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反撃

※※※※※※

「次の『ロゼット』の街を過ぎ、『ダルトンの丘』を越せばすぐ『王都』です。

数日『ロゼット』の街に泊まり、用意が整った後に王都入りします。アルト様、王都を見られたらきっとびっくりされますよ。」


そう言いながらも、普段冷静な『ムラーノ』自身も少し興奮しているようだ。


「どの位の人口がいるのですか?」


「人口?」


「ああ、人の数です。」


(江戸末期の日本で100万、ロンドンで70~80万と聞いたことがある。だとするなら王都なんどから100万人ぐらいかな?)


「確か『18万』とか聞いたことがあります。人の数が多いので、はぐれないよう願います。」


(前世に聞いたニュースで新宿駅の1日の乗降者数350万越えって聞いた気がする。

早朝、深夜を除いた新宿駅の約1時間分の人口って訳だ。。もしかして、ショボいのか?)

俺の期待はかなり後退した。。。



『ロゼット』の街に宿をとり、服装を(あつら)えるため街の中心部へと向かった。


「ご当主にお会いするに当たって、みすぼらしい格好をして、礼を失する訳にいかないですからね。」

そう言いつつ、俺たちは目抜通りで一番大きな服飾店『バーナード服飾店』に入った。


店に入ると『ムラーノ』は手慣れた様子で店の者に礼服の型見本を並べさせた。


(この時代には、いわゆる既製服はないんだな。一つ一つ採寸をして縫う『オーダーメイド』が主流って訳か。


しかし、型がなんかみなダサい。。。

ワイシャツにも無駄な装飾(ヒラヒラ)が付いているし。


このままだと俺の意思を無視した服が出来そうだ。。。仕方ない。。。)


俺は『アルカイックレコード』から『タキシード』の型紙のデータを呼び出し自ら書き写し、職人に指示を出すことにした。併せて、『シャツ』の型紙データも出す。


それを手渡そうとして言葉で遮られた。


「お坊ちゃま、その様なものを渡されずとも、我々にお任せ頂ければ最新流行の洋服をお仕立ていたします。」


言葉は丁寧だが、明らかにプライドを害したようで、店主の当たりが強い。


意外にも店主の態度に切れたのは『ムラーノ』だった。


「店主、お坊ちゃまに対し、その態度はいくらなんでも無礼ではないか。ここはお客の要望に沿って洋服を仕立てる場所と思ったが、どうやら違ったようだ。お坊ちゃま出ましょう。」


(日本の電気メーカーが世界の市場で韓国メーカーに負けたのは、『お客の欲しいもの』をちゃんと調べず、メーカーが『これだけ高性能なら売れるに違いない』とお仕着せのものを売ったからだと言われる。


ふとそんなことを思いだした。)



「私とした事がすみません。」

店を出るなり『ムラーノ』に謝られた。


「店の態度は確かに傲慢で、私も不愉快に感じてました。なので、ああいう風にムラーノに言ってもらえて『スッキリ』しました。」

そう言って俺はにっと笑った。


「まあ、次の店は先にこの型紙を持ち込んで、それに沿って作って貰えるかどうか聞いてみましょう。変に揉めるのは時間が勿体ないですから。」

そう言うと『ムラーノ』は頷いた。



その後、驚くことに、覗く店覗く店すべてに断られた。

幾つかの店の店主は、あきらかに申し訳なさそうにしていたが、理由(わけ)を聞いても話してくれず、結局は断られた。


「予定を変更して、洋服は王都で仕立てますか。」

6件目に断られた際にムラーノが提案してきた。


「多分ですが、この街の洋服店は全て『服飾ギルド』の息がかかっているのでは無いかと思います。」



「そしてあの最初に入った店がギルドを仕切っていると?」




「そんなところでしょう。」




「布地はどこかで、購入することは出来るものですか?」




「『生地屋』に行けば手に入るかと。」




「『生地屋』までギルドの手が回ることはありますか?」



「アルト様はご存知ないでしょうが、一般庶民は洋服店で買い物はしません。

『生地屋』で布を買って自分で仕立てるんですよ。なのでそれなりの数があります。

『生地屋』にとって『洋服店』はそれなりのお客ではありますが、売上的には一部でしかない筈です。」



「と言うことは息がかかっていない店もそれなりにあるってことですか?」



「多分ですが。そんな事より王都で購入した方が早いかと思います。」



「『舐められたら倍返し』そういうことわざもありますよね。

あとどのくらい王都に着くのがかかっても大丈夫ですか?」



「そんな『ことわざ』なんてありませんよ。アルト様。まあ、余裕は1週間。そんなものでしょうか。」



「『オーガニクス』の名前を知った上で、『バーナード洋服店』はケンカを売ってきた訳ですよね。買わないで済ますんですか?」


こう殺し文句を述べると案の上、『ムラーノ』は乗ってきた。



まず俺たちはこの街一番の生地屋『ミヤーノ』に協力を取り付けることにした。


家名を告げ、高級生地を大量に『つけ』で買い付け、そして、その上で事情を話し協力をお願いした。


意外にも「ミヤーノ生地店」の店主が『バーナード服飾店』に対しあまり良い感情を抱いていないこともあり、全面的に協力を取り付けられることになった。

(ギルドの地位を元にかなり厳しい取引を強いていたらしい。)


反撃のノロシは上がった。












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