プロ
次は『ルナ』だ。
「用事を言いつける前に聞きたいことがいくつかある。」
「はい。」
「まず、ここに雇われてからどのくらい経つ?」
「もしかして首ですか?」
気丈にもまっすぐ俺を見る。
「状況による。明らかに今回の疫病騒ぎの発端はルナだからな。守る為にも正直に答えろ。」
「はい。」
「で?」
話を促す。
「このお屋敷に雇って頂いて約1週間になります。」
「病が発症するまでの数日、使いも含めて屋敷の外に出たことは?
とりあえず2日で良い、出た場所と、会った人を全てを教えてほしい。」
「それなら簡単です。屋敷外に一度も出ませんでした。」
「本当か?」
ステータスウインドウを見ると
◼◼◼【TRUE】◼◼◼
と浮かんだ。
「雇われてから数日は、貴族家としての仕来たり、使用人としての心得、ご家族様すべてについて『ネリサさん』より徹底的に叩き込まれていました。とてもではないですが、外出する間などありませんでした。『ネリサさん』に聞いて頂いても。。。」
「それには及ばない。だとすると家の中での感染となるが。。。
血の付いたもの、例えば鳥とか鼠の死骸を触ったとか、
吐瀉物を片付けたとか、
誰かから何かかけられたとか、
味のへんな物を食べたとかないか?」
「熱が出る前、2日ですか?」
「かかってから 、発症、重匿化するまで
時間が短いウイルスだったからその期間で十分だ。」
「『ウイルス』?」
「病魔の事だ。」
「動物の死骸を触ったり、汚物を片付けたことはないです。食事は基本皆と同じ物を食堂で食べていますし。。
朝ごはんだけは自分で作っていますが、へんな味がしたことはなかったと思います。
あと、何かかけられたかですが。。。
血とか咳ですか?」
「それ以外に何か心当たりがあるのか?」
「熱が出る当日の朝、メイドの先輩からご主人に気に入られる為には、『香りの身だしなみ』も必要だと言われて、香水をかけられました。」
「そう言えば、私もかけて貰った気がします。『部屋付きになれて良かったね』と祝福をされたので覚えています。」
『ベルル』もかけて貰ったようだ。
「一応念のためそのメイドにも確認をとるか。そのメイドの名前は?」
「名前は分かりませんが、もう一度お会いすれば多分分かると思います。」
「私もそう言えば名前は。。。ただ、人の良さそうな、ニコニコ笑っている、感じの良い方でした。年は20台ぐらい、ブロンドで。。。
どこにでもいるような普通の方だったような気がします。」
「だとしたら私に話しかけてくれた人とはちょっと違うかな。私の方は、少し赤みがかかった黒色の髪で、背は155cmぐらい。10台後半ぐらいの方でした。顔は地味目だったような。。。」
なるほど、どうやら今回の件、黒幕はそいつらしいな。。。
地味目の顔でインパクトがなく、人当たりが良い。どこにでもいそうなタイプ。
プロだな。おそらく。