犯人は? Part 1
ベルルと入れ替えに『ニクス』と『ムラーノ』がやって来た。
「お目覚めですか?」
「ああ。いくつか聞きたいことがあってな。」
「何なりと。」
「今回の騒ぎ以降いなくなった者、所在が分からない者がいないか、まず知りたい。」
「アルト様のおかげで、亡くなったものはおりません。使用人一同を代表してお礼を申し上げます。」
『ニクス』は頭を下げた。
「『亡くなった者は』と敢えて言うからには重匿化した者がいたと言うのか?」
「『重匿化した者』もおりません。
ただ、行方が分からない者数名おります。」
「ほう。行方が分からなくなった者の中には、結構長く勤めていた者もいるのだろう?」
「何か心当たりでも?」
「ああ。『ニクス』はここは長いのか?」
「はい。オーガニクス伯が幼少の頃から仕えさせて頂いております。」
「ならば、私の実父ラファスが、義理父に爵位と屋敷を譲った時にはいたな?」
「はい。」
「その時、この屋敷の使用人は全員解雇されたのか?」
「いえ、そんなことは。希望する者はそのまま雇ったと思います。調べますか?」
「ああ。それと不明者を付き合わせてみてくれ。」
「何か疑いでも?」
「俺の母上(実母)の出は知っているな?」
「はい。『旧ザンザニア』の王族であったとか。」
「『旧ザンザニア』は王国に併合されたのだよな。」
「でももう昔のことです。今は同じ王国の人民として繁栄を謳歌しているはずです。いまさら王国にどうこうなど。。。」
「建前はそうだろう。と言うより、大多数の民はそうだろうな。」
「『アルト様』は『ソロンの民』について言われているのですか?」
と『ムラーノ』が口を挟む。
「ああそうだ。」
「今回の件、アルト様の母上も絡まれていると?」
「それは違う。ただ、『ソロン教』は絡んでいる気がする。」
「何故、そう思われるのですか?」
「簡単だ。一番最初に、俺を殺そうとしたからだ。この屋敷の中で、父(義理父)以外に精霊が顕現しているものは誰だ?」
「『アルト様』です。
ただ、今回の件、単純に病気が屋敷内に広がっただけと言う可能性もまだあります。」
「偶然か。偶然なら良いのだがな。これを見ろ。」
「香水瓶ですか?」
「中に病魔が入っている。」
手を出そうとして『ニクス』は慌てて手をひっこめる。
「一つ聞こう。この家では、新人のメイドが新しく部屋付きになる時に先輩から『香水』を振りかけられる習慣があるのか?」
「さあ?」
「『ニクス』ちょっとメイド達に確認して来てくれ。」
『分かりました』と席を立ち、すぐにまた戻って来た。
「そのような習慣はないとメイドどもは言ってました。『最近できた習慣なら知らないですが』とも言ってましたが。」
「だろうな。実は俺の部屋付きのメイド少なくとも2人が疫病騒ぎの際、先輩メイドから香水を振りかけられている。その香水が入っていた瓶がこれだ。」
「そんな重要な話。。。」
「俺が聞いたのもさっきだ。目覚めたばかりだからな。重要性を知らない者にとってみれば微笑ましいことだろう?」