違う。。
「お話し中すみませんが、ご所望のクッキーが焼き上がりました。」
そう言って別のメイドが入ってきた。
「君も僕付きのメイドさん?」
「はい、『ベルル』と申します。よろしくお願いします。」
髪が真っ青で横にいる『メイ』と並ぶと映える。目鼻立ちもしっかりしている。
(染めている訳じゃあないよな。)
「『ベルル』もそこに座って。」
「はい、ただ執務時間なので。。。」
悩んだ顔をする。
「ここに来たばかりで、色々聞きたい事がある。長くは取らせないから、話を聞かせて貰えませんか?『クッキー』もあるし。」
「『クッキー』を頂けるんですか?」
『メイ』の耳がびくびく動く。
(しっぽがあったらさかんに振りそうだ。笑
っていうかあるのか?もしかして?)
『ベルル』も『クッキー』に未練があるのか悩んでいるようにみえる。
「ご主人が言っているんだよ?ご主人の言う事って『絶対』って言われなかった?」
『メイ』がフォローを入れる。
「『アルト』様がお望みなら。。。決してクッキーに負けた訳では。。。」
なんかぶつぶつ言っている。。。
二人を座らし、クッキーを取り分ける。
「『アルト』様、そんな少なくて良いんですか?」
『メイ』が殊勝な事を言ってきたが『耳』は正直だ。
「ならっ」
そう言って少し自分のところに戻す素振りをしたら
耳がぺたんと垂れた。笑
(分かり易いなあ)
「まあ、あまりお腹も減ってないし」
耳が『ヒョイ』っと立ち上がり、びくびくしている。
(おもしろっ)
さて、
「頂きます」
手を合わせて食べる事にする。
「その手を合わせることに何か意味があるんですか?」
と『ベルル』が聞いてきた。
「昔の風習で、『育った命を頂くことに感謝』、『作ってくれた人に感謝』しているんだ。」
「『デラ』が聞いたらきっと喜びます。」
「『デラ』?」
「当家の菓子職人ですよ。お子さま達のお菓子は全て彼女が作ってます。我々しもじもが食べる機会はあまりありませんが。。」
と『ベルル』が残念そうに言った。
二人とも美味しそうに食べている。
俺も一枚食べてみたが、バターの風味に塩味がさりげなく加えられ上品な味がする。ん?
「さっきの味とは違うが?」
『メイ』がぶっと吹き出した。