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黒雪伝説・湯煙情緒  作者: あしゅ
7/13

黒雪伝説・湯煙情緒 7

凄い勢いでザカザカ歩いていた足を止める黒雪。

振り向く後方に、王子がノタノタ歩いている。

 

「いつまでブーたれてるの?」

王子はうつむいたまま、ボソッとつぶやく。

「だって、あんな言い方しなくても・・・。」

 

 

王子と黒雪がふたりで探索に出ると言うと

当然、周囲は止めに入り、誰か彼か付いてくると言い張った。

黒雪はその意見を、ひとことで黙らせた。

 

「今の内に種を仕込まにゃならんから、付いてくるな!

 じゃないと、冬に出産が間に合わん。」

 

 

「皆、黙って見送ってくれたでしょ?」

「そうかも知れないけど、私たちの愛を汚された気がする・・・。」

 

その湿った態度に、イライラしてきたのか

王子の肩を黒雪が人差し指でドスドス突付きながら言う。

 

「あなたは爬虫類だから、わからないかも知れないけど

 人間はそうボロボロ子供は出来ないのよ。

 隙あらば作っておかないと、子孫が繁栄しないの!」

 

「そんな、人を産む機械のように・・・。」

「どこぞのムチャ振り平等人権団体と同じ抗議をすな!

 王族は産む機械なのよ!

 継承権が揺らぐと、国自体が揺らぐの!

 税金で生きてる以上、個人の感情は二の次なの!

 それが人間の王族の務めなの!

 あなたも人間になったのなら、自覚してね!」

 

 

黒雪がギャアギャア怒鳴るその肩越しに、動くものがかすかに見える。

王子は指を口にあてて黒雪を岩陰に誘導し、望遠鏡を取り出した。

 

「・・・やっぱりあなたの言う通り、ふたりで来て正解でした・・・。」

王子がささやいて、黒雪に望遠鏡を覗かせた。

 

チョッキのウサギが走ってくる。

 

「“あれ” の説明を、従者にどうすれば良いのか、わかりませんものね。」

頭を振り溜め息を付く王子の隣で、黒雪は無言で大ナタを取り出した。

 

 

「ダメーーーーーーーーッ!」

王子が小声で怒鳴る。

「何? またご親切に逃がしてやるつもりなの?」

今にも走り出そうとする黒雪を、王子が必死で止める。

 

「止めてくださいーーーっっっ!

 この話、今までNO死人、という快挙なんですよ?

 こいつがこんな展開の話を書くなんて、もう二度とないですよ?」

 

「・・・あれ、人じゃないし。」

「NO死体!

 ずっとこのまま、メルヘンで行きたいんです。

 どうか、恋バナ、お願いします!!!」

 

黒雪はチッと舌打ちをしながら、大ナタをしまいスリングを取り出した。

姫出身とは思えないガラの悪さである。

 

 

黒雪の撃ったそこらの石は、見事にウサギの腹に命中した。

「あっ、当たった! 凄い!

 あなた、本当に戦闘は天才的ですね。」

王子が褒めながら横を向くと、黒雪はもういなかった。

撃ったと同時に、ウサギの側へと走り寄っていたのである。

 

 

ふふ・・・、今夜はウサギのシチューね

“食材” ゲットは、殺生だけど殺戮ではないわよ

メルヘンでもロマンスでも、腹が減るのが自然の摂理!

 

 

黒雪が邪悪な笑みを浮かべながら、包丁を振りかざした。

 

 


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