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えっえっえっ

「で、『アルト』様は何を私に、お聞きになられたいと?」


「内容はメイドから聞いてないのですか?」


「『メイド?』

。。。


ああっ!!、聞いてないのでお手数ですが再度お聞かせください。」


そこで再度、目的を話した上で、各地区の人口を聞くことにした。


「もちろん、細かい数字は要りません。100名位の単位で充分です。」


「分かりました。『ロダ』が1000名 『ベンソン』 が700名 『バルリー』が500名 『シノリル』が150名 『ビバル』が70名ですね。」


「トータル約2500名ですか。」


そう言ったとたん『カルチャ』がギョッとした顔を浮かべる。


「どうされましたか?」


「いや、あまりに『アルト様』の計算が早かったので。。。」



(採寸したのが656名。シノリルとビバルを除いた地区の総数が2200名。約1/3の寸法を抑えたってことか。

まてよ?働く成人が全体のうち7割なら1540名。だから。。。。4割も採寸したのか。よっしゃ~。)



「他に聞きたいことは有りませんか?」



「男女比は?」



「半分半分です。」



(まあ、聞きたいのは今はこの程度かな。)


「『カルチャさん』ありがとうございました。」




そのタイミングを見計らった様に、子爵が応接室に入ってきた。先ほどの執事とメイド、衛兵隊長の『ベヌート』を連れている。


「お待たせした。部下が不調法したと聞く。まず、それを詫びたい。」


率直に頭を下げられた。


「顔をお上げ下さい。ボタンの掛け違いだったと既に分かっていることなので。」



「水に流してくれるか。」



「問題は何もなかったので。」



「そうか。。。それとお呼び立てしたのに

遅れ申し訳なかった。


実は、『アルト様』がパートナーとされている『ミヤーノ』に対し『服飾ギルド』から正式な告発状が出ており、陳情を聞かざるえない状況になってな。」


(なるほど。俺は潰せないことは分かっているから、絡め手で『ミヤーノ』を狙ったか。)


「通常なら、私が出張る話では無いのだが、副領主である叔父上が出て来て対応に苦慮している。」


「で、告発状の内容は?」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


告発状


1.『不当な値段』で、服飾ギルドのお客を奪ったこと。これにより、服飾ギルドは金銭的な損害を被った。


2.それにともない、本来収める税収が減ったことは街にとって大きな損失となった。


3.『粗悪品』を売る事により、『服飾業界』全体のイメージを損ねたこと。


1.2については補填を求めることとし、

3については、即時営業を停止する様求めることとする。なお、3については複数名から

不良品を売り付けられたとの訴えが来ている事を付す。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

となっている。


「まず、子爵に伺いたいことがあります。」



「なにかな?」



「子爵様ご自身、この店の洋服(しょうひん)は『粗悪品』と考えられてますか?

もし、そうなら潔く罪を認めましょう。」



「。。。。。」



「そう思っていないから苦慮している。」



「『服飾ギルド』はこの街に必要ですか?」



「難しい事を聞くな。長年彼らは善き市民であり、納税もきちんと収めてきた。」


「もし、彼らが『策略』を用いて『新規参入者』の足を引っ張り、服飾業界の発展を阻害する『癌』となっていたら?

また、その行為によって本来増えるべき税収が入ってなかったとしたら?」


「約束しよう。そのようなことがもし明るみにでれば我が名において『断固』として処置する。」


(よし、言質は取った。)





※※※※※※

「子爵さま、それと『カルチャさん』。少しご同行願いませんか」


「勿論だとも。」


外出に当たって『衛兵のベヌート』と何故かあのメイドも同行する事になった。


(まあ、人数が多い方が良いか。)


閑静な『ビバル地区』を抜け、

『シノリル地区』に入る。目抜通りには『バーナード服飾店』も見える。


そして、『バルリー地区』を超え、

『ベンソン地区』、『ロダ地区』へと足を運ぶ。



「随分遠出をしたが?」



「子爵何か気付かれませんでしたか?」




メイドは何か言いたそうな表情に変わった。

ただ、言うのを控えている、そんな感じだ。



「そうか、『服』か。。。』

子爵も気付いたようだ。


「行き交う人のうち、かなりの人が『新しい服』を着ているな。表情も何だか明るい。


あれは、そうか。アルトの店の服なんだな。。。」



「そうです。」


そこで俺は話を続けた。

「実は今、『庶民向けの服』を1着28銅貨で販売しようとしています。」



「『カルチャさん』?」



「はい」

振られると思ってなかったのか声が少し裏返っている。


「先ほど説明して頂いた話では、今通って来た『バルリー』『ベンソン』『ロダ』に住んでいる人の合計は2200人ですよね。

働き手がその7割として、ざっと1540人で間違いないですか?」



「その通りす。」



「今までは、庶民が『服を買う』ということは無かったですよね?

生地屋で生地を購入し、自分で仕立てている方が殆どだった筈です。」

とメイドさんを見た。

(彼女の反応は何故か薄い。)


「もし、服の値段が手の届く物となり、

またデザインも『イカス』ものだったらどうでしょう?」



「買う人は増えるんじゃない?」

とメイドさんが言った。



「そうなると私は思っています。

仮に一人当たり1着ずつ年に新しく誂えるとして、1着あたり6銅貨の税収と見た場合、単純にかければ9240銅貨が見込めるかと。


複数の服を買うともっと多くの税収が見込めることになります。


今まで購入しなかった層が新たに購入する様になれば、税収が増えるのは当然ですよね。


それだけでなく、洋服店が生地屋から生地を買う量もまた増え、その購入からも税金は入ります。」


横で、『カルチャさん』が紙に数値を書き計算をした後、子爵に頷いている。


「そして、お金の事ばかりじゃなく、街の雰囲気もまた変わると思いませんか?

先ほど子爵は『道行く人の表情が明るい』と言ってくれてましたよね。


ぼろぼろの服を着た人が多い街と

さっぱりした服を来た人が行き交う街

どちらに人が集まると思いますか?」


「。。。。」



「じゃあ次は、新しくオープンした店にご招待します。『庶民向け』の店なので、子爵様がお気に召すかは、分かりませんが。」


『バルリー地区』にある『アウトレット』へ向かった。

まだ、来客した人はすべて帰っていないのかかなり混雑している。


「今日はプレオープンなので、事前に採寸協力をして頂いた方のみの入場となっております。客層を見て頂けますか?」


4人とも辺りを見回す。


「なるほど。。。な。」



「『ベラ』っ悪いが、台帳を持ってきてくれ。」

見かけた『ベラ』に手を振る。



「はい、すぐにお持ちしますだ。」



「こちらが、今日事前に案内を出した方のリストです。

『採寸と言う情報』の対価に無料もしくは、半額で1枚提供しております。」



「サイズ以外に、名前や住所などすべて書かれているな。」



「『住んでいる地区』をよく確認下さい。」



「? 」



「そうか。。。服飾店に服を注文するような者は。。。」



「リストのコピーをお預けするので、『服飾ギルドのリスト』を徴収し『本当に我々が彼らのお客を奪ったのか』

存分にご検分下さい。



それと、『不良品を売り付けられた』との申し立てがあったみたいですのて、その者に是非お詫びをしたいので『名前』と『住所』を是非聞いていただければ。。。」



「もう良い。。。 この店においてある服を見れば品質に不具合がないのは良く分かる。実際、私も着てみてその品質は分かっているしな。」




「それで、どうされます?」



「。。。すべて分かった上で、敢えて『アルト殿』に、今一度問おう。どうしたいのだ?」


しばし考えた末に口を開いた。


「『告発文』が(おおやけ)に出された時点で『何も無かったこと』には出来ません。


『何かやましい事があったのでは無いか』と邪推され『ミヤーノ』と店の評判が落ちますから。商売する上で、評判とは『財産』だと私は思っています。


本来なら、こんなふざけた『告発文』を出した『服飾ギルド』の取り潰しと、『告発文』をゴリ押ししてきた『副領主』への処分、受けた『精神的苦痛』に対する賠償を要求したいところですが。。。


告発自体『全ての服飾店』の総意では無いと思ってます。また、事実を知らずに『副領主』は踊らされた可能性もあるので。。。」

そこで一旦口をつぐむ。


「『服飾ギルド』より「ミヤーノ氏」への公式謝罪、そして主犯格への厳格なる処罰のみ私は要求します。」



「配慮痛みいる。」



(終わった~。)



「待って。」

とメイドさん。



「ん?」



「お父様にはきつくお灸を据えておくから」



『チュッ。』


ウインクして彼女は消えていった。



「えっえっえっえーーーー」




横では子爵が頭を抱えていた。










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