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さぁ、マギに向かおう。
その後、私たちは物車商店でクゥラと馬車を引き取った。
荷台には既に荷物や餌づけの薬草が積まれていて、生肉などはフリーズの魔法で凍らされて木箱にしまわれていた。積荷の確認も取れたので、昨日の棘花との証文は破棄したよ。
アントニオさんがさらに荷台の奥半分にアイスウォールをかけてくれたので、簡易冷蔵庫の出来上がりだ。
ウォール系の魔法は物質を通してしまうので物理攻撃には無意味な魔法なんだけど、その性質は魔法の属性によるのでこういった用途には便利だ。攻撃魔法はどの属性でも弾き返すんだけどね。
ちなみにアントニオさんの魔力量は私の比でなくすごく多いので、この程度は全く問題ない。解析能力さんによれば、なんと58万だった。うらやましい。
そのままウェリルの町を出て、私たちは東へと馬車を進めていった。
ここからまず目指すのは、王都マギ。ここから大体2日の距離だから、まだまだ道は長い。
今まで生まれた村しか知らなかった私は心を躍らせながら御者台で寛いでいた。
クゥラは賢く、手綱を握るのも大して苦にはならなかったので助かった。
私の前世は馬が身近な田舎育ちだったので、御者をするくらいなら朝飯前である。鞍付きなら乗って歩かせたり駆け足をさせる程度なら出来るかな。全力疾走はしたことがないから無理。だと思う。
警戒がてら景色を眺めれば、森の木々は紅く染まっていた。もう秋なんだなぁ。
あ、探索能力はちゃんと使って警戒はしているよ。今のところ、魔獣は1ケル範囲には居ない。1ケルは1kmのことだよ。
進行の布陣として、私は御者台でクゥラの手綱を握り、横にレベッカさんを乗せている。
馬車の右側にはサブリナさんとジョージさんが、左側にはアントニオさんとケイジさんがついて歩いていた。
1刻ごとにレベッカさんの位置を順番に交代するとのことだ。
修行に使わせてもらっていた森を奥深く進むと、段々と斜面がキツくなってきた。
王都とウェリルの間には、そこそこ高い山がそびえ立っている。これを越えるのに2日はかかるのだ。
道中、鉄の盾のメンバーの反応を見つけた。
ハインツさんの言っていた依頼って、もしかしたらウェリル周辺の調査と警戒だったのかもしれない。
あんなことがあったばかりだし、グレートクロゴリラが群れた理由もまだ不明だ。
あの日の朝も探索能力さんには頼っていたけれど、普段は広範囲の探索はしていなかったし、どのみち本当に出たのがこのあたりなら、私の探索の範囲外だ。これからは気をつけていかないといけない。
にしても、鉄の盾の動くスピードが有り得ないほど速いんだけど、何かあったのか?
「?! 警戒体制!」
御者台で休憩を取っていたジョージさんが私の横で号令を発する。
棘花のメンバーでは、ジョージさんが一番索敵に優れていると聞いていた。ジョージさんの索敵範囲はだいたい1ケル範囲なのだろう。
ギィン! と突然カン高い音がしたかと思えば、発信場所は木々に近い左側で、ケイジさんが繰り出した大剣をジニーさんがロングソードで受け止めていた。
「待てっ! 俺たちは敵じゃないっ」
「あれ、アンタらこないだの」
つばぜり合いをしながら叫んだジニーさんは鉄の盾の斥候である。
すぐに気がついたのか、ケイジさんも剣を引いた。
ジニーさんの後ろには当然のように他のメンバーも揃っている。
「全く、せっかく、街道に、戻ってこれたってのに、これか……勘弁してくれ、本当に」
普段は冷静沈着なリーダーのアデルさんの息が珍しく切れている。狩りでは何があるかわからないから常に余力を残した行動を心がけろと私にアドバイスしてくれたアデルさんが全力だなんて。
これはよほどのことがあったに違いない。
「アデルさんたち! どうしたんですかっ?」
「その声は、ミレイちゃん? どうして、ここに?」




