あきらめ
「『アルト』お前の「オリジナル魔法」とやらを見せてみろ。『音楽の精霊』による加護と『ディール伯』より聞いておるぞ。」
(やはりネタ元はディール伯か。)
そこで俺はベートーベンの『運命』を
奏でた。
『ジャジャジャーン ジャジャジーン』
有名なフレーズが響き渡る。
「おうおうおう。流石兄上の息子じゃ。
この音楽の『独創性』『身体に響わたる音』真もって素晴らしい。『ゼノ男爵』をある意味越えておるわ。」
(著作権は前世の音楽家にあるけどね。)
「早速もって陛下に報告せねば。『ディール公』から聞いた時はよもやと思っていたが、これぞ、精霊の『オリジナル魔法』に間違いあるまい。素晴らしい。
兄上の『イフリート』が『アルト』に顕現しなかったのは痛いが、我が一族で二つの精霊を占めると分かった事は良報じゃ。」
「そうそう、公と言えば、『アルト』、『ディール公』から儂宛にお礼の品が届けられてきたぞ。」
「『ディール公』からですか?」
「『ミスリル鋼』が何と2tも届けられてきた。我が軍がこれでどれだけ軍備を増強できるか分かるか?凄いことだぞ。
なんでも、公の『スタンビート大討伐』で、負傷者の救護で活躍したばかりか、公自らの命まで救ったそうではないか。誇るべき手柄と言えるぞ。余は鼻が高い。」
(よっしゃ~。)
内心ガッツポーズをした俺だった。
「今日よりお前を我が養子とする。兄上も喜ぶだろう。複数の爵位を陛下より我が一族は賜っている。それのうちどれかを何れ渡すことにしよう。一度宿に戻り荷物を持ってくると良い。この屋敷のどれかに部屋を用意させよう。」
「母上は?母上はどうなるのでしょうか?」
「余の決定にあのものが異を唱えることなぞできる訳なかろう。生活に不自由しない程度の情けをかけよう。」
「一つだけお願いがございます。」
「なんだ?決定が不服か?」
多少不機嫌になった声が響く。
「あの女のことは『乳母だった』と思い締めろ。これは当主である余の決定だ。」
(暫く時間をおいた方が良さそうだな。)
一度ホテルに戻り、お母様と『ムラーノ』
に相談する事にした。