勝負
(まずは、義父からだな。。。次は義兄妹。)
『キュア~』を唱え、ついでに『ハイヒール』を付すと、頭を振りながら義父は起き上がってきた。まだまだ辛そうだ。
「どうした?」
「疫病が発生した可能性があります。」
(『疫病』と聞いて、しゃんとしたのは流石と言えるか。)
「どうすれば良い?」
「ご覧の通り私の能力で、治すことができます。屋敷内の感染状況と、別邸に帰られたお義母様達の様子も気になるので、その状況を把握願います。特に屋敷からいなくなった者がいないか、重点的に調査願います。」
「と言うことは今回の件、人為的なものたと?」
「あくまで可能性です。」
「『足りないもの』や『して欲しいことが』あれば、言ってこい。」
「なら、、、玄関ホールに発症者を集めて下さい。別邸も同じ状況ならその発症者もこちらに連れてくるよう手配を。。。
先ずは義母と義兄妹を先に治します。
その後、男手を確保したいと思います。
体力のありそうな者を優先で治療するので呼んで下さい。」
「別邸の妻と息子は?後回しにせよと?」
「『王都』で伝染病を流行らせた場合、当家におとがめの心配は無いのですか?」
「無いと思うが。。。評判は落ちるだろうな。」
「私が責任を持って、『義母』も『義弟妹』も、勿論『使用人』も全員助けます。
今晩中に終わらせましょう。『お父さん』」
「出来るのか?」
(勿論出来る自身なんてない。ただやるしかないじゃないか。)
俺は大きく頷いた。
(さあ、行動あるのみ。)
※※※※※※
義母の部屋に向かうと、ベッドで子供とともにうなされていた。
(一緒に寝ているんだな。。。。)
感傷を横に置き、容態を見る。
脈も早く、高熱だ。。。
とりあえず子供二人に『キュア』と『ハイヒール』をかけ、容態を安定させた。
(次は義母だな。)
「大丈夫ですか?お母さま、意識をしっかりお持ち下さい。」
「『アナン』、『イザベル』は?
急にぐったりして。。。。誰か、誰でも良いから助けて」
と魘されている。
「大丈夫です。二人は先に治療しました。あとはお母様だけです。」
「あなた誰?私にはあなたのような息子なんていないわ。」
錯乱しているな。
子供二人と同じ処置をしてさっさと出る事にした。
俺にはまだまだやることがある。
ホールに着くと、まるで『野戦病院』のようだ。病み上がりというのに、『メイ』達も介抱しまわっている。
「男性の方、先ず治しますのでこちらに。」
「我々はまだ大丈夫なので、体力のないご婦人を先に。。。お願いします。」
(言っていることは正しいが、『要らぬお世話』だな。。。)
「二度と言いません。こちらに来て下さい。」
口調を荒げると渋々従った。
とりあえず30人治したところで、別邸へ派遣する隊と屋敷を捜索する隊に分けた。
「もう、貴方に病がうつることはありません。なので、安心して患者をここに連れて来て下さい。
別邸組はお母様と私の義弟の確保を最優先として下さい。その後は弱っている人順で搬送願います。
あと、重匿なものには紐を足に結わえるように。その者から優先していきます。身分、種族に関係なく、あくまで重症の者だけに結わえて下さい。分かりましたか?」
みな一様に頷く。
(ここからは、時間との勝負だな。)