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まあ、そんなもん

※※※※※※

日が変わって翌朝。

「どなたか計算の得意な方おりませんか?」


こう話すと手を上げたのは『ミヤーノ』と『ムラーノ』だけだった。

ある意味予想通りか。


「では、お二人にはそれぞれのサイズの平均を計算願います。」


「平均?なんですか」

『ミヤーノ』から質問がでる。


(うわっ、そこからか。。。商売やっていてもこんなものなんだなあ)


「いくつか物があった場合の中間的な大きさを出す方法です。」

それから、二人にレクチャーをしたが

意外にも、最初に理解したのは横で聞いていた『ベラ』だった。


「要は全部の数を足して、その個数で割れば良いってことですね。」

(ま、そのくらいの感じで捉えてくれりゃいいか。)


「こんな沢山の数足した事なんて無いです」

と『ミヤーノ』が悲鳴を上げた。


「まあ、午前中までに仕上げてくれれば良いです。男と女別々にそれぞれの平均を出して下さいね~。『ベラ』さんも協力願います。


他の方は、お渡しする紙型で『ネクタイ』や『ハンカチ』などの小物を縫っておいて下さい」


「午前中までですか?鬼~」

と『ベラ』が呟いたのは聞かなかったことにした。


何故なら俺も計算を手伝だったのだから。

(しかし、この時代の商売ってなんかゆるいなあ)


こうして、昼までに 男女とも平均のサイズ

一覧は出来たのであった。。。


(自分で言っておいて何だが、たかが『足し算』『割算』って言っても電卓の無いこの時代、『半端ない地獄』だった。。。な。)


平均のサイズを基に、S,M,Lサイズを大体決めた。

勿論中にはLL以上に該当する者もいたが

この時代、『太っていられるだけの財力のある人』は限られている上、『庶民に混じって並ぶことない』のでごく少数だった。





※※※※※※

そこまでの作業が終わった段階で昼食休みに入る。俺は『ミヤーノ』、『ムラーノ』、『ベラ』の3名を誘い近くの店に入った。


「いや~。こんな風に数字を使うのは、この年まで商売していて初めてです。

日々の売り上げの計算ぐらいしか数字なんて使わなかったから。はははは」

と『ミヤーノ』


『ムラーノ』は何故か口数が少なく、何か色々考えている様子だ。


「おら、楽しいです。こっただこと初めて知るので、なんか新鮮です。」

『ベラ』が口を挟む。


「『ベラ』はもともとかなり大きな商家の娘だったんですよ。20年前火事を出す前までは、メインストリートに店を構えてました。」


(色々な人生があるな。)


「まあ、昔のことです。今は好きな針子で飯が食えてますから」

アッケラカンと『ベラ』は笑った。




※※※※※※

食事から戻り、一息をつくと


役割毎、各パーツ毎に再度チーム分けをした。

「こちらの方はひたすら、型紙に添って裁断願います。腕部の方はひたすら腕部だけを切り分けて下さい。」


「そして、こちらの方は、切り分けが終わった布の検品をお願いします。品質が外れるものは弾いてください。」


「最後に裁断が終わったパーツはこちらまでもってきて頂いて、この間の縫い付け方法で縫い付け願います。縫い付けを行うのはあくまで自分の担当する部分だけで結構です。」


「で、『ミヤーノ』さん、『ベラ』さん最終的な仕上がりをチェック願いますね」


「まずは、男性ジャケットSサイズ ブラウンからいきましょう。20着作ったらMサイズに移ります。」


初めの方こそもたつきが見られたが、

ものの1時間も立たないうちにみな慣れてきたのか効率が上がってきた。


「『ムラーノ』さん、我々は異物が混ざっていないか最後チェックしましょう」


「『異物』ですか?」


「針の抜き忘れなどあったら大変ですからね。」


「なるほど。分かりました。」


数時間後には、茶色の「カジュアル着」上下各サイズ20着が男女別に分けて仕上がりを見せていた。


みな達成感と軽い疲労で無口だ。


「お疲れ様でした。日当をお渡しするのでお並びください。」


昨日と同じように、一人一人手渡しをして別れる。


ムラーノが何故かその光景をじっと見ていた。



※※※※※※

翌朝、早朝に倉庫に行って見ると人の気配がする。

(不審者?)


そう思って入ると、なんとみな働く支度をしていた。


「?」


俺が入ると

「『アルト様』おはようございます。今日はどんなことをするんですか?」

と『ベラ』の声が響く。


「今日は型紙を変えて、違う色の服を作ります。まずは。。。

女性用のブラウスから作りましょうか。

ここにある生地の色に限られますが、皆さんの好きな色に合わせて生地を選びましょう。」

投票の結果クリーム色、淡いブルー、ピンクが選ばれた。


そして、驚いたことに、、、お昼過ぎには上下合わせて全て仕上がってしまったのである。


「あの、『アルト様』お願いがあるのですが。。。」


数人の若い針子がやってきて、おずおずと話しかけてきた。


「なんですか?」


「あの、その、やっぱ良いです。」

そう言いつつ服をチラリと見ていた。


(『目は口ほどにものを言う』ってやつだね。)


「皆さん、手を休めて聞いてください。皆さんに最初お約束した通り『洋服』を先にプレゼントします。好きなやつ選んじゃってください。」


「やたっ」あちこちから声援が飛ぶ。


そして、俺は事態を甘く見ていた事を知る。

。。




「あっ、それ、私が狙ってたやつ。」


「まだ、いっぱいあるじゃない」


「引っ張らないでよ」


「そこ、なん着もキープしないでよ」


暫く仕事どころじゃあなくなった。





(あっ、でも?、、、女性に人気がある色は、これで分かるな。それを今後多く作れば売れそうだね。


それからと。課題が一つか。オープニングの時の誘導は上手くしないと、ケガ人が沢山出そうだな。

こりゃ。事前にわかって良かった。)



「『ベラ』何色がなん着なくなったか、書きとめておいてくれよ」

と取り敢えず声がけをした。


「あい~」


って。。。

真っ先に狙ったブラウスとスカートに飛び付いていたのは『ベラ』だったみたいだ。

(まあ、そんなもんなんだろうな。)





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