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パメル

「『バメル様』、『イレイサ様』、『レイシア様』のお屋敷へ先触れをしてまいりました。御三方とも『お待ちしている』と言っていました。」

ムラーノが報告をしてきた。


「ご苦労。これからすぐ向かうことにする。」



「はい。お供致します。」



「???」



「『アルト様』は邸宅をご存知なのですか?」


(それはそーだ。)


屋敷の馬車に乗り、先ずは『バメルお母様』の元へと向かう。

(ここもでかい邸宅だ。。。)


門手前の兵詰め所で『ムラーノ』が手を上げる。


話が前もって通されていたのか、門は開けられ、通行を許可された。


馬車で10分ほど行くと森の中に屋敷が見えてきた。

「屋敷内の敷地とは言え、森が深いな。」



「『グリムローズ家』ですから。」



「?」



「『植物の精霊』と盟約を結んだ一族です。」



(なるほど。)



屋敷の玄関まで馬車を乗り付け、降りると

家令と思われるものが出て来て中へと案内された。



「『奥様がお待ちです。』こちらへどうぞ。」



「うむ。」


ほどなく応接室らしき所に通され、椅子にかけて待っていると『バメルお母様』が現れた。


「『アルト』良くこられました。。。

本来なら、私が直接会いに言ってお礼を言うのが筋だったのでしょうけれど、

一刻も早くあの穢れた場所から離れたかったものですから。


改めてお礼を言わせて下さい。

うちの子供と私の命、救ってもらい感謝しています。」


「礼には及びません。幸運にもたまたま家族の中で私が皆を助ける力を『持っていただけ』です。義弟妹を救えて本当に良かった。」


謙遜(けんそん)なぞ不要です。

受けた借りはいつか返しますわ。


ところで『アルト』、話は変わりますが何故急に髪を染めたのですか?

なかなか似合ってはいますが。。。

次の『M'sファッション』とか?


『メパムの実』はここら辺ではなかなか手に入らないから高かったのでしょう。」


(髪を染めた事、すっかり忘れていた。。。

『ニクス』も『ムラーノ』もさりげなくスルーしていたのか。。。)


「実は屋敷に病魔をばら蒔いた犯人がこの実を使って髪を染め、変装していたみたいなので、試してみました。

そろそろ落としたいのですが落とし方ご存知ないですか?」


「木灰と共に洗えばすぐ落ちますよ。それと犯人ですって?今回のことは黒幕がやはりいたのですね。。。」


「もともと『メパムの木』はここより寒冷な地に生える木。

『天果』と称されるくらいその実は美味しく、1個あたり金貨1枚はするはずです。

しかもその実は痛み易く輸送に適していない為、『テレーゼ』では、大変貴重な物です。


もっとも、条件さえ合えばここ『テレーゼ』で育つことも可能ですが。。。」



「場所は限られると?」



「そう。水際で、日中温度がそれほど上がらない日陰の多い場所に稀に小さな木が見られるぐらい。

『メパムの実』の王都での価値を知らぬ者が普段の習慣で気軽に使ったのでしょう。」


(俺も気軽に頭へ塗りたくったな。。。知らないって恐ろしい。)



「ならば、やつらの潜伏場所を絞ることも可能ということですか。。。?


でも、王都は広そうです。。」



「『木の実』の大きさはどのくらいでしたか?」



「結構大きかったな。石を使わないと割れなかった気がします。」



「ならば、調べようがあります。」



「だれか?」



「はい。」

メイドが出て来て応える。



「『ゾナール』を呼んできなさい。庭に出ます。」



「はい。ただちに。」



「『ゾナール殿とは?』」



「我が弟で、この屋敷の次期当主です。」



庭園に出ると間もなく、青年と言っても通用しそうな男がやってきた。


「あれが『ゾナール』です。」



「初めまして。『アルト オーガニクス ラファスJr』と言います。」


「ああ、『ゾナール グリムローズ オルトJr』だ。

『ゾナール』で良い。

君は我が『偉大なる姉』の新たなる義息とお見受けするが『アルト』と呼んで構わないかい?」


「はい。お会いできて光栄です。」


(うなず)くと手をがっしり握ってきた。

(悪い人じゃなさそうだな。)

それが第一印象だった。


「さて、我が『敬愛(けいあい)する姉上』が私を呼びだてするからには、何か用件があると思うのですが?」


「その話し方おやめなさい。仮にもそなたは次期当主。話方一つで部下に与える印象が変わると心得ないと。


それはさておき『ドリアード』をここに召喚しなさい。頼みたいことがあります。」


「姉上の頼みであれぱ断れまい。

しばしお待ちあれ。」

そう言って庭で一番の巨木の下まで向かった。


「我が麗しの翠髪の君、『ドリアード』よ、(いにしえ)の盟約に従い我『『ゾナール グリムローズ オルトJr』』が呼び声に応えよ。』


ざわざわっと木々がざわめいたと同時に

いつの間にか一人の女性が現れた。


「マイハニー」

と『ゾナール』が呟き

駆けよったかと思うと抱きしめた。。。



(へっ?)



「ああ、私のスイートハート。

お呼び頂けない時間があまりにも長く、恋焦がれておりました。

私のことをお忘れになったのではないかと、ただただ心配で。」

『ドリアード』も負けてはいない。


「馬鹿だな。俺がそなたを忘れるものか。

精霊であるそなたにとって、1日、2日なぞ、ものの内にもはいるまい。」


「精霊の身だと言え、恋焦がれる時間は長きもの。会えぬ1瞬1瞬が永く感じられておりました。」


「ハニー」


「マイハート」


ひしっ。。。


(えっ?えっ?何だこの展開。。。)



『パメルお母様』の方を見るが、横を向き普通にスルーしている。


いつものことなんだな。。。


「ああ、愛しいそなたを我が身の中に閉じ込め、離したくない。。。」

とドリアードが呟く。


(なんか()り気無く、恐ろしいこと言っているような。。。)


「たまに逢瀬を重ねるから、また愛しさがつのるもの。。」

(おっ、さらっとかわした?。。。)



パンパンパン『パメルお母様』が手を叩く。



「我らが離れた後に、続きはすると良い。」



「『パメル』の小娘風情が、我らが愛の時間を邪魔して良いと思っているのか?」

怒気を込めて『ドリアード』は俺達を睨む。


「愛しの『ドリアード』よ、我らが愛、このような障害で消えることなし。少しの間この者達の問いに応えて欲しい。」

すかさず、『ゾナール』のフォロー。


「あなたの頼みなら。」

(そんなんでいいんかい。)


「で、姉さん、彼女に何を頼みたいんだい?」


「知りたいのはただ一つ。『メパムの木』がこの街のどこにあるのか、それだけよ。それだけ教えて貰えれば貴方達の邪魔はしないわ。」


「その程度なら、たやすきこと。」

ドリアードが目を瞑り集中した。


「いくつか反応があるが?」



「かなり大きい実だったので、大きな木かと思います。」



「どのくらいの実であったのか?」


俺は大体の大きさを告げる。


「そのぐらいの実をつける個体となると、この近辺だと3個体じゃな。

こっちの方向と、こっちの方向、最後がこっちの方向じゃ。」

そう言いつつ指をさす。


(わかんねー。。。


『精霊』に距離を聞いたとしても、分からないだろうしなあ。

まあ、太陽の方角からみておおよその方角は分かるか。。。

それだけもまだましだな。)



「そんな事で分かる訳ないでしょう。もっと具体的に言いなさい。」

と『パメルお母様』

(おおっと。こりゃまた。。。)



「聞いていれば重ね重ね失礼なやつじゃのう。

これで分からぬとは。。。

お主が無能と言うことではないかの?

ほほほほ。」

(『ドリアード』も負けないなあ。。。)



「『マイハニー』の『実力』はこんなものじゃあないさ。『本気の力』って言うやつを姉上に見せてやってくれないか?」

と『ゾナール』

(なかなか。。。)



「『ダーリン』がそう言うなら、もっと頑張ってみるわ。方角以外に何を教えれば良いの?」

とドリアードが聞いてきた。



「出来れば周りの状況とか、目印とか分かると助かります。」



「一つは近くに池がある。

ああ、もう一つにもだわ。

あと一つは川の近く。」



「もう少し、こう、場所の決め手となる決定的なヒントはないの?」

と『パメルお母様』は突っ込む。



「我らは動けぬでな。近くの場所の情報しか分からない。。。」

『ドリアード』は悔しそうだ。



「動けぬなら、動くもの

例えば良く見かける人間とかの情報はないのかお仲間に聞いて貰えませんか?」


「待っておれ。」



「一つ目の木が語るに、

『膨らんでゆったりとした上下に、オレンジと青の縞が入った洋服を来た人間が行き来している』と言っている。


二つ目の木が語るに、

『頭に何か載せた人間が、ぴったりとした深緑の皮を身に(まと)って時々来る』と言っている。


三つ目の木が語るに、

『蝶のようにヒラヒラとした薄衣をきた人間がたまに来る』と言っている。


我の同胞は人とは違った感性を持つ。それゆえ、これが精一杯。。。じゃな。」


(うーん。良く分からん。)


「『ドリアード』助かりましたわ。大体の所が分かりました。感謝します。『アルト』戻りますよ。」

(えっ?分かったってやつ?)


そう言って『パメルお母様』は用はもうないと行った感じで屋敷へさっさと引き返していった。


(マイペースな人だな。)

お礼を言おうとして、振り返ると


こちらもまた、こちらで

マイペースに二人の世界を作っていた。。。


(まあ、手掛かりが掴めたみたいなのでよしとするか。。。)


屋敷に戻ると『パメルお母様』は思案していた。


「場所が特定でき良かったですね。証拠を掴んで、乗り込めば。。。」



「そう簡単に事が運べば良いのですが」

はあっ と『パメルお母様』はため息をついた。



「少々厄介な者達が絡んでいました。」



「どこなんですか?」



「『ドメル帝国』です。」



「『ドメル帝国』?」



「そうです。『ドメル』については後で話すとして、

まず、何故場所を特定できたか、そこから説明しましょうね。

『ドリアード』が言っていた最初の場所は多分王宮の敷地内です。方角とそこにいた者達の服装が宮殿の衛兵のものと一致していました。」


(あの『聞くからに趣味が悪そうな』制服は衛兵のものだったんだ。。。)



「そして二番目、、、」



「頭に何か載せた人がいる場所ですね?」



「それは、恐らく『ダーバン』と言われるもの。

『ドメル人』の男性は髪を伸ばし結った上で布で巻いていると聞きます。『髪』は『生命力の象徴』とかであの者達は決して切らないとか。服も彼らの特徴と一致しています。


そして三番目はおそらく『美の神殿の巫女』。。。

彼女らは『化粧』の為に『メパムの実』を使うと聞きます。」



「あからさまに怪しいのは『ドメル人』と言うことなんですね。」



「それだけではありません。我が一族と彼らには大きな因縁があるのです。。。」



「『因縁?』ですか?」



「『リーフェル』と言う地名に心当たりはありますか?」



(聞いたことはあるような気がする。)



「『ラファスお兄様』あなたにとっての実父が、大敗を(きっ)し『イフリート』の加護を失った地です。いえ、『イフリート』の加護を失ったから大敗を喫したと言った方が正しいか。。。」



「もしかして?」



「そう、その時の相手が『ドメル』です。

それまで、かの国相手に我が国は連戦連勝だったのですが、その大敗で我が国は不利な講和を受けざる得なくなりました。


一説によるとその戦いで、『旧ソロンの民』と『ドメル』が組んでいたとも言われています。

『ソロンの秘術』により、『イフリート』の加護が失われ、その隙に『ドメル』が攻勢に出たと。。


精霊の加護が実際に『失われる』と言ったことはお兄様(ラファス)のケース以外なく、『ソロンの秘術』自体眉唾と考えている人も今は多いわ。」


「ところで『ソロンの秘術』以外で『血の盟約』が失われることはあり得るんですか?」



「その答え、あなたはすでに知っているのじゃない?」



「。。。。やはり、そうなんですね」




「"後継者を全て皆殺しにする" 」



「そう。ただ、精霊の顕現は何故か男子にしかなされないから


"男系の後継者を全て皆殺しにする"

の方が正しいかしら?


もっとも、子孫を残せなくとも同じように失われるらしいから、別に手段が『皆殺し』である必要性もないと言うのが答えだわね。


実際、男児が産まれず『雷の精霊』と盟約を結んでいた一族は消えていったし。」


(それで『ニクス』はメイド達に、義父を誘惑するようそそのかしていたのか。。)


「まあ『アルト』のように、ふいに精霊が顕現する場合もあるから、何が正しいのか分からないけれどね。

今では盟約の内容を伝える者も絶えて久しいから正解なことは分からなくなってきてるわ。

でもね。今回あなたが『音楽の精霊』を顕現させたって言うのは、実は我が一族にとって凄く大きな話なの。私達の子供が、炎の精霊以外にも精霊に選ばれるチャンスがあると分かったからね。」


「我が一族が顕現できる『精霊』って数が限られているのですか?」


「そう。今まで『オーガニクス家』で顕現出来た精霊は『イフリート』、『サラマンダー』、『フェニックス』の3体だけだった。


このうち『イフリート』との契約は例の『ソロンの秘術』で失われたと言われているので、今は実質2体。


あなたが『音楽の精霊』を新たに顕現させたのでそれを入れ3体。


他にも『音楽の精霊』がだれかに顕現すれば、あなたの兄弟4人全員が精霊持ちになれる可能性がでてきたということなのよ。


これまでは継げる者全てに精霊が足りていた訳じゃないから、その、皆で足をひっぱりあうことも多かったんだけれどね。


多分そんな事もあり、その祝賀とあなたの歓迎を兼ねて『ガート』は『晩餐会』を企画したんでしょうね。。」

と『パメルお母様』は語った。


(俺の為に『晩餐会』が開かれること、

『オーガニクス家』の全員が集まること

を知っただれかが、精霊達を一気に解放する好機(チャンス)と捉えた上で凶行におよんだんだろう。舐めた真似をしてくれるな。倍返しどころじゃ済ませないぞ。)


しかし、何故か微妙な違和感が残る。


全員が集まる好機だったとは言え、これが初めての晩餐じゃあるまい?

俺以外の全員を一辺に殺す機会など内部にいたのなら幾度とあったろうに。


なんとなくだが、これまで屋敷に潜んでいた『ソロンの民』は別の目的があったのではないかと言う気がする。


深く気にしすぎ?だろうか。


彼らが今まで息を潜めていたのは、

単に無用な殺生を避け、成人の儀を逐えて実際に精霊が顕現した者だけを狙って殺そうとしていたとか?


なんとなく説得力に欠けるな。。。


別の視点から考えるか。

急に過激になったのは何か理由があるのだろうか?


『ソロン』か『ドメル』の我が一族に対する方針が何らかの理由で変わった

それが、『たまたま』偶然俺がこの家に入る時期(タイミング)に重なっただけとか?


少し無理がある。。。



待てよ?

このタイミング、本当に『たまたま』か?



俺の視点ばかりで考えると見落としがありそうだ。。



『音楽の精霊』の顕現を機会に劇的に変わったのは俺の立ち位置。



だけじゃなく。。。



母上の立場も。。。か?。



『ソロンの民』の王族である母上、その息子、つまり俺がもし『血の盟約』による精霊の顕現をしたら?

『ソロンの民』の中には理屈を抜きにして、『裏切り』と考える者もでるだろう。


もし、それまでの『ソロン』の代表が母上だったとしたら?

まず母上は下ろされるだろう。


そして実権を握ったのが急進派なのなら?

方針の転換も頷ける。。


その連中なら俺を害すのも厭わないだろう。


「ところで『アルト』、今回訪れた訳は?

顔を見せに来ただけじゃないでしょう?」


「一つは目的を達せました。精霊について教えて頂きたかったので。もう一つは。。。弟たちを呼んで貰えませんか?」



「分かりました。誰か二人を呼んで来なさい。」



メイドが(かし)づき下がる。5分ほど後に二人がやってきた。思った通り顔色が二人とも悪い。



「わあ『アルト』だ。」

そう言って二人ともよって来た。


「遊びにきたの?いつきたの?泊まっていくの?」

(おおっ、出た3連発 笑)


「今日はちょっと寄っただけ。また今度ゆっくり寄るよ。」



「え~。遊んでいこうよ。『アルトお兄様』」


そうはいってもちょっとしんどそうだ。


しっかし、妹って可愛いもんだな~。


弟の方は?と見るとかなりしんどそうだ。

でもニコニコ俺と妹との会話を見ている。


早く治してやらないと。

近くにより、そっと

『ポイゾナ』、『ハイヒール』と呟く。



光が溢れ彼らをそれぞれ包む。

ひどい事をするやつもいたもんだ。


「お兄様、何をして下さったの?」


「ちょっとしたおまじないさ。身体が軽くなっただろう。」


「うん。走っても大丈夫なくらい力が湧いてきた。」


素直に笑う。子供って可愛いなあ。


「あとはゆっくり休んで、美味しいもの食べれば、二三日すれば滅茶苦茶元気になれるよ 笑」


「そっか~。『アナンお兄様』も元気になる?」



「ああ、そうさ。なっ。『アラン』」

『アラン』もにっこり微笑み返してくれた。



「『アルト』。。。あなた二人に何をしたの?」



「ちょっとした呪文をかけただけです。元気になる呪文をね。」



「はっきり聞こえなかったのですが、何という呪文なんです?」

疑い深げに聞く。



「『ぽいぽい』って名前の生命力強化の魔法です。」



「『ぽいぽい?』そんな白魔法あったかしら?」



「私が所属している『流派』の秘伝(スペシャル)です。」


なおも疑っているようだが、なんとかお茶を濁した。話を変えるべくつぎの話題を振る。


「あっ、ところでお母様達って仲は宜しいのですか?」


「唐突に何を聞いてくるのですか。。。

私は仲が良いほうだと思っていますよ。

向こうがどう思っているかは別ですが。」



「『レイシアお母様』とはどうですか?」



「ああ、あの娘は凄く良い娘よ。もともと私の部屋付きをしていてくれたの。

気は効くし、明るいし、どんな雑用でも嫌な顔一つせず『ハイハイっ』て引き受けてくれるような表裏ない娘よ。」


(なら彼女の実家だけの暴走か?)


「お母様は『レイシアお母様』のご実家はご存知ですか?」


「勿論知っているわよ。都で一番の薬問屋ですもの。この子達の薬も無償でいつも届けてくれるのよ。」


「素晴らしいですね」

(ギルティだ。)



ふいに『パメル母上』の言葉で現実に引き戻された。


「『アルト』子供達のこと重ね重ねありがとう。

晩餐の時は『ヒールは出来るの?』なんてバカにした口調で聞いたこと謝らないとね。


ごめんなさい。


ディール伯の件、かなり誇張して伝わってきたと思っていたから。聞いていた以上に優秀な『白魔導師』だった。

見かけや年齢で能力を判断するなんて私もまだまだね。。。」

と頭を下げられた。


「頭をお上げ下さい。先に言いましたように家族なのですから、助け合うのは当然のことです。弟たちを助けられて本当に良かったと思ってます。」

(実際弟たち助けられて嬉しかったし。)


「ああ、アルト。今後は私のこと第2の母と思って。私も本当の子供と思ってあなたに接するから。。。」

そう言って抱き寄せられた。


(あっ、この展開予想出来んかった。。。。

甘い良い匂いがする。。。)


「で、今回の件、本当のこと私に話してくれるわね?」


「はい。。。」


この瞬間俺は落ちた。。。

恐るべし『パメルお母様』


「本当のことですか?」


「そう。この子達の調子が悪くなってから、何人の『白魔導師』にみせたと思う?」


「かなり沢山でしょうね。」


頷かれた。


「その『白魔導師』達はみな『病気』を疑って『ヒール』とか『キュア』とか沢山かけてくれてました。中には『呪い(カース)』を疑って『解呪(ディスペル)』までかけた者もいました。」


「それでも、治らなかった?」


「そう。一時的に調子が良くなっても数日経つと元に戻ってしまった。」


「『ポイゾナ』は誰も試さなかったんですか?」


「ええ。あの子達には屋敷で作った物以外食べさていないし、屋敷の者には。。。」


「名前の誓約ですか?」


「そう。だから『解毒』なんて誰も試みなかったわ。

やっぱり唱えていたのは『ポイポイ』なんかじゃなく

『ポイゾナ』だったのね。」



(えっ?引っかけられた?とか??


『ぽいぽい』じゃあ、騙されはしなかったんだな。)


「そして、何故か『レイシア』を疑っている。」


(げっ。やっぱり聞き方が不自然だったか。)


「何故?」


「身内を疑っているのは、使った魔法を誤魔化そうとした事から分かるわ。そして私達3人の関係を聞いた時、真っ先に聞いたのが『レイシア』との関係。普通だったら、、」


()ず『イレイサお母様』との関係から聞く。。。ですか?」


「そう。いずれにせよ、先に言った通り『レイシア』を疑うのは間違っていると思うわ。」


「『レイシアお母様』がうちに入られた経緯は?」


「あの娘が私の部屋付きだったのは話したわね。

彼女の場合『行儀見習い』で入ったので普通のメイドとしてではなく、私についたの。

その頃は、気が利く上にういういしく、明るい娘だったわ。

良くクッキーを焼いて皆に振る舞ってくれていたし。」


「『行儀見習い』ってなんですか?」


大店(おおだな)の家の子女は、行儀作法を身につけさす為、貴族の家で数年間に限って見習いをさせる風習があるの。その事を『行儀見習い』って言うのよ。

普通のメイドと違って、お手付きにならない様に婦人付けにしたり、子女付けにしたりするのだけど。。

中には『玉の輿』を狙って娘を仕掛ける親もいるみたいね。」



「『レイシアお母様』の家がそれだったと?」



「まさか。あの娘には当時好きあっていた許嫁(いいなずけ)もいたし。その相手とは親も乗り気だったと聞くわ。」



「でも、お父様と?」



「『ガート』が私の部屋に来た折に見初めたみたいね。

まあ、炎の一族に入れる栄を得た訳だから、良かったんじゃないの?

お手付きの上、放出ってことは貴族家では良くあることだし。その中で子供を身籠ることは幸運なことよ。その上、家に迎え入れた訳だから尚更ね。


家に迎えられたと聞いた時、『おめでとう』って言って祝福してあげたわ。」


(良くも悪くも『パメルお母様』は貴族だな。。。 )



「ところで、アルト本当はおいくつなの?」



「えっ?11歳ですが?」



「そうよね。そうだわ。しかし何か不思議ね。同年代の殿方と話ているような気が何故かする。何故かしらね?」



「何故なんでしょう???」

(鋭いのか鈍いのか?分からん人だな。)















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