闇の足音 ごうかい?
『酒だ、酒だ~。』
『オーク肉は焼き上がったか?まだ?とっととしろ。』
『ばか、まだ食うんじゃねえ』
『お前ら伯とお客様を地べたに座らす気か?敷物を敷くんだよ。』
辺境伯との会談?が終わり、一眠りして起きると、村中宴会の準備で大騒ぎだった。
ケガから治ったばかりの人まで、準備をしている。
「アルト様、宴会の用意ができるまで、今しばらくお休み頂けますよ。あっそれと何か食べたいものあれば今のうち言っておいて下さい。取り寄せますんで」
そう、トーラスさんが声をかけてきた。
「取り寄せですか?」
「そういや、治療で忙しくって、子息はこの村の見学をされてなかったようですね。『百聞は一見にしかず』って言います。この村の『とっておき』見にいかれますか?」
勿論『うん』と頷く。
そして、連れて行かれたのは村の端にある切りたった崖であった。
そこには3本の大縄が垂れていた。
正確には、1本は谷向こうへ続き、残り2本は真下に垂れている。
「これが秘密兵器です。」とトーラスはにやっと笑った。
良く見ると下に垂れている縄の端には巻き上げ器らしきものがついており、それを数十人で巻き上げている。
(人力か。。。でもこれなら?)
俺の顔を見て、
何が言いたいか察したトーラスさんは、話を続けた。
「人を吊り上げることも考えたんですよ。でも。。。」
下から上がってくる箱を指指した。
箱に取り付けてある縄が撚れて、縄を中心にぐるぐる回っている。
「あれが原因で縄がすり切れてしまうんです。」
で、もう片方を差す
ふいに突風が吹き「ばん」と崖に箱は叩きつけられた。
幸い壊れなかった様子だが。。
「極めつけは。。。」
ちょうど、横を通りかかった騎士に
声をかけた。
「おいっ、『ジラース』、腐りかけの肉でもいいからちょっと持ってきてくれ」
すぐ肉が用意され、持ってこられた。
「良いですか?一瞬なんでよーく見ていて下さい。」
そう言うとトーラスさんは肉を崖下に放り投げた。
『ヒュン』と何かが肉の前を通りすぎ消えた。
(えっ?『小型のワイバーン?』、凄い‼)
「まだ巣立ったばかりの若い個体です。
基本やつらは、まだ幼い為、
動きの遅い野生動物を襲い、武器を持った我々にはかかってはこないのですが。。。」
「巻き上げる速度の遅い、ロープにぶら下がった『餌』には躊躇しない?ですか。」
「その通りです。」とトーラスさんは頷いた。
後で聞いたが日用品はともかくとして『食料の引き上げ』に成功するのは二十回に一回程度らしい。
(人の乗降用にはまず使えないか。
それに、、、労力が半端ない。。
それでもミスリル鉱の採掘はペイ出来るんだろうな。
高価と言われる訳だ。)
「で、あちらは?」
もう一本の谷向こうに渡されているロープを差す。
「あれは、採掘した『ミスリル鉱』を麓の村まで『落とす』為のロープです。」
「落とす?」
「まあ、滑車がついているから、『運ぶ』っていうのが適当な言葉なんですが。
制動が効かないので、到着点に凄い勢いでぶち当たるんです。
箱はバラバラになりますが、ミスリル自体は頑丈なんで、散ったミスリルを着地で回収してます」
(随分、豪快な輸送方法だな。)
ロープウェイ?を見学していると
あちらこちらで旨そうな匂いがしてきた。
「間もなく始まります。」
先ほどのジラースさんが呼びにきた。
「主賓がいないと始まらないからな。さあ、主賓どの行こうか。」
ニカッとトーラスさんが笑う。
「おおやっと来たか」
ディール伯がすでに座って待っていた。
トーラスさんが音頭をとる
「若き我らが英雄の登場、偉大なる主の快癒、そして栄光なるディール騎士団に乾杯」
それを合図に、宴は始まった。
(宴にはやっぱり音楽でしょう。音魔法は、なるべく沢山の人に見せた方がいいし。)
全開でいくことにした。
派手な音楽なら、UKロックやパンクか?
まずは、ク○ーンの「Rock you」から
出だしのビートからサビの「We will,we will Rock you」まで音を絞らずガンガンに流した。
初めはびっくりしていた騎士団員達だが、
そのうちビートに乗ってきた。
英語なんて知らないはずなのに、『ロック ユウ』(叩きつぶせ)と叫んでいる。
おれが門に飛びこんでいった際に、叫んでいたと言う「ヒャッハー」
そいつを叫んでいるやつもいた。
無礼講でしょう。ガンガンにいくぜ~
乗りの良い音楽をメインに『地球の』音楽を流していく。
辺境伯はロックより、ワーグナーやベートーベンが気に入ったみたいだ。
美味な料理に、美味しい酒、
音楽もガンガンに入っていることもあり
みなノリノリ。
楽しいなあ。
夜遅くまでこの宴は続いたのであった、