そんなんじゃ。。。
「さて、『アルト様』一見落着しましたね。大成功じゃあないですか。」
ミヤーノが嬉しそうに言う。
(確かに『バーナード服飾店』に一矢報いたので当初予定は果たした。でも?)
「『見本』を納めるのは成功しました。多分、子爵は良い宣伝塔になってくれるでしょう。でも、商人ならば?」
そう言うとミヤーノははっとした顔をした。
「『儲けて』なんぼでしょう。」
「いやーアルト様にやられましたな。『バーナード』をやっつけた事で、すっきりしてました。で、次も何か作戦が?」
「あれ使えませんか?」
「あれですか?」
「はい。」
俺が指差したのは、倉庫に作業場のスペースを作る為に運びだした『在庫』=『売れ残り』の生地の山だった。
「しかし、これは。。。」
「これは?」
「同業の生地屋が店を畳む際、破格値で買った安物の生地ですよ?場所だけとっていたのでこのタイミングで処理しようと思っていたやつです。」
「処理するつもりなら、使ってしまいましょう。生地は別に傷んでいるわけじゃないですよね?」
「勿論です。」
「『採寸に協力してくれたお客様100名に無料で服1着提供セール』をしましょう。」
「ただで配るんですか?」
「はい。店の『プレオープン』の宣伝目的が一つ、
服屋で服を買う機会の無い『庶民』の足を服屋向けさせる目的が一つ、
あとは『標準体型』のデータを取るのが目的となります。」
「『標準体型』ですか?」
「『既製服部門』を立ち上げるには、一番売れやすい体型の服に絞って型紙を作る必要があります。取り敢えずは、まず男、女それぞれ3体型(S,M,L)ぐらいに絞ってデータを集めたいです。」
「データを集めるなんて言う人を初めて見ました。」
(そんなんじゃダメだろう。。。)