表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【短編】JAZZに乗せて

作者: りい

 廊下を走るやつはただの馬鹿だ。あいつを除いて。あいつは馬鹿だけどただの馬鹿ではない。どうしようもない馬鹿だ。まあ、そんなところが好きなんだけどな。イヤホンを耳にかけ、流す曲は尊敬するドラマーであるアートブレイキーの曲。考え事が捗らない。音楽の方に意識が傾いてしまう。何か忘れているような・・・。忘れる位だからたいしたことでもないのだろう。

適当?よく言われる。実際俺も自分のことは適当な人間だと思う。

JAZZってのはフィーリングが大切なんだよ。

 フィーリング重視ゆえの適当。それでいいじゃないか。階段の踊り場に差し掛かる。上の方から陽気なメロディが聞こえ、思わずにやけてしまう。どうせ廊下でも走ったんだろ。

あ、音楽室使用許可忘れてた・・・。


 ばいばいまたねー!教室に残る友達に声をかけ、いつもの場所へ向かう。職員室。失礼します。挨拶は忘れちゃいけない。仲良しの先生に音楽室を使う許可をもらい、それから二人に合流する。どーせまた忘れてるんでしょ。もはやあの二人に期待するのは諦めた。音楽を除いて。

JAZZは信頼があってこそ!期待はしてないけど信頼なら他の誰よりもあの二人にしている。上機嫌になるといつも頭の中で自動再生される、ヴィクター・ウッテンの「U Can’t Hold No Groove」。

 音楽室の手前。二人の話し声が聞こえる。


 廊下を走る。群れる生徒たちをかわし、スピードを上げ、向かう先は音楽室。階段の踊り場を手すりを巧みに使って曲がる。減速は許さない。はやく触れたい。はやく弾きたい。少年の心を加速させるのはピアノ。ピカピカに磨かれている光沢のきれいな、それでいていつも同じ場所で悠々とした立ち姿で俺を待ってくれている一つのグランドピアノだ。

許可?そんなのはいらない。・・・はず。

JAZZの心は自由なんだぜ!!!!!!!

 原則は許さない。いや、知らないの間違いだ。理論、知識、小難しい話には興味がないんだ。今奏でているのはビル・エヴァンスの「On A Clear Day」。


「今日も来るの早いな。」

笠原友也はピアノに座る友人に話しかけ、自分はドラムセットの方へ向かう。

「授業終わってからダッシュしたからね~」

ピアノに座る少年はニヒッと笑い、友也へ視線を向ける。

「ったく、急がなくてもピアノも弾く時間も無くなりゃしねえよ。」

「笠原君、今の時間、一秒一秒は二度と戻ってこないんだよ。それなら0.1秒でも無駄にはしたくないんだよ僕は!」

「走って誰かとぶつかったりしてみろよ。そっちの方がロスじゃねえか。」

「笠原、お前適当なくせに廊下走ることだけはきっちりしてるよな。」

ピアノに座る少年がケタケタ笑っていると音楽室の扉が開いた。

「おつかれ~!おおっ、ふたりとも揃ってるね~。なになに、何話してたの?」

竹内宮子は壁に立てかけてあるウッドベースをよろよろと運び、いつもの場所に置く。

「このピアノバカが廊下を走る馬鹿だって話してたんだよ。」

「なんか今日馬鹿って言いすぎじゃない!?」

「なるほどなるほど。馬鹿二人がバカ話してたんだね!」


「「俺はばかじゃねえよ!!」」 


「あはっ。ハモってる。その息を演奏中にも見せなさいよ!」

宮子が一人で笑っているのに釣られて、もう二人も笑い出した。

「あははは。じゃあそろそろはじめよっか。」

「そうだな、今日は何弾くんだっけ。」

「今日はWaltz for Debbyだよ!」

「ビルエヴァンス!!」

「そうそうあんたの好きなピアニストよ。」

自分の好きな曲を目いっぱい弾けることを知った少年をなだめながら、宮子は友也にアイコンタクトをする。友也はスティックを振り上げ声をかける。

「出だしはお前からだろー」

ピアノの少年はニヤッと笑い、

「じゃあ、始めるよ!!」

奇麗でいて、心が躍りだしてしまいそうなメロディが音楽室を満たした。


 二人の息づかいが聞こえる。宮子のベースの低くて重い音が自分の出すピアノの音に厚みを増してくれる。宮子に視線を向ける。それに気づいたらしく、こっちに笑顔を向けてくれる。自分もたまらなく楽しくなり、鍵盤の上を跳ねる指の動きが大きくなる。おいおい、二人だけでたのしんでるんじゃねえよ。とでも言いたげな友也のドラムが入ってくる。

友也に視線を向けると一見無表情なのだが、口角がピクピクしている。俺らにしか分からない、友也が楽しんでる証だ。つい走りがちな自分の演奏に一定のリズムを教えてくれる。


やっぱこの二人での演奏が一番楽しいな。

一人で弾いていてもこの楽しさを感じることはできなかったんだろうな。


今日も軽快な音楽が放課後の学校に流れる。三つの音を一つのJAZZに載せて。

 10代、20代でジャズを聴く人はいるのかな。そんな疑問を持って書いた短編がこの「JAZZに乗せて」です。主人公のピアノの少年と友也、宮子が登場人物です。ご存知の通り。読んでて気づいた方もいると思うのですが、主人公に名前がありません。名づけるの苦手です。他にも短編を多くの方に読んでもらえたら長編で書いていこうかとも思っていたのでぼやかしたってのもあるんですけどね!!

 そして今回の最大のテーマであるジャズなんですが、おそらくなかなかとっつきにくいジャンルではあると思います。実際僕の周りでもJAZZを聞いている友達はいません。悲しいことに。なのでまあ、布教の意味も込めて読んでいただきありがとうございます。ジャズというのを具体的に示す為に実際にいるアーティスト、曲を作中に登場させました。が、大丈夫なんでしょうか。。。著作権的なナニカ。しかも一曲ジャズじゃないし(笑)しかし、これでジャズってかっこいいやん!と思っていけたら執筆した意味が大いにあったってことですね!自分の好きなことをテーマにしたのでポンポンかけたんですけど、その分乱文になっている気がしないでもないでもないでもないでも・・・。

 最後になりますが、この度は短編「JAZZに乗せてを」ご閲覧頂き本当にありがとうございました。なんの気なしに書いたものかつ、ききなれないテーマで読みにくかったとは思いますが、僕自身書いててとても楽しかったのでこの気持ちが読んでくれた方にも伝わればこれ幸いです。ではでは、またどこかでお会いできることを祈って。Let's Play JAZZ!!!!(意味わからん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] なかなかとっつきにくい"JAZZ"をテーマですが、楽しく読ませていただきました。特に2人のじゃれ合うような演奏シーンが好きです。 [気になる点] 短編だなんてもったいない。もう少し登場人物…
[気になる点] フロント、メロディ(TpやSa)がいない……。 ピアノだけじゃあ、いくらなんでも音の厚みが……ましてやビル・エヴァンスだし(汗) ギリギリ「Moanin」ができるかなぁ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ