ゲット。。。
ドアをノックする音がする。
「『アルト様』、失礼致します。お邪魔してよろしいですか?」
「うむ。」
(初めて会う顔だな。)
「『ベルル』が粗相をしたと、この者に聞きまして。。」
「先ず用件を言う前に名前を名乗るのが筋と思うが。人の部屋を訪れるのに、ここでは挨拶もしないのか?」
「失礼致しました。当家で女中頭を承っている『ネリサ』と申します。今後とも宜しくお願いします。」
「当家に正式に入ることになった『アルト』だ。宜しく頼む。」
(『メイ』が呼んだのか。仲間思いだが、
この場合。。。はっきり言って
『余計なお世話』だ。)
「で?何用だ?」
「このもの『メイ』と申しますが、曰く『ベルル』が粗相して、『アルト様』のお怒りを買い、縄で縛られ折檻を受けていると。。。」
「『ベルル』お前今折檻を受けていたのか?」
「いえ?」
と『ベルル』が答える。
「そんなことない、きっと脅かされて。。。私、『アルト様』に命じられて『ベルル』を縄で縛り。。。」
『メイ』があたふたと説明を試みる。
「で、どこか縛られているのか?」
「いえ。。。」
「縛られたなら跡ぐらい出来ているであろう?見せてみなさい。」
跡ももちろんあるはずない。
(治したもんな。)
「そんな。。。」
『メイ』は泣きそうな顔になった。
「誠に失礼しました。。。」
状況を読んだのか『ネリサ』が真っ青な顔になった。
「縄、縄がある。そうよ縄があります。。。」
『メイ』が呟く。
「縄?ああ、これ?『ネリサ』と言ったな。ちょっとそこに座って」
手首から肩口までロープを当てた後、印をつけ切り落とす。
同じように、バスト、ウエスト、ヒップと印を付け切り落としていく。
「なるほど、計測にロープを使われていたのですね。」
「実は最近服飾のデザインに凝っていて。。。
趣味が高じて『メイ子爵』と言われる貴族とともに服飾ブランドを立ち上げたくらいです。
そう言えばそこのメイドの名前も『メイ』といったな。」
「『メイ子爵』?
もしかして、王家主宰のパーティーで独特のファッションで注目を集めたあの『メイ子爵』のことですか?
今日も奥様方が話題にされていました。。。
社交界で今一番人気となっているブランドだと。。。」
「噂になっているかどうか分からないが。。。『メイ』と言う名前の子爵が複数いないとするなら、それだな。」
「そのブランドを立ち上げたうちの一人が『アルト様』だなんて。。。」
「『ムラーノ』にも立ち上げ時色々活躍してもらった。」
「まあ、『ムラーノ』もですか?羨ましい。。。」
(彼女はどうやらファッション好きらしいな。)
「メイド達の服装が私の趣味と合わないので、せめて部屋付きのメイド達ぐらい新しいメイド服を作って着せようと思っていた。そのモデルを『ベルル』に頼んだのです。」
「『アルト様』自らの手により、服を。。。
そうでしたか。。。」
「巻き尺がなかったので、ロープで代用した為、誤解をよんでしまったようですね。
騒がせた詫びと言ってはなんだが『ネリサ』さんにも服を一着プレゼントしますよ。」
「まあ、本当ですか。ありがとうございます。そして重ね重ね、大変失礼致しました。
『メイ』あなたも謝りなさい。仮にも主筋に当たる方を疑ったのです。それ相応の覚悟をしてもらいます。」
「首ですか?私、お金がいるんです。。。」
涙をポロポロこぼして泣く。
「まあ、『ネリサ』、誤解を呼んだ私にも非がある。まして結果はどうあれ、同僚を助ける為に動いたらしいし。その結果なのだから今回は不問に付したいと思う。」
「でも、『アルト様』。。。」
「『不問に付す』と言ったが?」
「はい。ただ不愉快でしょうからアルト様の部屋付けから外させます。」
俺はにっこり笑って言った。
「失敗をした者には、それ以上の仕事で返してもらうのが私の主義。なので代えずとも結構です。」
「なんとお心の広い。。。『メイ』、『アルト様』に感謝するのですよ。。。」
「ただ、一つだけ。私も年頃ゆえ、火急な件以外『前振り』なしに来られるのは好みません。父上以外の者については。。。」
(もし、俺が『こと』をしている最中だったらどうするんだよ。。。まだ、多分しないけど。。。)
「はい。徹底させておきます。」
(よし、味方一人ゲット。)