表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒雪伝説・湯煙情緒  作者: あしゅ
1/13

黒雪伝説・湯煙情緒 1

北国の王は動揺した。

 

息子が連れて来た結婚相手が

超・兄貴! だったからである。

 

(注: 超兄貴とは、その昔PCエンジンというハードで出た

 伝説のシューティングゲームである。

 と言うか、こういう解説がいる言葉を多用しないでもらいたい。

 えっ? 自分で書いてて人のせい?)

 

真っ黒に日焼けして、筋骨隆々のその婚約者は

本当に女性なのか? と、疑うほどであった。

 

 

だが、そこが逆に国民にウケたのは意外であった。

寒く厳しい気候のせいで、裕福ではない我が国に

あの大国、東国の姫が嫁いでくれる事自体、奇跡だったが

 

体中アザだらけ傷だらけなのに、堂々とウエディングドレスを着る

→ さすが、大国の姫君! ってな具合に。

 

しかもそのアザや傷や日焼けは

我が北国への道を作るためにできたものなのだ。

国民たちは、感謝とともに期待を持って黒雪を歓迎した。

 

 

ふむ、少々気の弱いところのある王子には

このような、たくましい姫が良いのかも知れん。

 

王はカイゼルひげを引っ張りながら、納得した。

 

 

「アタシは納得しないですわん!」

黒雪の枝毛だらけの髪をセットしながら

ヘアメイク担当のカマが不満をタレる。

 

「しばらくイベント続きだというのに

 このきったないお肌に、ボッサボサの髪!

 アタシが代わりにドレスを着た方が、よっぽど美しいわん!

 ああ、姫さまのヘアメイク、とっても苦労ーーーっ!!!」

 

 

「ちょ、待て、何故おまえがここにいるの?」

黒雪が問うと、カマが驚愕する。

「あらっ! あらららっ!

 結婚式もアタシ担当だったのに、今頃気付いたんですのん?

 あんまりですわん!

 腐った雑巾のような姫さまを、花嫁へと何とか変身させたのに!」

 

「す・・・、すまん・・・。」

「まあ、いいですわん。

 結婚式なんて誰でもアタフタしてますしねん。

 ・・・あーたは準備中、ずっと寝てたようですけどねん。」

「す・・・、すまん・・・。」

 

 

「ヘアメイクアップアーティストというのは、花形の職なんですのよん。

 特に王室勤めともなると、ファッションリーダーですわん。

 カリスマですわん。

 なのに姫さまに付いて、辺境の国に移住するなんて

 もったいなさすぎますわん。」

 

ベラベラ喋りながらも、テキパキと手を動かす

この、“ヘアメイクアップアーティスト” が

とても有能らしい事は、美容に無頓着な黒雪にもわかった。

 

「へえー、何故おまえは来てくれたの?」

「東国の城には、もうトップがいたのですわん。

 彼には適わないから、アタシは新天地でトップを目指しますわん。

 “鶏口となるも牛後となるなかれ” って言うでしょん?

 牛の中ではビリでも、鶏の中で一番になりゃ良いでしょ、って。」

 

 

「ふむ、そうなのか。

 頑張ってくれ。

 一緒に来てくれて、ありがとう。」

 

その言葉を聞いたカマは、一瞬手を止めて黒雪の顔を見た。

 

「・・・・・・ふーーーっ

 ブスなのに大らかな性格なのよねん、姫さまったら。」

首を振って溜め息を付かれ、黒雪は複雑な気分になった。

「・・・・・・・・・どうも・・・・・・・・・・。」 

 

 

そこへ王子が入ってきた。

「仕度はできましたか? 姫。

 いえ、・・・私の奥さま・・・。」

王子の顔が赤くなるので、黒雪までつられて赤くなる。

 

ふたりの間に花びらが降りかけたところで

カマが割って入る。

 

「もーーーーーっ!

 イチャラコチャラは後でやってくださいよねん!

 まだ準備中ですのよん。

 殿方は出入り禁止ですわん。」

カマがキイキイ言いながら、王子を追い出す。

 

 

「まったく、このゴリ姫の夫が

 あんな美男子なんて、世の中狂ってますわん。」

「えっ、あいつ、美男子なの?」

 

「・・・そういう自覚のないところが、また腹が立ちますわん。

 さあ、さっさと用意しますわよん!」

 

 

カマの逆鱗に触れ、グイグイ髪を引っ張られる黒雪。

こいつに逆らえるヤツは、多分いない。

 

ちなみに彼の名は、キドである。

 

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ