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商工ギルド内にあるテーブルで棘花の皆さんにお礼を伝えると、今後の予定を問われた。
「少しはやめの夕飯を食べてから知り合いの家に向かう予定です」
「ふむ。そうか。そこまで送ってやりたいのだが、我々はこれからすぐにサフネスに向かわねばならなくてな。申し訳ない」
「いやいや、流石にそれは申し訳ないですし、王都の中ならそこまで危険もないですから。少し王都の観光もしたいですしね。
それより、サフネスに向かうということは、武闘大会に?」
「あぁ、その予定だ」
武闘大会とは、パルチザンで行われる5人チームでの個人戦のことである。
武器あり、魔法あり、その他卑怯な手でなければ何でもあり、ただし相手を死亡させたら敗北判定、急所攻撃は寸止めで勝ち判定、場外負けあり、棄権あり、の大変凄絶な大会なのだ。
このアースガイアでチームといえば5人なのは、お伽噺でドラゴンを倒したカイル王子のチームが5人であったといわれているからである。
カイル王子はパルチザンの王子であり、その王子のチームと、とあるチームが武を競ったのが、この武闘大会の始まりだといわれている。
あくまで史実だから、真実かはわからないけども、その時は王子のチームが勝利したらしい。
個人戦、ということからもわかるが、対戦は1対1。
先鋒同士の対戦から始まり、順番に勝ち抜いていくのだ。
先鋒が倒されれば二番手、次に中堅、副将と続き、大将となる。大将を破ったチームが勝者だ。
本戦は毎年7の月の最終日である50日に行われているのだが、武闘大会の参加者が年々増えてきているので、その前に予選を行うのが通例だ。
確か予選は7の月の25日に始まるはずなので、今からサフネスに向かっても十分に間に合うね。
「なら、もしも間に合えば観覧に行きますね」
見学料金として予選は銀貨1枚、本戦は銀板1枚取られるけど、棘花を観に行くって考えたら惜しくない金額だ。
武の国のくせに、こういうところはがめつい。いやむしろ武の国だからなんだろうか。
自分たちの戦闘の糧にするためにお金払うって感覚なんだろう。それだけの価値はあるだろうしね。
「あぁ。達者でな」
「ミレイちゃん、私たち頑張って優勝目指すから応援してね! あと、いつか私たちに護衛依頼を出すって約束、忘れないでね!」
「えぇ。もちろん応援してますよ」
ふふ、優勝か。レベッカさんも大きく出たね。
棘花の皆さんとはたった2日くらいの旅だったけれど、やっぱり誰かと旅をするのは良いものだね。
……いつか、私にも一緒に旅をしてくれる人が現れてくれるのかな。
今のところは、私の相棒はクゥラだね。
彼らと別れて、私はまず西側に向かった。
何をするにもまずは宿を取らないとね。
整備された石畳の道を足早に進んで行くと、西の宿屋が遠目に見えてきた。
小さめと言われたが、ウェリルのギアノルの宿屋と同じくらいには大きい。
中に入ると、8つ程の四角いテーブルの向こうにカウンターと階段があり、そのカウンターの向こう側には何となく人の良さそうな、小柄なオヤジが椅子に座っていた。
「オジサン、しばらく泊まりたいんだけど」
私はここで、地声ではなく、低めに出した声で話しかけることにした。喋り方も少年風に。
私の特技のひとつ、変声です。前世からの特技でもあるのだけど、転生しても特技となった。
元々の私の声質って結構甲高くてね。それをかなり低く出せば、まるで男性のような声になるんですよ。
女性だからと言って舐められることはないけれど、私の足跡をなるべく残さないためにね。
ちなみにこれ、昔ちょっとした悪戯のつもりで母さんに試してみたことがあるのだけど、気づかれなかった。
父さんと兄さんに試すなんてしないよ。間違いなく噂を広められてしまうからね?




