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黒雪伝説・湯煙情緒  作者: あしゅ
4/13

黒雪伝説・湯煙情緒 4

「王子さま・・・。」

廊下を歩く王子に、執事がスッと近寄る。

「王さまのご機嫌が少々お悪いようです。

 お気をつけください。」

 

「そこの調節を、何とか頼む。」

「はい、やってはみますが、難しいと思います。」

「王というものは、能のあるなしに関わらず

 気位だけは高いからな・・・。」

溜め息を付く王子。

 

「わかった。 何とかしよう。

 私たちが城を空ける時はおまえは残ってくれ。

 この3人の内のひとりは、必ず城にいるようにしよう。」

「御意。」

執事は黒雪に頭を下げ、去って行った。

 

 

「あの執事も妖精王に許してもらったのね。」

「はい。

 じいは私が生まれた時から側にいてくれた唯一の者です。

 一緒に来る事ができて、本当に助かりました。

 ・・・しかし逆にその厚意が不安なのですよね・・・。」

「どういう意味?」

 

「謀反人の息子に、この温情は過剰ではないですか?

 それとも、私が腹心をも必要とするほど

 この国の復活劇は大変なのでしょうか?」

 

「うーん、そう言われてみれば、手取り足取りよねえ。」

「何か違いますよね? その言い回し。」

「えーと、板れり突くせり?」

「ははは。」

 

 

王子は黒雪の肩を抱き寄せた。

この人がいてくれて本当に良かった、と心から思えた。

 

ひとりだったら、この寒い土地で国の復興など無理だっただろう。

いや、あの時のこの人の涙がなかったら

母の償いをしようなど、思いもしなかったであろう。

この人は、私に心を持たせてくれた。

 

 

王子は、黒雪に口付けをした。

途端、足を思いっきり蹴られた。

 

「うっっっ!!!」

足先を押さえてうずくまる王子。

 

「あ、ごめんごめん。

 でも歩きながら他の事をすると

 ほぼ八割方、痛い目に遭うわよ。」

 

 

「・・・・・・・・・・・」

王子は涙目で黒雪を見上げた。

黒雪はヘラヘラと笑っていた。

 

「・・・このぐらいの痛み、あなたは平気でしょうけどね・・・。」

「それどころか、自分の傷自慢に発展するけどね。」

「これだから肉体派は・・・。」

 

王子がブツブツ言いながらも、痛がってるので

黒雪が王子を抱きかかえた。

「ちょっと! 止めてください!!」

 

「部屋まで連れてってあげるわよ、痛いでしょ?」

「お願いですから、お姫さま抱っこだけは

 私から奪わないでくださいーーーーー!」

 

 

王子の号泣に黒雪は動揺し、慌てて床におろした。

「あなたには男のプライドなんかわからないんですっ!」

 

廊下に座り込んで、しかも女座りで泣き喚いている時点で

男の沽券は台無しじゃないだろうか?

 

 

とは言えないので、黒雪は王子の横にしゃがんで

ごめんね、と背中を撫ぜながら謝った。

 

王子と妃なのに、何をやっとんのか

ほら、家臣たちが遠巻きに見てるぞ。

 

 


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