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排除成功

晩餐の席に赴くと、俺が一番乗りだった。

席は決まっており、着席をして待つこととなった。


赤いドレスを着た派手な婦人が俺の前の席に座り、その子供らが俺の左手に軽く会釈して座る。(なんか顔色悪そうだな。)

その後、薄い紫、ピンクのドレスを着た婦人とその子供が次々と着席した。

最後に少し遅れて義父が真ん中に着席し、晩餐が始まった。




「皆も知っての通り、今日から我が家に家族が一人増える。名を『アルト』と言う。

彼は我が兄の子で、由緒ある我が『オーガニスク』の血を引いている。


そして、この年ながら夏の別邸近くで起こったスタンピードで『ディール伯』を白魔導でサポートし退けた功績者でもあり、

また『精霊より認められた者』でもある。


このような者を我が家に迎えられて嬉しい。」


周りを見回すと義母達からの視線が痛い。敵意と言っていいくらいか。。。

唯一義兄弟達からはその様な視線が感じられないのが救いだ。


「さて、家族を紹介していこう。まず私の右側、お前の前にいるのが『バメル』、『イレイサ』、『レイシア』だ。この3人がお前の新たな母となる。困ったことがあれば頼ると良い。そしてお前の左手にいるもの達がお前の弟、妹となる者達だ。順に『アナン』『イザベル』『サモン』『ロダン』と言う。

兄妹ともに我が家の家名を高めていくことを望む。」



「はい。」



「以上だ。」



その言葉を合図として、食事が配膳され始めた。


食事は和やかな雰囲気の中に悪意を孕んで進んだ。


「『アルト』白魔導が出来ると聞きましたが『ヒール』は使えるの?」



「『ヒール』を使う事は出来ますよ」



「ほう、それは凄いわね。「ポイゾナ」とかも出来るの?」



「はい。」



「それは凄いわね。あなた『アルト』は『ヒール』以外に『ポイゾナ』を使えるみたいですよ。」と『バメラ』は義父に聞こえるように言った。



俺は嬉しそうに微笑んでみせた。

「お褒めいただきありがとうございます。」



尚も口撃は続く

「そう言えば精霊の加護を受けたそうね。どの精霊?『イフリート』?『フェニックス』?」

興味を持っている事を隠すつもりもないのか『イレイサ』が直球で聞いてきた。


「加護を得たのは残念ながら『炎の精霊』ではなく、『音の聖霊』でした。」

下を向いて俺は残念そうな顔を浮かべた。



「まあ、それは残念。『お兄様』の血筋ならその2つのうち1つは確実と思ったのに。」



「残念ながら期待されている『炎の精霊』ではなかったようです。」

俺は少しうつむき加減に答えた。



俺が『炎の精霊』の加護をもらったのではないと分かったとたん、明らかに彼女達の敵意がなくなったのが感じられた。



「将来は『アルト』はやっぱり国家所属の『白魔導師』になるご予定?、『治療院』に勤めるのも良いわね。

または。。。『音楽の精霊』の加護を受けた一族に養子で入ると言う手も。。。」


『レイシア』がここぞとばかりに追い込みをかけてきた。


(邪魔者は排除しろってか?

まったく、これで血を分けた親族っていうのだからな。

とりあえず話を逸らすか。)


「自分のいく末についてゆっくり考えたいと思っています。

実は『服飾デザイン』にも興味があって。。。


『M's』と言うブランドを『メイ』子爵と立ち上げました。」



「そんなこと子供には無理でしょう」

と『レイシア』が呟く。



「勿論、私に大人と渡りあえる能力などないので、交渉は『ムラーノ』に間に入って貰いました。」



「その件は『ムラーノ』より報告を受けている。こやつは謙遜しているが実際立ち上げたのも『アルト』だと言うことだぞ。」

と義父が言う。



「本当なの?しかも『M's』ですって?


そう言えばあなたの着ている服。。。


まさか『メイ子爵』が着ていたのと同じデザインとか?」



「ええ。」

その一言のインパクトは強烈だった。



「デザインを『アルト』が担当してるって。

。。」



「まあ。。そんなところです。」

(正確には、前世デザインを写しているだけだけど。デザインを担当しているのは俺だから、そう言ってもまあ良いか。)


「女性物も?」



「はい。作るのはあくまで別のところでですが。実は私の部屋付きのメイド用にさっきもデザインを考えていまして。」



「考えたの?」



「数日中にはアイディアが固まるかと。」



「アルトの部屋付きのメイドだけでは勿体ないわ。ねえ、あなた、うちのメイド全てのデザインを『アルト』に任せては?」



「うむ。ただ、『ただで』と言う訳にもいくまい。『アルト』、出来によってはM's商会を通じ、正式に発注しても良い。

部屋付きのメイドのデザインが出来たらまず見せてみろ。」



「はい。」



「それとは別に、私の服も『アルト』に任せて良いでしょう?」

とイレイサが義父にねだる。

その後残る二人から、義父へ同じようにおねだりがあったのは言うまでもない。


「数日中に『部屋付きのメイド』を採寸に向かわせます。」

結局そう約束させられた。



(偶然とは言え、採寸の研修を終えた二人がいて良かった。笑)


話を上手く逸らせた上、M'sの販路拡大もなんと成功した気がする。しかも敵対勢力緩和のおまけ付き。。。

今晩は凄い成果を上げられたな。


明確に敵対されるより、侮られたり、便利使いされた方が今は良い。。。







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