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闇の足音 あやしい

ヨーゼフさんとライラの見送りの帰り道、ロイ達3人が道の(かたわ)らで何か真剣に話しているのを見かけた。

先ほどの気まずさから、足早に通り過ぎようとしたその時、そのフレーズが聞こえた。


「アルト様を巻き込むなら俺は降りる」


ロイだな。


「でも、ライラがいなくなった後、頼れるのはアルト様しかいないだろ。誰も他にヒーラーの当てなんて無いだろ?」


とサワン


「しっ。」

気がついたネロスが俺を指さす。


「。。。。。」


そのまま、俺は通り過ぎた。


(お前ら、何を企んでいるんだ?

白魔導師(ヒーラー)が必要だなんて。。。、

嫌な予感しかしなかった。)



こっそり戻って、奴等の近くの薮に潜む。


用心しているらしく、声を潜めている。

(何も聞こえない。)


何か方法はないか?

音を相手にぶつけられるなら、逆に音を引っ張ってこれないものか?

ロイ立ちの周りの音を自分の耳もとに引っ張ってくるイメージをもつ。


MP10,20と上げていくと20で聞こえた。



残念なことに最後の一言だけだったが。


「じゃあ明日の深夜1時にここで」



明日実際来て確かめるしかないな。。。

まずは、屋敷を抜け出す算段をつけねば。

ついでに、この魔法を登録したいな。


魔法名 聞き耳

対象相手の周りの音を集音し、自分の耳もとで再生。使用MP20


頭に描くと前回と同様に頭の中に声が響く

『承知した。」


今回は気絶しなかったものの、ステータスを見るとごそっと800MPの魔力が体からなくなっていた。


まずは、屋敷を抜け出す算段をつけねば。


※※※※


屋敷に戻った後、抜け出す為のルートを探す。

(取り敢えず、塀の周りを一周してみるか。)


塀を登る為の手がかりは少ない。

(これは登るのにかなり苦労するな)


(ん?)


ふとあるものが目につく。

庭師が道具を普段しまう小屋だ。塀に接して建てられている。

(手がかかりそうな、凹凸がある。登ることは、可能と。。問題は塀の向こう側に降りる時だな。高さは結構あり、この身体だとまず怪我をする。)


その問題は小屋を覗いて解決した。

ロープが一巻き保管されていたのだ。

(取り敢えず、外に出しておくか。)


あとは、2階の俺の部屋からどう抜け出すか。

(ベランダのバルコニーから裂いたシーツで作ったロープで降りる? まあ、冗談だが。笑)


部屋に帰り、実際窓から眺めるとこれも何とかなりそうなのが分かった。屋敷の屋根から下に雨どいがはしっていて、子供の俺程度なら伝い降りるのができそうだったからだ。


練習できないから、ぶっつけ本番だな。




※※※※※※

当日、俺は早々に自室に入ると毛布を丸め布団を(かぶ)せた。何となく、誰かが布団に潜っているように見える。


(部屋付きメイドが覗きにくるぐらいなら、これでいいか。)


灯り(ローソク)を消し、暫く様子を伺った。途中何度か女中が覗きにきたが、

ドアのスキマを少し開け、そっと覗く程度であり気付く気配はない。俺は少しほっとした。


深夜0時、俺は行動を起こすことにした。

幸いギフトにより、暗視は出来るので月の照っているこんな夜は不便はない。


雨どいを無事に降り、庭師小屋に向かう。


(えっ???)


何度見回しても、庭師小屋の外に出しておいたロープがない。

(もしかして、片付けられたとか?

小屋にしまわれた可能性が高いな)


庭師小屋を開けようとして、ドアに鍵がかかっていることに気付く。


計画穴だらけだな。。。


さて、どうしよう。?

部屋に戻る?。。。あり得ない。

鍵を開ける?。。。道具がない。

鍵を探す?。。。場所が分からない。

塀から飛び降りる?怪我せず降りるのは難しいだろうな。


取り敢えず塀に登ってみよう。


※※※※

小屋から、塀の上に飛び移り下を見る。

高い!!


(無理か。)


念のため、塀の上をそろそろ移動する。

運に見放されたと思っていたが、

違ったようで、塀近くの木枝が塀に向かって張りだしているところがあった。


意を決して飛び移つる。そして、慎重に枝の上をはい進み、幹に足をかけ木を降りる。


(ふう。何とかなったな。。。)


『メリッ』

地上2メートルまで降りたところで、

音とともに枝が折れ、

俺は落下した。


「バサッ」

木の植え込みに落ちた際、結構派手な音が響く。

シンと静まりかえっている中で音は響く。

正直生きた心地がしなかった。


念のため10分ほど、地面に臥せて様子を見たが、だれも見回りに来なかったので、移動を開始することにした。


しかし。。。痛い




それから俺は彼らの集合場所近くに行き、藪に再度潜んだ。


暫くするとロイが来た。子供用の練習剣ではなく、彼には大きすぎる剣を抱えている。(真剣か。。)

次にネロスが現れた。背に短弓と矢筒を背負い、腕には膨らんだ袋を抱えている。

そして、予想通りサワンが最後に重そうな袋を抱えてきた


「『サワン』、まさか家の人には気付かれていないよな?」

とネロス


「その点は大丈夫だって」

サワンが顔をしかめて言う。


「両親が、寝静まるまで待って来たんだから。」


「なら良い。」


「そろそろ行くぞ。朝までに終わらす」

ロイが号令をかけると皆動き始めた。


彼らが去った方を見ると、意外にも村の門とは反対の方だった。


間を開け、見つからないように追う。

村の塀に沿ってロイ達は移動していくのが見えた。


そして、、、不意に彼らの姿は消えた。


(ん?)


数分待ってから、奴等の消えた辺りに行ってみる。


塀の板と板の間に割れ目があり、子供なら何とか外にでれる隙間があった。

(ここから出ていったんだな。さあ、冒険?の始まりだ 笑)


そして、俺は出だしから(つまず)いた。


(奴等どっちの方角にいったんだ?)


あれだけの荷物を抱えて、道無き道をわざわざ行くのは考え難い。

だとすると、街道に出た可能性が高い。

取り敢えずまずは、街道だ。


問題は街道へ出たとして、王都方面へ向かったのか、山へ向かったのかだ。


王都方面は平坦な道が続くので、見晴らしが良い。数分の差だから比較的見つけ易い。夜とは言え満月に近い月齢だから早歩きでいけばすぐ追い付ける。


問題は、彼らが山へ向かった可能性だ。

重そうな荷物を背負い、

足の遅いサワンも連れて

夜目がきくのは狩人スキル持ちのネロスだけと言う状況で、野生の獣ばかりではなく魔物も現れる山へ行くというのは考えにくい。王都方面だな。


この時おれは奴等の馬鹿さかげんを、すっかり忘れていた。



※※※※※※

(まずい)

15分ほど王都方面へ向かい急いだが、ロイ達の姿形も見えない。


(サワンの足が知らない間に早くなったとか?

あり得ないな。


次の村までほぼ一本道なので、見失うこともあり得ない?か。なら。。。

悪い予感が頭をよぎる。

やはり、山か。)


取り敢えず村の前まで街道を戻る。

腰を落とし、道に彼らの痕跡を探す。

すると、山方面に向かう道に何か鋭いものを引き摺ったような後を見つけた。

(もしかして、ロイは剣を引き摺って歩いている?なら追跡はしやすいな。


そもそも、どこに行こうとしているんだろう?。


そういえば、『朝までに済ませよう』と道端でロイは話していた。

村の朝は早い。この時期5時くらいには皆起き出す。

ということは深夜1時に出発して、

仮に朝5時に戻るつもりたとして、

かけられる時間は4時間。

どんな用か分からないが、用を済ませるのにざっと1時間費やしたとして、

残りは3時間。片道1時間半ぐらいの旅程か。

沢の秘密基地まで2時間半だから沢まで行ったら行き過ぎだな。

夜道と言う事を考えたら1時間ぐらいの旅程と考えた方が無難かもしれない。


とすると王都方面の探索に費やした往復30分は痛い。


(どうか間に合ってくれ)

心の中でつぶやいた。


※※※※

半ば駆け足で、月に照らされた山道を走る。不思議と怖さはなかった。


注意深く痕跡を探りながら40分くらい走ったあと、不意に痕跡がなくなった。

道から外れたところに入って行ったか?


少し戻ると草むらに向かって折れた形跡を見つけた。ここからは道を外れたらしい。


それを示すようにムッとするような血の匂いがした。

草むらの中に、一角ウサギと言う魔獸の死体が放置されていた。


猟師なら、死体から肉と素材を剥ぎ取るはずだ、また他の魔物にやられたのなら、そもそも形も残っていないはず。

なら?

『回収している時間のない誰か』の仕業だな。


(あと少しで追いつけると確信した。)



慎重に、辺りへ気を配りながら5分ほど進むと川にでた。


さて、川上か川下か?地面を良く見ると

踏み固められた後があり、川上に続いている。

(川上だな。)


尚数分歩くと、先の方に洞窟らしき穴と3人組の姿が見えた。


(川横の洞窟って。。。また秘密基地を作ってたのか、あいつら。)


前回の秘密基地は、子供が遊ぶには危険だと言う理由で、大人により封をされたと聞く。


(で、あいつらはまた、秘密基地候補を探して作ったってことか。逞しいな。でも、なんで基地に入ろうとしないんだ?)


ネロスが袋から何かを取りだしている。


(草?もう少し詳細が知りたいな。)


『聞き耳』を発動する。


「『サワン』、お前はそこの薮で終わるまで隠れていろ。決して出てくんなよ。『ヒールポーション』は割らないようにな。」


「あとは打ち合わせ通り。煙草の煙が洞窟に溢れ、混乱した奴等が出てきたら俺が速射で射る。打ち漏らしは『ロイ』、よろしく頼む。」


「おう。で、奴等に取られたお前の父上の皮剥ぎ用のナイフ、それだけ取り返したらすぐ撤収だぞ。」


「まあ、コボルト数匹ならあっと言う間さ。アルトでさえ、去年一人で3匹倒したらしいし。」

とネロスが嘯く。


(状況は分かった。ある程度は作戦を考えている様だし、深追いせず撤退も考えているみたいだ。しばらく隠れて様子を見るか。)


川岸に、適当な木があったので登って見ることにした。


(しかし、煙をたくと言っても、洞窟の中に向かって都合良く流れていくものなのだろうか?しかも、あれだけの草の量で。)


火花が散るのが見える。火打石を使い、煙草に火をつけようとしているようだ。


『ガチャガチャ』

不意に木の下を通過する集団が見えた。

1,2,3,4,5そして6

6匹目は見るからに体格が良く、しかもチェーンメイルまで着ている。


まだロイ達は、火をつけようと頑張っているようだ。


(知らせないと。ただ、まだこいつらもロイ達に気付いていない。やつらに気付かれる事なく、ロイ達の注意をこっちに向かせないと。)


『!!!』


(モスキート音だ‼)


『モスキート音』

昔、TVのバラエティー番組で流行っていた時に、Yout○beのなどで聞いたことがある。

確か「キーン」とした非常に高い音で、あまり気持ちの良い音ではなかったなあ。

『アカシックレコード』で音は呼びだせないか?

そう思ったとたんに、頭の中で『モスキート音』が鳴り響いた。


この音を魔法発動にあたってのイメージとして使えるのか?

(難しいな。少なくともすぐは無理だ。)


他に再現する為のヒントを『アカシックレコード』で探してみた。

(『モスキート音の出し方』とか載って無いだろうか?)

出てこない。

他は。。。目を引いたのは

『モスキート音の波形』がだった。


波形を思い描いて魔力を込め、相手に打ったら音をだせないかな?

『 スタン』だって実際声に出すわけじゃなく、自分の声をあくまでイメージして打つだけだし。


ダメもとで『波形を基に音波を出す魔法』と念じ、

『モスキートの波形』を頭に思い描く、

そしてネロスに向かってMP10の魔力を打ちこんだ。




※※※※※※

何と、無事に鳴ったらしい。

効果はテキメンで、『びっくっ』と

反応した後、ネロスは後ろを振り返った。

そして、コボルトの姿を視認するやいなやロイにタックル。近くの茂みに一緒に飛び込んだ。


(何とか間に合ったか?)


「ぐうぇ」

サワンの押し潰したよーな声が響く。


(あいつ、あの茂みにいたんだっけ。)


流石にコボルト達も、その声には反応した。

一番デカイ個体が、茂みを指さし何かをしじする。


一斉にコボルト達は走りだした。


(こうなったら、しょうがない。)


片っ端から、俺は『スタン』を打ち、援護することにした。


先ずはチェーンメイルのボスを狙う。

『バーン』ボスの耳もとで『スタン』が爆発、一瞬動きが止まった。


止まった瞬間、ボスの左目に矢が突き刺さった。(グッドジョブ、ネロス)


まだボスはふらふら、グラグラしている。


その間にネロスの速射がコボルトに降り注ぐ。


一匹、また一匹と倒れる。3匹倒れたところで魔物達はボスを担ぎ上げ、茂みに向かうのを止め、洞窟に逃げ込んだ。


それからジリジリと2分ほど立つも敵は出てくる様子がない。

(飛び道具を持っていないから、引きこもって様子を見ているんだろうな。)


じれたのかネロスが、茂み近くに倒れているコボルトにサット近寄る。

そしてコボルトの身体を探ると『見つけた。撤収するぞ』と怒鳴った。


どうやら、目当ての物を見つけたらしい。


ロイ達が撤収を決めたので、俺もとっとと消える事にした。

山道をひた走り、村の塀の穴をくぐり、屋敷の横の木を伝い、雨どいにしがみつき、布団に潜り込んだのは明け方だった。


そして次に起きたのは、11時近かった。

遅い朝食を取りに階下へ降りると


はたして、屋敷の中は大騒ぎになっていた。

村長はじめ村の有力者達が、村の男性を大勢連れ集まっていたのである。


どうやら母上に陳情に来たらしい。


ムラーノに何が起きたか聞いたところ、

村近くの洞窟にコボルトの集団が住み着き退治したいが、村の男手だけでは不安が残る。なので、屋敷の警備隊の力を貸して欲しいとの陳情だった。


(昨日の今日で、この話が出ると言う事は?)


何故、巣があるのが分かったのか、村長に聞いてみたところ。。。


早朝ロイ達の不在が彼らの親にばれ、捜索隊が組まれたらしい。

捜索隊が村を出てすぐに、村へ戻ってくる途中の彼らに出くわしたとか。


その後あっさりサワンが、昨夜の事をすべてゲロっておかげで、コボルトの巣が村の近くにあることが分かったのだとか。。。


ちなみに捜索隊はそのまま、ロイ達の案内で洞窟手前まで行き、話通りコボルトが3体死んでいるのを確認している。


それらの報告を聞き、母上はすぐに屋敷の警備隊の人員を、貸し出す事に同意した。





※※※※※※

その後、討伐隊が洞窟に向かい中を確かめたが、入口の手前部分には、コボルトの生活している跡はなく、あったのはロイ達のがらくたばかりであった。


ただ、ロイ達の証言(3部屋程度の広さ)にあった奥行きより更に奥へと洞窟は繋がっており、それ以上の探索は危険と言う事で

入口をレンガ製の壁で覆うことになったとか。


これでひとまず決着はついたと村の人々は胸をなでおろした。


勿論、悪がき3人には大目玉が、ネロスには勝手にナイフを持ち出していた事がばれ、父親からの更なるゲンコツが待っていたとか?



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