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転生者の師匠に唆されて、魔法学院の教師になることに  作者: 桑原荒嵐
第一章『魔法学院編』
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第1話「プロローグ」

夕刻を知らせるようなオレンジ色に染まる空。

そして一日の終わりを告げるため学院に鳴り響くチャイム。

それと同時に何人もの生徒が帰り支度をして帰路につく。

そう、それが普通の人が送るリズムのようなものだ。


それなのに、なぜこうなった――


俺は今、絶体絶命の立場に立たされている。

とは言っても、命取られる云々ではなく、女教授が言うに修羅場という物に巻き込まれたらしい・・・・・・

理由はわからないが俺が裂けるくらいの力で両側から引っ張られているのだ。

しかも女に・・・・・・

今は学院生活最後の夏。

男女のカップルが騒ぎ始める時期だが、俺には関係ない。

なんせ俺にはそういう相手が居ないからだ。

とは言いつつも、その相手が居ない奴ら(今俺を引っ張っている女たち)は必死で相手を探しているらしい。

なのになぜ俺が引っ張られてるかって?

そんなの俺の知ったことじゃない。

こいつらがいきなりやってきて、引っ張り始めたんだ。

俺としては工房に行って作りたい物があるのにな・・・・・・


「アリス、あんたいい加減に諦めなさいよ!」

「クリスティーナこそ諦めて!」

「なんで先に目をつけた私が諦めないといけないのよ!」


この言い合いが始まって早一時間が経過しようとしている。

これが始まってからは教室で注目の的となっている。

俺はその状態が耐えられず早く終われと心の中で願っていると・・・・・・


「そこの二人いい加減にしないか」


教室に落ち着いた女性の声が響き、静まりかえる。

もちろん言い争っていた二人は凍り付いたように固まり、表情は恐怖の色に染まっている。

その理由は今の声の主、ある女教授がやってきたからである。


「さぁ、野次馬も帰った帰った。これから休みに入るからといって浮かれているんじゃないぞ」


そう言われては全員が足早にいなくなり、教室には俺と俺を引っ張っていた女二人と女教授のみとなる。


「さて、邪魔者もいなくなったことだ、そこの二人の言い分を聞こうか?」


さっきの優しそうな女教授とは裏腹に、今の彼女はまるで謎のオーラに包まれながら微笑んでいる。

それを直視できずにいる二人は固まったまま動かない。

逆に俺の腕を握る力が強くなって折れそうだ。


「聞こえなかったか?話せと言っている」


女教授の声が低くなっていく。

これは彼女が苛立っている証拠だ。


「な、なな、なんでもありません……よ?」

「そ、そうですよ。わ、私たちは彼とお話ししていただけですから」


なんと見苦しい。

それぞれが俺の腕を握っておきながら話していただけなどというなんてな。

その言葉を聞いていた女教授……いや、俺の師匠は更に苛立っているようだ。

なぜなら先程からまとっている(実際は見えない)オーラが強くなっている。

このままだと俺も巻き込まれかねないから逃げよう。


「いい加減手を離してくれないか?」


俺がそういうと二人は勢いよく首を横に振る。

『こいつら開放する気ないな』と俺は心の中でそう思った。

ここまで来たら道連れと言わんばかりの顔をしている。

とことん性格が悪すぎる!

そんなことを口にしたら二人に殺されかねないためやめておく。

そこでさっきから黙っていた女教授、レーネが口を開き……


「いつまでそうしているつもりだ?そいつが離せと言ったら離さんか」


そう言われて二人は渋々手を離す。

二人は俯いているが一瞬見えた顔は今にも泣きそうだ。

まぁそんなことは放っておいて、俺はその場を後にしようとドアの方へ歩いていく。


「後でお前の所にも行くからな?」


師匠はすれ違う時に小声で俺に囁いた。

仕方ない、まぁ内容は説教だけではないだろうが、俺は気にせず教室を出た。

廊下を少し歩いているときに二種類の叫び声が聞こえた気がするが、きっと誰かが実験失敗でもしたんだろう。

この魔法学院では珍しい事ではない。

自分独自の魔法開発のため実験に励む者、戦闘用に魔法具の制作に没頭する者、この学院には様々なやつがいる。

俺だって例外ではない。

俺は今自分専用の工房、つまり自室に向かっている。

工房が自室なんて変だって?まぁそう思うやつはたくさんいるだろう。

しかしこの学院ではそれが普通なんだ。

――ランク制度――

そういえば理解する人はいるだろう。

俺たち人類が生活している要塞の国


―ガーディアン―


誰が考えたのか、守りたいものを守るため、そんな理由でこの名前になったらしい。

言い伝えではそうなっているが、安直すぎる。

そんなことは置いておいて、なぜ魔法学院が存在し、ランク制度が設けられているのか、軽く説明しよう。


千年以上前、世界では争いごとが多く、戦争が絶えなかった。

この世界には様々な種族が存在し、生き方の違いなどですぐに争いが起きた。

それを見兼ねた女神はそれぞれの国の境界線に謎の壁を作り、戦争を止めた。

壁を建てたことで力尽きた女神は最後に(ヴァル)乙女(キリー)を生み出し、使命を与えたという。

その使命とは年に一度、各種族の中でエリートを出し合い闘わせてそれぞれの強さを示し合うというものだ。

種族によって考える強さも変わる中人類は魔法で対抗しようと考え、この学院

魔法学院グレスティンを設立し、最も優れているであろう子供を学院側から集めて育てる。

適性試験の結果でランク付けをし、それによって教える魔法が異なる。

上位に行けば行くほどより強力な魔法、そしてこの学院はいつしかランク付けだけで満足せずに、学生間で試合を行わせそれによって生徒の競争心を煽った。

なぜそんな上手くいくのかというと、試合の結果によってはランク上位者のような優遇された生活を送ることができ、学院から国同士の争いに出場できる権利を持つ団体、七星(セブンス)に所属できる可能性があるからだ。

その団体に所属して卒業すれば国の代表として自分を評価してもらうことができ、将来有望となる。


まぁ最後の部分は本当なのかは知らないけどな。

そんなことが決められた今、学院内では自分が優れていると証明するために必死になる生徒は少なくない。

この学園に居るならば国の代表として戦果を挙げたいのだろう……俺以外はな。


七星に入れるのは三学年のみだが、三年になるまでに力を証明、もしくは現在所属しているセブンスに推薦してもらえば所属できる。

なぜそこまで緩いのか、それは七星に入ったからと言って必ずしもそのまま卒業できるわけではないからだ。

誰もが欲しがる絶対的地位、そしてこの学園の力こそすべての考え、この二つを交えると理解する人ならばわかるだろう。

七星は学生間の試合、魔法戦争で勝ち抜いたものでもなることができる。

もしくはその試合で七星に勝てばいい。

とはいうものの今まで七星に勝ったものは見たことがない。

七星の中でも序列が存在し、名前の通り七位まで存在する。

それぞれがエリート様ってわけだ。

七星は基本授業には参加せずそれぞれの魔法を磨くことを許されている。

なので七星同士が演習を行うことも多いようで、大体共に行動しているのを今までよく見たものだ。

現在の七星は、今までとは裏腹に一緒に行動していない。

個人の主張といえば納得もできる。

全員が一緒にいないといけない決まりもないわけで、自由にする人もいるというわけだ。

だが今回はわけが違う。

この学院のエリート、七星は俺が潰した。


俺としてはあまりやりたくもなかったことだが、挑まれたからには受けるしかなかった。

昔の俺ならばすぐに勝負を降りていただろう。

なぜなら、この学院に入学したばかりの俺は魔法が使えなかったのだから。


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