私立神聖女学院に通う彼女は魔法少女
なろうラジオ大賞2第二十二弾。テーマは『聖女』です。テーマコンプリートしたので、タイトル遊び再び。
世の中『闇』って大抵悪いものの象徴として描かれているので、ちょっと弁護してみようと思って書いてみました。暗いと怖いとか不便とかありますけど、寝る時暗くないと眠れないじゃないですか。そんな感じです。
夜のお供にお楽しみください。
人は闇を恐れる。
見えない物、分からない物を恐怖するのは仕方のない事。
分かっている。分かっているけど。
ここは私立神聖女学院。最近休み時間に話される話題は、固定されつつある。
「また闇の眷属が出たって」
「こっわー。確かあいつらが出すモヤモヤに触ると、無気力になるんだっけ」
違うんだ。闇の眷属達は、人間が闇を追い払おうとするから自棄を起こしてしまったんだ。彼らは戦って滅ぼされる事を望んでいる。闇を失った人間が遠からず滅びる事を知っているから。
「でも光の魔法少女に力を分けてもらって、超頑張れる様になったって」
「凄いよね」
確かに光の魔法は希望と活力をもたらす。でもその光が良い方向に働くとは限らない。私の使命を果たさなくては。
「うひょ〜! 凄い! どんどん書ける! 俺は天才小説家だ!」
魔法の鏡を見ると、夢中で文章を打ち込んでいる青年が見えた。彼が闇の眷属に囚われ、光の魔法少女に解放された被害者だ。
夜の三時を回っているが、眠る気配すら見せない。
「変身」
ペンダントから闇が溢れ、私の身体を覆う。泡が弾ける様な音と共に、ブーツ、手袋、ワンピース、カチューシャに変わる。私も魔法少女だ。ただし、闇の。
「闇の洞」
魔法で作った穴に入ると、青年の部屋に転移する。
「へっ!? 誰!? 魔法少女!?」
「はい」
「今日はありがとう! あれ? 衣装が違う?」
「闇の眷属の影響を取り去るために、貴方に魔法少女が力を与えましたね」
「あぁ! そのお陰で小説家の夢に向かって頑張れる様になったよ!」
「でも眠らないと、身体を壊します」
「え? 嘘! こんな時間!?」
「光の力は心に希望と力を与えます。でも身体は疲労を重ね、このままだと倒れるまで頑張ってしまいます」
「で、でも全然眠くならない! どうしたら……!」
「落ち着いて。布団に横になって」
青年は言われた通りに布団に入る。
「おいで。眠り羊」
闇色の羊が虚空に現れ、青年の頭にちょこんと乗った。
「あれ、何だか、眠く……」
直に青年は寝息を立て始めた。これで大丈夫だろう。
「おやすみなさい」
私は部屋を後にした。
私は闇の眷属だ。でも皆の様に人を憎んだり滅ぼしたいとは思わない。人間が闇の必要性を分かってくれれば、どちらも滅びずに済むはずだから。
活動を司る光。休息を司る闇。どちらが欠けても人は生きていけない。だから私は闇の魔法少女として人々に闇をもたらす。
願わくば全ての人に安らかな眠りを。私は照らす月に祈りを捧げた。
読了ありがとうございました。
イメージはプリ○ュアです。あのシリーズ敵って、ちょっとやられるとすぐ引くじゃないですか。やられる事を目的とした敵がいたら、とちょっと考えてみました。
後、闇とか夜とかをもうちょっと再評価できたらな、と。夜のお菓子「うなぎパイ」は良い物です。
どうでもいい事ですが、クールな女の子が落ち着いたトーンで「おいで」って言うの、凄く好きです。眠り羊、ちょっとそこ変わって。
それでは皆様、良い夢を。