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闇の足音 カウンター作戦

(魔物退治を行うに当たって、問題点は主に2点。

1つは魔物がまだダンジョンから湧き出ていること。

『ぱら作戦』終了後の会議の折り、偵察からの報告で確認された。

→単純な力押しじゃ無理って事だな。

2つ目は遠隔攻撃スキル持ちの絶対不足


待てよ???

そもそも偵察隊は『どうやって』ダンジョンまで行けたんだ?

村の門からダンジョンまでの山間の道、前の説明だと数百?場合によっては千の魔物がいるのだろう?


それと、伯爵って精霊の加護持ちだよな。遠距離攻撃できないのか?)


すぐに確認することにした。


質問を周りの騎士にしたところ

わざわざ、トーラスさんが来て説明してくれた。

「偵察のルートについて言うと『ミスリル』を採掘している後ろの山肌から山間の道の崖上を通り、ダンジョンの洞穴の上まで抜けていくルートがある。


精霊については、、、

『精霊の力』は子息もご存知でしょう?

伯が加護を受けている『シルフィード』の魔力は特に強大です。

もし、山間の崖下でその魔力を放ってみたら道にいる敵は勿論のこと崖も崩れて、この村は外界から取り残されることになります。

また目の前にいる敵をすべて払ったとしても。。。」


「ダンジョンからまた湧いてくる?」


「そうです。」


(『パラ作戦』が成功して、袋小路から出れるようになった今なら、殲滅は可能ってことだな。)


「トーラスさん、良い手を考えつきました。伯と話をさせて下さい。」


こうして「魔族殲滅作戦(仮)」は始まった。





※※※※※※


「話とは何かね。」

負傷した騎士に希望が見え、伯の顔にも明るさが戻ったように見える。


「ここらへんで、敵の本拠(ダンジョン)を叩きます。あそこを潰さない限り、ここ一帯の安全確保ができません。」


「何か策があるのか?」


「ガラスのコップを用意して頂けますか?それと、この鉱山から切り出した岩も。」


「誰かすぐに用意しろ」


まず、すぐにガラスのコップが用意された。


「見ていて下さい。」


頭の中で、以前ガラスが砕けた時の周波数を思い浮かべ【周波数 ガラス固有振動/0距離/高出力/5秒】と念じ魔力を乗せる。


「ザッ」


一瞬にしてガラスは砕け砂状になった。


ディール伯は目を見張った。


「ふむ。」


次に、切り出した岩が運ばれる。

(これは、初めてだが同じ様にできるはず。)


対象の岩に周波数を少しずつ変え、音波を当てていく。ちょうどラジオの曲をチューニングするように、ゆっくりと。

岩が少しずつ振動を開始し、ある時点でやはり砕けた。

俺は、すかさずその周波数を記憶した。


「岩は時間がかかるようだな。」


「ここの岩の成分が分からなかった為、時間がかかりました。もう一つこれと同じ岩をお持ち願いますか?二回りほどデカイやつで。」


「すぐに。」


1t近い岩が持ってこられた。

(これは二回りどころじゃないだろう。まあ実力見せるには良いか。)


魔力を乗せ【周波数 岩の固有振動/カバー領域 岩/高出力/15秒】と念じた。


「ザッー」

残ったのは砂の山だった。


「つまりこれと同じ事があのダンジョンについても出来ると?」


「ダンジョンの場合、この岩のように小さくないので、高出力で一気にとは無理でしょう。私の魔力が多分足りないかと。ただ低出力で時間をかければ可能と思われます。」


「では、できると?」


100%の自信は勿論無い。ただ出来ると言い切った方が良いと感じた。


「出来ます。」



「怖い力だな。どうやった?このような魔法聞いたこともないぞ。」



「『精霊の力』は怖いものと?力自体が怖いのではなく、

あくまでも『扱う人の悪意』が怖いのではないかと私は思いますが。」


直答は避け、暗に『精霊の力』と言うことにした。

『アカシックレコード』なるものについては説明するのが難しいし、そこで使われている知識?『共振』など説明しても理解が難しいと思ったからだ。

(『物には『固有振動』と言った物があって、それと同じ周波数の音を当て『同期』させる事により物を破壊する事が出来る』

なぞ言ってもまあ理解はされんだろうな。単純に精霊のせいにした方が早い。


しかし、共振の力半端ない。。。


前世でも、テレビでエアロビ教室の生徒の振動(ジャンプ)でビルが揺れたり、共振で橋が崩壊したりしたと聞いて

『まさか』と笑っていたが、自分で実際行ってみると恐ろしい)



「はっはっはっは。そうだな。まあ良い。全て語れるものでもないだろう。

『必要な時に必要な力を持った者が味方としている』その事に感謝せねばな。」



「で、その力どう使う?」



「ダンジョンを壊すのに」



「おのが一人でいくつもりか?」



「ダンジョンまで偵察に行かれた方と、谷を殲滅する為の要員を若干名貸して頂きたく思います。」



「谷間の道にいる魔物も崖を崩して埋めるのつもりか?」



「そこは伯の『精霊のお力』をお借りできたらと思います。私のする事は『ダンジョン制圧』と『ダンジョン前エリアの制圧』と考えております。ダンジョン前から村の門までは伯にて制圧頂ければと。」


「我らにも『戦功』を上げよとな。感謝するぞ。このままではアルトに美味しいところ全て持って行かれるところだった。」

と楽しそうに笑った。



「ただ、俺が本気で力を奮った場合、ダンジョンから村までの道は使えなくなる上、多少の打ち漏れもでるやも知れんぞ。お主が考えてくれたおかげで、我らは帰る手段はあるが、アルトと作戦に同行した者は取り残されることになる。自力で屋敷までの道を拓かなければならぬぞ?」


「。。。。」


「叔父上、それがしの名誉にかけても、子息を屋敷までおとどけします。」

そう言ったのは『トーラス』さんだった。

(て言うか。。。伯の甥だったんだね。)


「分かった。トーラスお前に任せる。必要な人員は持っていくが良い。」



「あとお願いが。。。」


「何でも言うが良い。」


「油を用意して頂けますか?」


「どうしてと聞いても良いか?」


「勿論です。ダンジョン殲滅後の作戦に関わることです。」


俺はつぎの一手を話したのであった。



「。。。。魔物とは言え、同情するな。」




「この作戦が終了したら、俺も領地に戻る。武運を。トーラス頼んだぞ。」


こうして、俺は鉱山の村を離れたのであった。




※※※※※※

会議から数時間後、俺はトーラスさんの背にあった。(詳しくは背負われていた)


「子息、まもなくダンジョンにつきます。準備は良いですか?」


(何て体力だ。。。メイルを着た上に俺を背負って、かつあの崖上の道を伝ってこれるなんて化け物か。。。)


しかも、俺も丸腰ではない。いざという時用だと言って伯から貰ったミスリル製の籠手と懐剣を装備している。

それを背負って息一つ切らさずにいる。


俺の視線を感じたのか

「私も王都の学園の卒業生でして、身体強化魔法は修めています。」

と笑った。


「学園ですか、私もいつかいけるだろうか。。。」


「意外とすぐに話があるかも知れませんよ」と笑顔で返された。

(トーラスさんには、事情を説明していないからなあ。。。)


「さて、いきますか。」

そう言って行動を開始した。


手筈通り縄を俺に結びつけ、トーラスさんは洞穴の上からそろそろ俺を下ろした。ダンジョンの入口は鍾乳洞になっており、高さは7m程度。大型の魔物なら手が充分届きそうな高さだ。

下の魔獣はこちらにはや気付いたのか、噛みつこうとジャンプしてくる。

(落ちたら、最後だろうな。。。

釣り針につけられたミミズの気持ちってこんな感じか。。。)

余計な考えが過る。


さて、これからは俺の仕事だ。。。

果たして鉱山と同じ材質で壁が出来ているだろうか?


鉱山で実験した際反応があった、「固有振動数」をイメージし、壁に連続して微弱な音波を照射していく。


暫く反応はなかった。

(失敗?)



撤退も視野に考えはじめたころ


「ミシッ」


その音は響いた。


「ミシッ、ミシッ、ミシッ」


(リソナンス(共振)は成功か?)

ポロポロ壁面が崩れ始める。


「撤退」

トーラスさんは吠える。


「まだ、もう少し。」

まだちょっと足りない。


「充分だ、俺を信じろ。」

そうトーラスさんは叫んだ。


(そこまで言うなら。。。)


縄を巻き上げてもらい、トーラスさんと合流、ダンジョンの屋根部から離れた場所に移る。


(まだ崩れない。。。危険を押してもう少し頑張るべきだったか。)


そう考える横で

「嵐の精霊『ジン』よ我トーラスは望む。その(いにしえ)の盟約に基づき、我に力を」と唱えた。


何かの気配が濃くなる。


「トーラスよ呼んだか?」


筋骨隆々の美丈夫がいつの間にか立っていた。


「あの洞穴を崩して欲しい。あと一押し必要なのだ。」


「相分かった」

そう言うと飛び立ちダンジョン前に立つ。

そして、『トルネード』に形状を替え、突っ込んでいった。


(えっ、トーラスさんも精霊の契約者だったんだ。)

新たなる事実が判明した瞬間だった。


その後『ガガーン』と凄い音がして、上からダンジョンは崩落した。何トンと言う土砂が降りそそいだ。


(成功だ ‼)


急ぎ狼煙を上げ

作戦は次のフェーズに移った。


これからは時間との勝負である。


ダンジョン前にいる魔物に対し俺は

魔力を乗せ【周波数 10ヘルツ/カバー領域 ダンジョン前広場/低出力/5分】と念じた。


過去、『音を使った兵器』で魔法に転用できるものがないかアカシックレコードで調べた時に、『超低周波利用の兵器』が引っ掛かった。

『超低周波』をある一定度以上継続して浴びると動物は吐き気、三半規管異常による目眩などを起こすらしい。

『イスラエル軍がパレスチナ難民に対し使った音響兵器が『スクリーム』と呼ばれている』との情報もあった。その内容をもとに術式を編み出したのがこれだった。


効果はテキメンで、ダンジョン前の開けた場所にいた魔物はふらふらしている。

(効きが鈍いのもいるな。。)


効きが鈍い魔物については『スタン』を次々と打ち込み無力化を図る。


頃合いを見て、突撃の合図を行った。


ワーグナーの『ワルキューレの騎行』

そのトランペットな音がダンジョン前の広場に勇壮に響き渡る。

ーちなみに俺がワルキューレとか、ヴリュンヒルデ、オーディーンなどの北欧神話を知る機会となった曲だ。


「突撃」


次々と縄を伝って、同行の騎士達は戦場に飛び込んでいく。


それは、一方的な『虐殺』となった。

ふらふらとしている魔物はもはや狩りの対象でしかならない。


広場を制圧し、鉱山の村へと続く道までいき、入口を俺は破壊した。

『狼煙』を上げ一息つくまで一時間もかからなかった。


「そろそろ、山間の道に油が撒かれる頃合いですな。」


風に乗り油臭いが辺りに満ちてきた。

それと共に

『ゴー』っと言う地響きに似た音が村の方向から響く。


それと前後し、「ギャー、ぎゃっ、ぎゃっ」てか「ぎゃん、ぎゃん、ぎゃん」とか

魔物のものらしき悲鳴があちこちから響く。


そして

「ゴゴゴゴ」

最後に大音響が響き、全てが静かになった。




暫くして村の方より狼煙が上がる。

「何本見える?」

トーラスさんが部下に尋ねる声が響く。


「5本、5本です。」

上ずった声がシンとした中に響く。


「ひゃっはー」


俺達は死線を制したのだった。




※※※※※※

後に伝え聞いた所では、山間の魔物討伐は人間側の圧勝だったらしい。


逃げ場の無い一本道、

数百もの魔物がひしめき合っていたところに、崖上より油が大量に撒かれ、

そして火が点けられた。


火が燃え広がるタイミングで

ディール伯爵が精霊を使役し、

竜巻を起こした。


竜巻は炎を巻き込み『火災旋風』を作りだした。

その炎は魔物を次々巻き込んでいき、炎の高さは実に20mまで達していたらしい。


そしてトドメは、熱と竜巻の圧力に耐えられなくなった崖の崩落によってだったと言う。大音量を立て崩れていったと聞く。


この討伐により、『殲滅の旋風』ディール伯の英名が王国中に響き亘るのだった。

が、それは後の話。


※※※※


俺たちは、崩落させた崖向こうから漏れてくる熱波と崩落音、そして立ち上る5本の狼煙から、作戦が成功裏に終わったことを知った。


(これからが俺にとって本番だ。

鉱山の村へはもう戻れない。

屋敷方面へ流れて行った魔物を避けながら、屋敷へ戻らないと。。。まだまだ前途多難だな。)



それから数時間後、

俺達はなかなか前進出来ずイライラしていた。


考えて見ればダンジョンに近いこの辺にはそれなりに強い魔物が上がってきている。

いくら精鋭を30名借りたとは言え、じり貧の感がある。

ダンジョン前の広場と違い、ここら辺は樹木も生い茂り、視界も開けていないのであちこちに音が反響する為、広範囲の音魔法が役に立たない。


(このままでは屋敷があぶない。。。)

焦燥感が募る。


「右45度から大型の魔物2体接近、おおよ

そ距離60m」


「ああ?45度?」


「正面と右の間です。」


「そいつは右斜め前だろ?」


「そうとも言います。。。」


かつて交わしたよーな会話が飛び交う。


目の前に『ブルーファング』の300KG級が2体飛び出て来た。

用意をしていた俺は、『スタン』を放つ。

よろめいた『ブルーファング』の前足を『トーラス』さんは簡単に刈る。

(起動力さえ奪えば獣型の魔物は簡単に狩れるな。)


前足を切られた『ブルーファング』は『どうっ』と地面に横転し、数名の騎士によりその命を刈られていく。


「道の左側の藪10mに小型の魔物が数匹潜んでいるので注意を。一匹中型がいます。」

(こんな所にいるってことは、小型とは言え侮れないな。)


集団で塊り、そろそろ進む。


「ぎゃっ、ぎゃっ」

と不快な奇声を発し突然『コボルト』数匹が現れ、背中を見せ逃走した。


「なんだコボルトか。。。脅かすないっ」

誰かが呟く。




「あのコボルトを急いで追って下さい」

俺は叫んだ。なぜなら逃走したコボルトの

うち一頭に見覚えがあったからだ。


(あいつだ。。。『片目』が潰れているから間違いない。『ロイ』達が討伐?し損ねたやつだ。)


先に追跡に入った騎士が帰ってきて、報告した。

「やつら巣穴(洞窟)に潜り込みました。

洞窟の中がどうなっているか分からないので一旦引き返して来ました。


「ここいらに住み着いている雑魚でしょう。時間が勿体ない。先に進みましょう」


そう『トーラス』さんは言った。


状況的に『トーラス』さんが言っていることはが正しい。が、俺には自信があった。


「その洞窟を攻略しましょう。」

皆ざわめく。


「静かにしろ。今まで子息に従って間違いがあったか?」

トーラスさんの一言で、周囲は静まった。


「あのコボルトを率いている片目の個体を村の近くの洞窟で見た事があります。

危険と判断して、その入口は村総出で塞いだので、本来ここにいる筈がない。なのにここにいるってことは?」


「抜け道があるってことだな。」

トーラスさんが話を繋ぐ。。。


方針は決まった。


洞窟に入り、俺は『ソナー』を発動した。洞窟内部の構造は比較的簡単で、緩やかに下方へと伸びている。

「特に問題なく進めそうです。」


俺と『トーラス』さんが先頭に立ち、比較的早いスピードで降りて行った。

途中『雑魚』が潜んでいる場所のみ俺は交代し、退治をお願いした。


『片目の雑魚』も物陰に潜んで奇襲をかけようとしたが、『トーラス』さんにより一閃のもと切り伏せられたのは余談だろう。


こうして俺達は数時間後には、人の手により作られた『第二秘密基地』に到着した。


邪魔なレンガ壁?は、レンガの固有振動数を『サーチ』した後、『リソナンス(共振)』で粉々に砕いたのは語るまでもない。


(帰ってきた。。。)






※※※※※※

急ぎ村へ向かい村、門で到着した旨を告げる。


が、、、誰も出て来ない。

(帰ってくるのが遅すぎて、

皆殺されてしまったとか?

嫌な考えが頭を(よぎ)る。)


「何か門に張ってあります。」

同行の騎士が気付き、剥がしに行った。


内容を『トーラス』さんが読み、そして俺に説明をしてくれた。


「どうやら村ごと避難したみたいですね。上位魔族が先導するスタンピード、村程度じゃ対応できる訳ないか。まあ、妥当な判断でしょうね。子息が私と鉱山の村に向かった翌日には、近くの街へと避難を開始したみたいです。

そして、この書き置きは、すれ違いがおきぬよう我ら宛に書かれたみたいですね。子息は。。。子息を王都の伯爵邸まで連れて来て欲しいと書かれています。王都までの路銭は次の街に預けてあるとの事です。」


「王都ですか。」


こうして、俺は期せずして王都に向かう事になったのであった。





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