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神殿

朝食を終え、義理父と別れた後、さっそく『能力の鑑定』に向かうこととした。


鑑定を終えた後に渡される『神紙』は魔法学園のテストを受ける際、提出する必要があるらしい。

(ステータスならいつでも分かるのになあ。まあ、紙が必要なら仕方ないか。

そういや、鑑定ってどこで受けりゃ良いんだろうか?)


「どこで鑑定は受けられるんだ?」

ニクスを呼び場所を聞く。



「『ココハアッテネイ』神殿です。」



(はあ?なんだそのネーミングは。。。

聞き間違えたか?)



「『ここはあってねい』神殿と聞こえたのだが?」



「名前になにか不審な点でも?名前などどうでも良いのではないでしょうか?『アルト様』」


(まあ、そうだが。。。ふざけた名前だ。)



「たしかに『鑑定できる』か『できない』か。必要なのはあくまでそれだけだ。

わかった。。。

ではそこに行ってくる。馬車を用意してくれ。」



ニクスが何か言いたそうにこちらを見ている。。。

(ふう。)


「『ニクス』馬車を『用意しろ』」


「おおせのままに。」

仰々しく頭を下げ、馬車を用意させる為に下がっていった。



『ニクス』が用意した馬車に乗り込み、1時間ほど揺れるとその神殿が見えてきた。


白色の大理石の大柱に支えられた荘厳な神殿である。高さは30mほどか。大柱は正面に10本横に5本見える。柱の上に大きな一枚の岩の板が乗せられており、何かの装飾が施されている。

(いったことはないが『ギリシャの神殿』っぽいな。地震でもあったら上に載った一枚岩がずり落ちて来そうだ。)


馭者へ近場で待つよう指示をした後、神殿内に続く階段を上がっていった。


階段を登りきると大広間と言うべき空間が目の前に広がった。

部屋の中には香呂があちこちに設置されており黙々と紫の煙りを上げている。


目を凝らすと、大きな女性の石像が部屋の中央にあるのがわかった。片手に天秤を持ち、小脇に本を抱えている。


(この石像どこかで見たような気がするな?)


思い出そうとしていると、不意に右手を引かれた。どうやら右隅にあるドアの方へ連れていきたいようだ。。


(案内の者か?それなら声がけぐらいしてもよかろうに。

迷子にでも間違えられたか?)


危険はなさそうなので取り敢えずついて行く事にしてた。


入った小部屋には下へと続く階段があった。俺の手を引いてきた女性は俺の前を歩く。

まるで俺がついてくるのがわかっているかのように振り向きもしない。


(思惑(おもわく)に乗るのもしゃくだな。)


思いきって、ダッシュで引き朝食を終え、義理父と別れた後、さっそく『能力の鑑定』に向かうこととした。


鑑定を終えた後に渡される『神紙』は魔法学園のテストを受ける際、提出する必要があるらしい。

(ステータスならいつでも分かるのになあ。まあ、紙が必要なら仕方ないか。

そういや、鑑定ってどこで受けりゃ良いんだろうか?)


「どこで鑑定は受けられるんだ?」

ニクスを呼び場所を聞く。



「『ココハアッテネイ』神殿です。」



(はあ?なんだそのネーミングは。。。

聞き間違えたか?)



「『ここはあってねい』神殿と聞こえたのだが?」



「名前になにか不審な点でも?名前などどうでも良いのではないでしょうか?『アルト様』」


(まあ、そうだが。。。ふざけた名前だ。)



「たしかに『鑑定できる』か『できない』か。必要なのはあくまでそれだけだ。

わかった。。。

ではそこに行ってくる。馬車を用意してくれ。」



ニクスが何か言いたそうにこちらを見ている。。。

(ふう。)


「『ニクス』馬車を『用意しろ』」


「おおせのままに。」

仰々しく頭を下げ、馬車を用意させる為に下がっていった。



『ニクス』が用意した馬車に乗り込み、1時間ほど揺れるとその神殿が見えてきた。


白色の大理石の大柱に支えられた荘厳な神殿である。高さは30mほどか。大柱は正面に10本横に5本見える。柱の上に大きな一枚の岩の板が乗せられており、何かの装飾が施されている。

(いったことはないが『ギリシャの神殿』っぽいな。地震でもあったら上に載った一枚岩がずり落ちて来そうだ。)


馭者へ近場で待つよう指示をした後、神殿内に続く階段を上がっていった。


階段を登りきると大広間と言うべき空間が目の前に広がった。

部屋の中には香呂があちこちに設置されており黙々と紫の煙りを上げている。


目を凝らすと、大きな女性の石像が部屋の中央にあるのがわかった。片手に天秤を持ち、小脇に本を抱えている。


(この石像どこかで見たような気がするな?)


思い出そうとしていると、不意に右手を引かれた。どうやら右隅にあるドアの方へ連れていきたいようだ。。


(案内の者か?それなら声がけぐらいしてもよかろうに。

迷子にでも間違えられたか?)


危険はなさそうなので取り敢えずついて行く事にしてた。



してみる。


しかし先の小部屋まで戻ったところで行き詰まってしまった。


小部屋の扉が施錠されていて開かない。。。


ガチャガチャドアを開けようとしていると後ろに人の気配がした。


やばい。。。


「迷子になって、知らないところに迷いこんだので、帰り道を探しているんです。ここ開けてくれませんか?てへっ」

なるべく11歳らしさを全面に出して言う。


振り向くと、先ほどの『女性?』ではなく

俺と年も変わらない『少女』がじっと俺を見つめていた。

編みこんだ髪の色が緑がかったシルバーなのが印象的だ。

(着ている衣装のせいで大人びて見えたのか。。。)



「。。。。」



「。。。。。」



「来ないの?」



(何かムチャ恥ずかしい。。。)



「ゴメン。いきます。。。」


それだけ聞くと少女はスタスタ地下へと続く階段に向かった。


彼女について5分ほど歩くと先ほどより若干広い部屋に着いた。

(神殿の下にこのような部屋があるんだ。うすぼんやりとした明るさに慣れると中央に椅子があるのが分かる。)

そこに少女はどさりと座った。


驚く事に少女が腰掛けたとたん辺りの雰囲気が変わった。

何かが降りてきたような気がする。。。


「まったくもって、手間をかけさせるもんだ。転生を繰り返すと『魂』だけじゃなく『頭』も劣化するのかね。」



(あっあっあっあ~~~)

この口調は。。。



すべて繋がった。。。



俺にステータスウインドウなる『鑑定』能力をくれ、

『アテナはここ』なる前世の神話からくる名前の神殿に導き、

俺の素性を知っている存在。。。


「そう。やっとわかったか。あんたの首の上に載っているのはどうやら飾りじゃなかったようだね。」

どや顔が浮かぶ。



「。。。。。」




『図書館の司書?』


ずこっ。何かが前方で盛大にこけた。


(やった。)


「相変わらずだね。『アルト』」



「お久しぶりです。『オウル』様」



「ああ、久しぶりだ『アルト』。変わらず回り道をしているな。」



「ええ、変わらず迷ってばかりです。」



「そして変わらず『馬鹿』だ。」



「『馬鹿』です。」



「素直に『自分が足りてない』と分かっている『馬鹿』と、『開き直り』の『馬鹿』は違う。お前はどっちかな?」



「どっちもですかね?。」



「やれやれ。『愚か』にはならないことを祈っているよ。」


お互いハハハと笑った。



「しかし久しぶりに会ったとたんの一言が『図書館の司書』とは、、、恐れいった。

まあ、本質は外していないがね。」



(本質が変わらない?『図書館の司書』って確か本の内容にそって分類し、目録を作り保管する役の人だったけ。そうか。。。)



「あなたは、物事の『本質』を見る『神』でもあるのですね。」



「ほう。まあ『鑑定』を行う神殿で仮にも祭られているからな。それぐらいなら簡単に分かって貰わないと困るが。」

楽しそうに笑う。



「で?、他にもあるのだろう?『でもある。』と言ったからには。」



「頂いたギフトとフクロウに見られるシンボルから『鳥類や空を飛ぶもの』を守護するものという面を持っているのも分かります。」



「それだけかい?」



(あとのヒントは『アテナ』と像が持っていた『本と天秤』これだな。

『アテナ』は知恵、戦略の女神だからそのままの意味で良いとして『本と天秤』は何を表していたっけ?

本は知識で間違いない。


天秤は?


正義?公正さ?


ギリシャ神話で正義の神は確か

アテナでなかったはず。


しかもそのモチーフは『剣と天秤』だったような?


ここでは『本と天秤』だった。。。)



アルカイックが起動し目の前に情報が流れる。

【「剣と天秤」:「剣なき秤は『無力』、秤なき剣は『暴力』」に過ぎず、法は正義と力があってはじめて回ることを象徴したもの。】


(まあ、この世界は元の世界と似て非なる世界だから違った解釈も有りうるか。『正義』と捕らえると違うから「公正」だろうか。)


これまでの情報を整理する。

オウルは

『本質を見極め、空を統べ、知恵と知識それに戦略を人に与え、それらの力を公正に扱う神』ってこと????


実はむちゃくちゃ凄い『神』だったとか。。。




「ほう、じゃあ我の真名は?」




俺は自信をもって答えた。



「真名は。。。『ここ』です。」

身を乗り出された。



「『ここ?』」



「はい。『ここ』です。」



「。。。。。一応理由は聞いておく。」



(あちゃー。。。違ったらしい。

自信を持って言った分、恥ずかしい)



「ここはあってねい」



「ここはアテネ」



「ココ=アテネ」



「で、『ここ』。。。」


自分で言っていて恥ずかしくなってきた。

(ベタ過ぎやろ。)


「もう良い。」

生暖かい目で見られた上、手を振られた。


「私の真名は『ココ・マルチェモータ・サンカアリントス・モールエネシウス・ネーベサミカタリカ・モンネサンダルモンタ・バビデウス・アッテネイシウス』だ。古代王国語で定めている。」


(当たる訳ないーだろ。。。

でも、『ココ』だけは何故かあってるんだ。。。

長さといいまるでバンコク(タイ)の正式名みたいだな。)



「意味は『偉大で至高な大空を統べる始元の母にして、その知を我らに与えし慈愛溢れる光の道標(みちしるべ)、その公正かつ全てを見通す目により我らを導き見守りたもう者』だ。我にぴったりの名前だろう。」


(わぁしかもここで『将軍様』の文言が入ったら、まんま北○○かも。。。痛い。。)

可哀想な娘を見る目で見ていたら、突如グーで殴られた。


「な・・ぜ・・・?」

吹っ飛んでいる中に『アウル』の声が響く。



「400年ぶりに何故かムカついた。天罰だ。。。。」




天罰って痛い。。。




「『真名』を教えてくれたのには何か理由があるのですか?前に会った時には『まだ早い』と言われたよーな気がするんですが。」



「自力でお前が『次の段階』にきたからさ。」



「『次の段階』?」



「最近、おまえは魔法を世界に『登録』したろう?」



「はい。」



「お前はそれにより、次のステージに立つ『資格』を得たのさ。


世界に魔法を『登録』するにはその属性について詳しく知らねばならない。


いわゆる『本質』を知り、その属性の精霊に必要な対価を支払うことが必要だ。


この真理にたどり着くことそれが。。。」



「それがあなたの『真名』を知る為に必要であったと。」



「そうだ。だが、それだけでは無い。

先の『スタンピード』でのお前の活躍も勿論加味した上での事だよ。


多少『場当たり的』ではあったものの『戦略』らしきものを立て、『知恵』と『知識』を使い、味方の損失を最小限に抑えた功績は『英雄的』ですらあったからね。」


(認められるって、嬉しいもんだな。)

思わず笑みがこぼれる。





「ところで。。。



『音の本質』とは何だと思うかね?」



しばし考え答えた。

「『振動』です。」



頷きとともに笑顔を返される。



「でも、これは前世知識から推察したもので、自力で見つけたものじゃあ。。。」



「与えられた『天啓=アルカイックレコード』や『ギフト』もまた本人のものだ。

そして、それを活用し、この世界にない『新たな魔法を産みだす』為に『本質』を見極めたのはお前の功績だよ。」


「その魔法の『本質』を見極め、『精霊』へ『MP』を捧げれば『オリジナル魔法』を作れるのですね。」



「ただ、その為にはどんな形であれ『精霊』との『契約』が必要だ。」



「『どんな形であれ?』」



「お前のように『神』より定められた『契約』もあれば『(いにしえ)の血の盟約』など特定の一族に『精霊』を縛りつける『契約』もある。」


(『音の聖霊』との契約は、『古の盟約』とは関係なかったのか。


俺固有の『契約』。。。 か。


先祖が『音の聖霊』と『古の盟約』 を交わした結果、俺に聖霊が顕現したと母も、叔父も勘違いしている気がするな。)



「他にはどんな『契約』が?」



「『神』と同じように『精霊』も気まぐれだからね。『気に入った相手』なら気ままに『契約』してくれることもあるんじゃないか?」



「ところで『複数の精霊』と『契約』が可能と聞いたのですが、私にも?」



「勿論可能だね。だが何故『複数の精霊』との契約に何か拘りがあるのかい?」



「『古の盟約』に基づくなら私にも『炎の精霊』との契約が顕現するのではないかと思って。」



「『イフリート』との『契約』の事を言っているのかね?」



「はい。父と盟約を結んでいたと聞いたので。」



『ハハハ』


「あれとお前の一族との『盟約』は既に『解放』されている。


何故そうなったのかを知りたければ、そうだね。お前の母を探し、聞くといい。」



「母はどこに?」




「それは、、、自分で探すことだ。

お前の運命はお前自身で開かないと。。。



まあ、とは言え、お前と私の関係だ。

一つだけアドバイスするとしよう。」


「『古の契約』には色んな問題がある。本来『自由な存在』である『精霊』を『血の盟約』によってむりやり縛りつけている訳だからね。まあ、一部の精霊は『戦場』を求め、敢えてその機会を提供してくれる者についていくといった例外もあるが。


仮にだ、仮に目の前に自由を求める強大な力を持つ『精霊』がいて、お前が『盟約』からそれを解放する力を持っていたとする。

その時、お前ならどうする?

今から良く考えておくと良いさ。」



「その時は解放した方が良いのか?」



「どちらでも。ただ言えるのは

『大事なことは例えどんな結果になるにせよ、自分で選らばなければ後で後悔する』ってことだけだ。良く知恵を巡らせ考えるんだよ。」


「他に質問は?」



「気になっていたことがあと二つあります。」



「なんだい?」



「『精霊』と『聖霊』に違いはあるんでしょうか?皆が言っている『精霊』と私が加護を得た『聖霊』ですが、呼び方は同じものの何か違う気がします。」


「ああ、そのことかね。


『聖霊』は原初の存在で、『精霊』はそこから別れた個体を指す。『聖霊』は『精霊』達の父であり、母といったところかね。


『聖霊』の一部に人間が『名前』を与え『擬人化』したのが『精霊』と言えるんだ。」


「なるほど。『音の聖霊』って普通の『精霊』より凄い存在なんですね。」


「そうだ。この世界では我ら(神)に次ぐ存在と言える。詳しくは直接彼女と話してみると良い。」



「ここで話せるのですか?(というか聖霊って彼女なんだ。。。)」



「我が神域に呼べと言うのかい?」

じっと俺の顔を見た。



(。。。代償が大きそうだ。)



「いえ、自分で探します。」



「私はともかく、他の神と話す時は気をつけるんだよ。

神にしろ、精霊にしろ、何かを成す為には代償が必要となる。

その覚悟がないのに『お願い』なぞした者の末路は悲劇しかないね。」



「ありがとうございます。ではヒントだけでもくれませんか?」



「ヒントか。。。まあ、良いだろう。」



「『カルミニック』だ。」



続く言葉を待ったが、それ以上喋る気はないようだ。



「分かりました。『カルミニック』ですね。」



「質問は終わりかい?」



「あと一つ。頂いた『ギフト』の使い方を教えてください。『ステータスウインドウ』が自分のステータスを見る能力と言うのはなんとなく分かります。ただ、『空を統べるもの』は何なのか漠然としていて。。。」



「お前、大きな考え違いをしているね。

ギフト(才能)は確かに授けた。ここまでが私の仕事さ。後はそれを生かすも殺すもお前次第だ。


『ギフト』と言うものは自分でその『意味』を探し、使い方を考え、そして伸ばすもんだよ。」



「ヒントだけでもくれませんか?」



「。。。。しかたない。

『ステータスウインドウ』はそれだけのものじゃないとだけ言っておこう。


そして、『空を統べるもの』については、もう少し自分で考えることだ。少なくともギフト名は分かっているのだから。


人に意見を聞く場合、『自分の推察』をまず言うのが礼儀さ。

その後ヒントを聞くならまだしも、

はじめから『漠然として分からない』から『ヒント』を寄越せっていうのはおかしいんじゃないか?

それじゃあ、考えることを放棄しているのと同じだ。」



「『空を統べる』って言うことは、『鳥』と何か関係がありますか?」



「。。。。。」



(何も言う気は無いみたあいだな。)



「もう少し考えてみます。」



「そうすると良い。」



「さて、そろそろ本題と行こうか。さっさと契約を行うよ。」




(ん?契約???)


気がつくと、糊代(ヨリシロ)となっている少女は立ち上がり、いつの間にか右手に木の枝を持っていた。


「仮契約を解除し、本契約をこれより執り行う。」



「『ブラック・オウル』」


「はい。」

右手を木の枝で軽く叩かれる。



「汝はその全霊を持ち我との契約を望むか?」



(この場合『はい』以外の選択肢はなさそうだな。)


「はい。」

木の枝は頭に置かれた。


「この者『ブラック・オウル』を我『ココ・マルチェモータ・サンカアリントス・モールエネシウス・ネーベサミカタリカ・モンネサンダルモンタ・バビデウス・アッテネイシウス』はこの者を守護する。」


光が頭に流れ込み、チリチリ頭の中を焼いていく。実際にかかったのは数十秒だったろうか。しかし俺には長き時間が経ったように感じられた。


その痛みもふいに消え、視界が戻ってくる。

肉が焼ける臭いがし、右手がヒリヒリ痛む。

気付くと右手に、フクロウの刻印がなされていた。。


「これで終いさ。気を付けて帰ると良い。また時が満ちたら会おう。」


そう言った後、少女は椅子に倒れ込み動かなくなった。


(もしかして。。。心肺停止??人を呼ばねば。。。)


ドアに向かい歩こうとしたとたん、俺も意識が飛んでいった。。。


目覚めた時、

俺は手足を縛られ、猿轡(さるぐつわ)をかまされた上、床に転がされていた。

怖い顔で睨むモンク(僧兵)らしき者が数名こちらを睨んでいる。


(あの娘は助かったんだろうか?)


目覚めた事を知らせるべく、(うめ)

「ううう」


「どうやら目覚めたらしい。『ザリガ』殿をお呼びしろ。」

そう隊長らしき者が指示すらと、一人のモンクが部屋から出ていった。


暫くして、明らかに高位と分かる神官が入ってきた。


モンクの隊長が大慌てで迎える。



「何が起こった?」



「『ミバルト』様のお手を煩わすほどのことではありません。

ご覧の通りまだ年端のいかぬ子供が、秘殿に迷い込んだまでのこと。たまたま秘殿に入っていた巫女殿が気を失われていたので、念のため拘束はしましたが、関係は薄いと思われます。」

と説明している。


何故猿轡(さるぐつわ)など?」


「子供とは言え『魔法』を使えないとの確証は無いので一応猿轡(さるぐつわ)をかませました。巫女様の気絶と関係がないと分かるまでの念のための処置です。」


(かなり低姿勢だな。彼は何者なんだ?)


ふとオウルの言葉を思いだす。

(『ステータスウインドウは自分のステータスだけをみるものじゃない』って言っていたな。)


(なら?)


神官を見つめ、『ステータスオープン』と頭の中で唱える。


半ば予想通り?に神官のステータスが展開される。


一瞬驚きの表情が『ミルバト』と言う者に浮かぶ。


ステータス欄を見るとこの神官のJOBは『ビショップ』?と出ていた。

続けて『アルカイック』で『ビショップ』を検索すると『司教』と出る。


(かなりの大物だ。

さて、どう釈明するか。。。

状況証拠だと、完全に『ギルティ』だよな。)

そう考えたと同時に事態は動く。


ミルバト司教が真っ青な顔をしてモンクへ指示をする。


「いかん、彼をすぐ解放しなさい。そして、応接室へお迎えするんだ。。。」


何故と言う顔がモンク隊長に浮かぶ。

多少の躊躇が見られるが、拘束を解きに近づいてきた。



「大変だ~」



緊急事態でも起こったのか

また新たな神官が飛び込んできた。



全く騒がしい神殿だな。。


「どうしました?『ザリガ』」

『ミバルト』司教が入ってきた男を問いただす。


「先ほど『オーガニクス家』の者が訪ねてまいりまして

『当家のご子息が判別の儀に当神殿を訪れてから、一向に出て来られないが何かあったのか?』

と問い合わせをして来ております。

『オーガニクス伯爵家』と言えばこの国の重鎮。何か起きれば大変なことに。。。」


「ここには沢山の参拝客が毎日ある。どんな特徴があるか聞かれましたか?」


「はい。まず、お年は11歳。背丈は150cm、ブロンドの髪、目の虹彩が赤、最近流行りのM's商会ブランドの服を着ているとか。」


(あちゃー。身元バレまくりだ。さて、どうこの場を収めるかだ。。。しかし、馭者も良く俺の事を観察しているなあ。)


案の定、皆の視線が俺を向く。


「まさか。。。」


猿轡が解かれ手足も自由になった。



「あの、お名前は?。。。」



『アルト オーガニクス ラファス Jrだ。』



皆真っ青になる。



「ただ、この者は我らの許可なく、秘殿に立ち入ったも事実。巫女の気絶との関連は置いておいても、伯爵家の者とは言え抗議すべきだ」

と『ザリガ』と呼ばれた者が声高に騒ぐ。


(穏便に済ませようと思っていたのに。バカなやつだ。)


「まず、貴方の許可なく秘殿に立ち入った件についてはお詫びします。」


『ザリガ』がここぞとばかり頷く。


「ただ、この神殿の持ち主である主神に招かれ、貴方の言う『巫女様』に引かれ立ち入っただけのこと。糾弾される言われはないと思う。」


「言うに事欠いて、我らが神を冒涜するのか」

怒って『ザリガ』が詰め寄る。


「伯爵家の名前に誓い嘘ではない。お前は万が一本当であった場合何に誓う?」


「か、神の名。。。」



「『ザリガ』止めなさい。おそらくこの方の言うことは真実です。」

『ミバルト』司教が止めた。



「この者は神を冒涜したのですよ?子供とは言え。。。」



「お黙りなさい。この私が話しているのですよ?この方は私のステータスを読み解いたのです。それ以上何か必要ですか?」


皆一斉に黙った。


「司教様よりINTが上ですと?しかも当神殿の秘技『鑑定』をマスターされていると?」



「INTが上かどうか分からないですが、『鑑定』のギフトはこちらの神より昔頂きました。」



「おおおっ」



「まだ証拠が足りないのなら、神様に頂いた真名を言いますか?」



「真名を、『真名』を頂けたのですか?」

ものすごい顔をして『ミバルト』司祭が詰め寄る。


「その上で庇護すると言われました。」


「『真名』なぞ恐れ多い。。。口に出されないでください。」


(そんな凄いことか。何か他に。。

手がヒリヒリして、集中できん。)


「嘘だ、嘘だ。この者はペテンに我々をかけようとしている」

懲りずに『ザリガ』がわめいている。


手を良く見ると、変な刻印がされていた。


「あっ、その際に」

と言って手の甲を見せた。


右手の甲をかざすと、ミバルト司祭がヨロヨロと前に進み出てきた。


「『庇護者』と書かれた聖語とフクロウを型どった聖痕、間違いありません。」手をマジマジと見つめ宣言する。


『ザリガ』とモンク隊長の二人は真っ青な顔をし、今にも倒れそうだ。


(頭が痛い。。。)


「お許しください。」

そう言って二人は地面に伏せた。



「。。。。」


(ん~。自業自得の面があるにせよ、困った。正直、俺自身はそんな大層なもんじゃないしな。なんとか『なかったこと』に出来ないかな。。。)



「お顔を上げてください。


ザリガさんも、モンク隊長も不審者が秘殿に侵入したと思って私を捕縛したのですよね?」



「はい。。。」



「お役目ご苦労様でした。神のおわす場所に不審者が入ることはあってはならないことですから。。。ね。


ただ、今回のことは相互に誤解があったにせよ色々お粗末だったと思います。それを踏まえて、例えば秘殿に通じる小部屋に監視員を在中させたりしたらどうでしょうか?


その役目の方がもしいれば私が巫女に連れられて秘殿へ行ったことも分かったはずですし。」



「すぐ改めさせます。。。」



「さて、私の容疑は無事晴れたで良いですよね?」



「はい。」



「なら、馬車を待たせておりますし、私は帰ります。」

みなポカンとした顔をしている。

(なんとか、ウヤムヤにできたかな。)


「『神子様』、このような沙汰で本当に良いのですか?」

『ミバルト司祭』が慌て問いかけてきた。


(へっ?神子?なんだそれ?面倒くさい。。

ウヤムヤにしたいんだって分からないかな。

家とか絡むと面倒なことになるし。)



「『参拝者』が誤って秘殿に迷い込んで、保護をされた。そしてその者の素性が分かったので解放された。ただ、それだけですよね。」



「でも。。。」



「ただ、それだけですよね。」

(穏便に済ませようとしているのに、空気読んでくれ。)



「。。。。分かりました。『神子』がそれで良いのならば。」

(なんとか通じた。)



「『神子』と呼ぶのも止めて下さい。『ただの参拝客』なのですから。」



「はい。。。」



「では。失礼して帰ります。あっ、そうだ、

その前に私の『鑑定』どなたかお願いできませんか?」


出来るわきゃねー だろって顔が並んだ。


『なんで?。。。。』



その後の説明により、

『鑑定』を行うには鑑定する者のINT値がされる側のINT値より高くないと出来ないらしいと分かった。


(補正があるにせよ、俺の値ってそこまで高かったっけ?)


『ステータスウインドウ』で開いてみると

INT,WISとも999となっていた。

(残念あと1で両方とも1000の大台だったのに。。。かなり伸びたな。)


タイミング良く司教から質問を受ける。

「ご自身で見て、INTですがいかほどの値となっていますか?」



「INT,WISとも面白いことに同じ数字で並んでます。」



「どんな数字ですか?」



「999です。あと1あれば1000だったのに残念です。」

正直に答えた。



「もしかして1000を目指されているとか?」



「。。。。。。」

奇妙な生き物を見るような目で見られる。

(なんかやっちまった?)



「太古より人類の到達できる最高点は999とされております。それより高みを目指されるとは、流石『神子』様であらされます。」

妙なところで感心されてしまった。単に切りが良い数字だったから適当に1000と言っただけなのに。。。しまった感、半端ない。。



「今回この神殿に来た目的が『神紙』を貰うことだったんですが、困りました。」



「『神紙』などなくともご自身で

お分かりになるのではないですか?

何故また?」



「『提出』する必要があるので。」



「どこにですか?」



「『魔法学園』へ」



「何故また?」



「『入園の試験』を受ける為です。」



「。。。。。。」



えええっー

(俺何か変なこと言った?)




「だって俺、いや私は11歳なんですよ?」


俺が学園に提出する『神紙』の内容は下記とした。


※※※※※※※※※※

【ステータス】

種族 人間

名前 アルト オーガニクス ラファス Jr

年齢 11歳


JOB 白魔導師 LV16


経験値 2621522/5242880

HP 24/24

MP 250/250

STR(力) 43

CON(体格) 46

DEX(素早さ) 42

WIS(知力) 173

INT(知識) 228

LUK(運) 54


◼取得魔法

ヒール

スクロール

キュア

ポイゾナ

ストナ

ハイヒール

※※※※※※※※※※


『神紙』には、嘘は書けないらしいので、

『ステータスウインドウ』を唱える際、『ギフト』や『加護』、『天啓』などの『補正を一切行わなかった場合の数値』と念じ、出てきた値を書くことにした。


神官達は何か言いたそうだったが、知ったこっちゃない。


条件を加える事で、いくらでも数値は操作できるもんなんだな~


しかし、いつの間にLV16になったんだろう?


予定の『神紙』も手に入れたし。

さて、帰るかな。。


そう言えば。。?

この神殿って魔法を学ぶことはできないんだろうか?。ここで魔法を習得出来れば簡単だし、手間もかから無いんだがな~。


思案しているとミバルト司祭が話しかけてきた。

「何かお悩みでも?」



「魔法学園に入園するには、C1相当の魔法が出来ることが条件となっているそうなので、ここでそれを学ぶ事は可能かどうか聞こうと思っていました。」



「残念ながら当神殿で扱っている魔法は学園で求められているものとは違うものです。


神の導きを得て『根元たる叡知を極める』のが当神殿の目的であり、

『学園』いや、『国』が目指す方向『魔力を具現化し、国の為に役立てる事』を目的としているのとは違います。」



(良く分からないが、『神殿』では純粋的な学問を追い求め、『学園』では『実用性』を追い求めるってことかな?


まあ、ここでは習得できないことが分かっただけで良しとするか。)


礼を言い、神殿を出て帰宅する事にした。

神殿を出ると、どこで見ていたのかすっと馬車が寄せられてきた。


「『アルト様』ご無事で。。。あまりにもお戻りが遅いので、さしでがましいとは思いましたが、神殿に問い合わせさせて頂きました。」馭者が申し訳なさそうな感じでそのような事を言った。


「うむ。大丈夫だ。」

そう言って手を振り屋敷へと急がせた。


(手の甲を隠す為の手袋が欲しいな。。。)


屋敷に戻ると『父上』より、『晩餐』で他の家族を紹介するので夜7時に食堂へ顔を出すようにとの言伝てがあった。時計を見るとまだ5時だ。


(まだ幾分間はある。何をしようか。)

そう思っていたところ


「『アルト様』お部屋の支度が整ってます。

ご案内出来ますが如何なさいますか?」

『ニクス』がそう言ってきた。



「荷物は?」



「すでにお部屋へと持って行っております。」

(なら部屋で時間までのんびりするのも良いか。

そういや、『晩餐』って何着ていけば良いんだ?)


「今日の『晩餐』ですが、服装はフォーマル(格式ばって)な感じでいくのが良いのか、身内だけの集まりなのでラフな感じでいった方が良いのか、どちらが良いでしょう?」


「『アルト様』、貴族の方は従者にものを聞かれるなどされません。『アルト様』の思うところのまま、されれば良いかと。」

(答えになってないし。。。

聞き方の問題か。)


「私はこの家に来て日が浅い。

したがってこの家の仕来たりには(うと)い。他の家人はこの様な席に、どのような服を着ていくのか参考までに聞きたい。聞いた上で何を着るのかは自分で判断する。」


「そのような尋ね方で、よろしいかと存じます。ただ『聞きたい』じゃなく『言え』で充分かと。


『晩餐』ですが、お顔合わせの初日なのでどちらかと言えば、『フォーマル』が良ろしいのではないかと存じます。」


(『貴族』として下の者に(かろ)んじられない様に『振る舞い方』や『心得』を教えてくれようとしているのだろうが、正直鬱陶(うっとう)しい。。。なあ。)















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