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「……えぇと、これ、お願いします」
気を取り直して、差し出された左手に物車商店からの紙を渡す。
すると彼は大袈裟に顎に手をあて、その紙を読み上げた。
「ふぅん? Fランクのビッグラッド10体、Eランクのブラウンウルフ5体とシルバーウルフ3体だね? 解体料金が銀板2枚と銀貨6枚になるけど良いかい?」
あまりに芝居がかったその仕草に、一瞬店を間違えたかと逡巡した。
私は解体屋に来たんだったよな?
いや、大丈夫。ここは間違いなく解体屋。芝居小屋じゃない。
こういう人、アースガイアにも、居たんだなぁ……初めて知りましたよ。
しかし、小型魔獣の解体料は銀貨1枚、中型魔獣の解体料は銀貨2枚だから、計算は合ってる。暗算なのにはやいな?
この人、仕事は出来るらしいね。
「どうしたんだい? まさかっ! 実は美しい僕に会いにくるための口実で解体はしないとでも言うのかい?!」
「いや、違います。解体はお願いします」
……マギの解体屋、この人が受付で大丈夫なんだろうか。
「時間はどれくらいかかりますか?」
「そうだねぇ……解体の時間だけなら1刻もあれば十分だよ。素材の処理にどうしても4刻くらいはかかってしまうけど、どうする?」
1刻?!
凄いな、流石は王都の解体屋。きっと解体の人数も揃えてるんだろうね。
ウェリルなら5刻はかかるだろうな。
処理っていうのは、毛皮や骨を売るかどうか訊かれてるんだろう。
売る場合はそのまま商工ギルドで引き取りしてくれるし、素材の状態や量は解体するだけでもわかるから、その時間を待つ必要がない。肉だけ貰う場合もそうだね。
「わかりました、素材は全部戻してもらって、あとクズ魔生石も戻しでお願いしたいんですけど、出来ますか?」
「クズ魔生石? 商工ギルドに提出するのかい? ならウチから持って行くよ?」
まぁあんな小さなただの丸い石、欲しがるなんて普通それしか考えないよな。
最近は商工ギルドでもクズ魔生石と呼ばれる2セル未満の魔生石の使い途を試行錯誤してるって話だ。
1タムにつき銅貨1枚で買い取ってくれる。
普通は一度にクズ魔生石を1タム分も持ち込める訳がなく、ギルドでは持ち込まれた分の重さを量って、それを記録しておくのだそうだ。
2セルにギリギリ足りないもので重さ30エルクぐらいだから、1タムには少なくとも34個はないといけないからね?
もちろんクズ魔生石は密度は詰まっているけどそもそも小さいからそこまで重くはないからね。
ここ何年かで始まった事業だけれど、これのおかげで道端のクズ魔生石はほぼなくなりました。
そもそも私も拾っていたけれど、一時期おまけカード持ちの子供たちの小遣い稼ぎになったからね。もちろんおまけカード持ちでもちゃんと量って記録しておいてくれるよ。
あんまり食い下がっても変に思われるだろうし、ここは素直にお願いするか。
解体屋のプライドにかけて変な誤魔化しはしないだろう。
「持って行ってもらえるならお願いします。4刻くらいなら終わるのは深夜ですよね。明日の朝に引き取りでも良いですか?」
一応解体屋は24時間営業ならぬ30刻営業だから深夜でも受け取りは出来るけれど、そこまで急ぎなのは普通は出立前夜くらいだし。私は急ぎじゃないから朝でも問題ない。
「そうしてもらえるとウチも助かるよ。寝不足は美容の敵だからね!」
……今の時間に居る受付って深夜勤務じゃなかったっけ?
マギの解体屋の勤務交代時間はズレてるのかもしれないね。
「素材はどうする? 麻袋に入れておくかい? 1ミーダの袋で銀貨1枚もらうことになるけど」
「あ、それならお願いします」
「わかったよ。袋代も素材を渡す時に精算してもらうよ」
1ミーダの麻袋なら雑貨屋で買ってもそのくらいはするから、ここで買っといても損ではないな。あとで浄化すれば良いしね。
ギルドカードと銀板2枚と銀貨6枚を提出すると、ちょうど受付の後ろの扉が開いた。
「ハンス、さっきの件終わりましたよ……おや?」
「あぁ、兄さん、この受付が終わったらそっちの処理をするよ」
扉から現れた男性は、ハンスと呼ばれた受付の兄らしい。
こちらもなかなかの美形だが、どちらかといえば中性的な顔立ちで、艶やかな長い金髪を左肩のところで緩くまとめている。
ちなみにハンスさん(仮)はハリウッドに居そうな男性的なイケメンだ。




