三
「で、何が言いたかったのかというとな、私はお前さんを危険な目には遭わせたくないのだ。ここでお前さんに何かあったら私は天国であの二人に合わせる顔がない。」
そう言う師匠の顔は真剣そのものだった。
しかし私の信念はこれで一層強くなった。
「師匠、お察しの通りだとは思いますが、私は旅人として世界をこの目で見てみたいのです。色んな人、色んな街に行ってまだ見たことのないものを見てみたいのです。」
私は語気を強めて言った。
しかし師匠はそれよりも強く語気で、「ならん!」と言った。
「今の世は危険じゃ。以前より魔物たちが蔓延りいつ襲われるかも分からん。そんな時に戦う手段を持たぬお前を旅に出すなどもってのほかじゃ。」
「ですが!」
私は必死に食いかかる。
師匠はそんな私を説得することを諦めたのか、条件を出した。
「ならこうしよう。三日以内に一緒に旅をしてくれる仲間を探してこい。そして私が本当にヘラを守れるかテストしてやる。それでどうじゃ。」
「テストとは?」
「テストは私との模擬戦じゃ。私にかすり傷一つでもつけたら勝ちにしよう。」
「ええ!?」
なんということだろう。よりによってテストの内容が師匠との模擬戦とは。
師匠の強さは知っている。かつて師匠と買い物に行った時、五人ばかりの盗賊に襲われたのだが師匠はその五人を武器も使わず無傷で倒してしまったのだ。そんな師匠に勝てる相手など……。
「どうする?やめるか?」
師匠は少し笑みを浮かべて言う。
無理。だがここで引くわけにはいかない。
「もちろんやります。」
答えてしまった。