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ほっ君の中の魔獣には傷がないから、解体してもらうための処理をしておかないとね。
そのままだと怪しまれてしまう。
私が倒した魔獣の傷口は全部錬成で塞いであるんだよ。
毛皮とかに傷をつけるのが嫌でね。
ウェリルの解体屋のおっちゃんがボヤいてたことがあったんだ。
「傷が少なけりゃあ、解体も楽だし、値も少しは上がるんだがなぁ」って。
それを聞いた私がどうしたかなんてお察しでしょう。
ほっ君からビッグラッドの死体を10体、ブロンズウルフの死体を5体、それからシルバーウルフの死体を3体取り出して、地面に置いた。
今回はDランクのゴールドウルフはお預けだ。
流石にFランクの武術ギルド員駆け出しが4刻程度で狩れるのはこの程度が限界だろう。
明日もまた怪しまれない程度に外出しないとなぁ。
探索能力さんを使って選んだこの場所は、毒にも薬にもならないかわり、香りのきつい植物の群生地だ。
これから傷をつけるとなるとどうしても血のにおいが鼻についてしまうが、嗅覚が優れているウルフ系統でもこの植物の香りで鼻が混乱すると言われるほどだから、まぁ作業中には寄ってこないだろう。
鉄の刀で魔獣の死体の首を切り落とし、これが致命傷だったと見せかけたあと、錬成で野締めをして血抜きをした。
実は錬成で解体も出来ないこともないが、それではアースガイアでは売り物にすることは出来ないんだよ。
実際に首を切り落としたのは念のためだね。傷口に些細な違和感があっても困るからね。
解体屋には独自のさばき方があり、毛皮や骨などの素材は長期保存のために様々な薬品を使用するのだが、それらは全ての解体屋で共通のものらしく、内容は職人以外には明かされていない。
まぁ解析で薬品のレシピとかはわかるけれど種類が半端ないし、部位によって使われる薬品も違うし、薬品に使われている薬草を調べてみたらほとんどアルカディア産なのでここらにはないから入手も出来ない。
それに比べて解体料金はそんなに高いものじゃないし、そもそも解体屋はどんな魔獣が狩られたかを武術ギルドに報告している面もあるから、私は解体は専門の人にお願いするよ。
実際に狩ったのは何年も前の魔獣もいると思うけれど、最近の魔獣との違いはないので問題ないはず。
実はこれらの魔獣がいつ狩ったものか自分でもわかっていない。
ほっ君に入れた魔獣の順番なんて解析能力でも教えてくれないからわからんよ。
何の魔獣が何体入ってますっていうのは教えてくれるけど、どの個体から出てくるんだかさっぱりわからんし、個体差なんて誤差の範囲だから。
どれも傷はふさいであるし、耳がないとか特徴的な傷でもあればわかるかもしれないけど、私が狩ったものにはあいにくとそういうのもなかったので、いつ狩った個体かなんていちいち覚えとらんですよ。
さて、あとは周りの地面の処理だけだけど、戦闘後の処理として土を被せる方法が良く使われる。
今回は獲物の処理をした痕跡を残すために、その方法を使うことにした。
血抜き作業が終わったものをほっ君にしまってから探索地図を薬になる植物全般に切り替えて山の中を見てみると、野草や野生の果実が近場に生えていることに気づいた。
ちょうど良いから、ここで少し時間を潰そうかな。
軽く素材集めに勤しんでからクゥラを繋ぎとめておいた木まで戻ると、まずはクゥラにただいまの挨拶をしてから、荷台の方に回る。
荷台には水に強いシートが敷いてあるので、獲物を載せても安心の設計だ。
……あとで洗浄するのは自分でやらないといけないけどね。私は更に浄化もするけどね。
「よし、じゃあ、申し訳ないけど荷物をどかっと載せるからね。あと少し頑張って走っておくれ」
一応声をかけてからほっ君の中にしまっていた魔獣の死体を荷台に出したのだけど、いきなり荷物が増えたことが振動からわかったのかクゥラがびっくりしてしまった。
謝りながらなだめれば落ち着いてくれたクゥラさんは、やっぱり賢い。
さぁて、今は22刻を過ぎたところだから、のんびり戻ればちょうど良い時間かな。
さっそくお肉のために解体してもらいますかね。




