか? なんて考えも一瞬よぎったものの、コナさんは苦笑を浮かべて首を振る。
「いえ、前は北山の湖にユニコーンが目撃されていたのですが、最近はそこに見かけない上、他の魔獣も活発に活動しているようなのです。体毛の指定も、出来るだけ、たてがみか尾を100エルク以上で長さは10セル以上という希望なので、簡単なことではありませんし」
ふむ、10セル以上で100エルクか。
しかも依頼書には書いてなかったが、採取部位指定もありとな。
まぁそれ以外の部位からじゃとれないだろうしなぁ。
「しかし、ユニコーンは基本的に女性には穏やかで男性に対してもすぐに立ち去れば何もしてきませんし、なにより人に理解を示す魔獣ですから、ギルドでも討伐報酬はかけられません。
しかし、金貨5枚の報酬ではわざわざ護衛を雇ってそこへ行ってくださる女性の方も現れなくて……。
実費支給があれば別だったのでしょうが、依頼主の方でも急ぐものではないし、可能であればで構わないからそこまではしない、と……」
護衛を雇うとしたら、最低でも1日分で4人、銀板4枚かかるもんなぁ。10日で金貨4枚だもの。
すぐに会えたら良いけど、会えなかったら払い損だものねぇ。
「それに、体毛を望むならやはり番からの要望でもないと厳しいでしょう?
抜け毛を拾うにしても、ユニコーンの体毛は抜け落ちづらいと言われておりますし。
ですから、この依頼はもう一ヶ月ほど達成されていないのです。もうユニコーンは変態してしまったのでは、と言われております」
そうなのか。
だから、こんな金貨5枚なんて依頼が今まで残ってたんだな。
ユニコーンの変態とは、繁殖のための変身擬態能力だ。変な意味ではないよ?
ユニコーンはそれを一生に一度だけ使うことが出来て、気に入ったメスの理想の同族の姿をかたどり、番となる。
魅了などの無理強いはしないが、フラれるユニコーンはまず居ないそうだ。羨ましい。
実は過去に人間となったユニコーンも居るため、ユニコーンについては様々な資料があるのだ。
個体にはオスしかおらず、他種族のメスを孕ませて子を成すが、母体は必ず卵をひとつだけ産み、そこから一角獣のオスの姿で生まれてくることもわかっている。人間は胎生のはずなんだが、それでも必ず卵を産む。出産で死んだ記録はない。
子はある程度成長すると、親元を離れ、また番を探しに行くらしい。
角はあらゆる薬の原料となるらしいが、ユニコーンは角を対価に変態するので、それ以外で失くすことはつまり番の理想の姿になれないのでユニコーンとして致命的で、死に値するそうだ。
角がこの世に出回るのは、無理やり討伐されるか、生涯番と出会えなかったユニコーンが死した時くらいだそう。つまり、滅多にどころかほぼあり得ない。
伝記の資料でも、過去に薬とされたのは一本のみである。
なお、男性が近づいてきたらツノで殺したというのはあくまで伝説で、実際にはおどかして視界に入る場所から追い出すだけらしい。
また、ユニコーンは神級の空間魔法も使えるらしく、ユニコーンによるアイテムボックスもアースガイアには存在する。
アグネチャートにはボックスではなく部屋まるごとの異空間倉庫みたいなものまであるらしい。
もちろん、アイテムボックスすら普通のよりも多くのものを入れられるため、途方もなく高い。国家予算並みだ。
「なるほど、ちなみに、どなたからの依頼なのかはわかりますか?」
少々お待ちください、と告げたコナさんが席を離れる。
今度は本当にすぐに戻ってきた。わざわざ依頼主の確認をしてくれたのだろう。
「お待たせいたしました。これは、解体屋のフェオル=リンデ様からの依頼ですね」
解体屋……えぇ、フェオルさん、何でまたこんな依頼を。
でもこれは守秘依頼じゃなかったんだね。ってことは、本当に大した理由ではないのかもしれない。実はただ見てみたかっただけ、とか。




