早まったこと
それから俺は宿に戻る事にした。
(明日からの事、お母様と話さなければ)
宿に着くとすぐに、昼に訪れた部屋に向かう。
トントン
ノッカーを叩く
トントン
トントン
部屋を間違えたか?
外出?まだ就寝には早いはず。
ドア前で思案していると、支配人が近づいて来た。
「『アルト様』ですね。」
頷く
「母上様より、こちらを預かっております。」
そう言って渡されたのは一通の手紙だった。
「母上は?」
「何でも急遽お国に戻るとおっしゃってましたが?お聞きではないので?」
「いつ頃馬車は出立した?」
「今より4時間ほど前です。」
(4時間、追うのは難しい。。。か。
でも、何故急に?
少なくとも、俺に会えた事は喜んでいた。
とすると俺が話した内容が原因か。。。
話したのは。。。『俺に精霊が顕現したこと』だけだな。
我が子に顕現したとなれば普通は喜ぶと思うのだが。。。
『炎の精霊』で無かった事に失望した?
失望したにせよ、授爵は出来るのは確実となったのだから俺を置いて消えるようなものではありまい。。。
一つ考えられるのは、精霊が顕現した事により、公爵に正式な養子として迎えられる事を予期していたとか。
その上で敢えて身を引かれた?
早まったことを。。。)