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闇の足音 明かされる事実

それから、伯爵との会談?は暫く続いた。

聞くと伯爵と俺の父は戦友だったらしい。


父について母上から何も聞いていなかったので、辺境伯との関係を含め教えてもらうことにした。


なんでも、

父達、精霊の中でも強い精霊の加護を受けた(光、闇、炎、水、風、土、植物)7人の貴族は王都7(セブンスター)と呼ばれ、王都の盾として、時には剣として活躍したとの事だ。


「知ってはいると思うが、お前の一族は炎の精霊が加護する一族だ。」


俺は頷く。


「その中でも最強に近い『イフリート』

その加護を得ていたお前の(ラファス)の武力に、当時対抗できるものはいなかった。ゆえにラファスは王軍の将として、早くから勇名を馳せていた。


悔しいが他の4人と比較しても頭一つ抜けていたのは事実だな。

だが、力がある輩が持つことの多い傲慢さ、自己中心的な狭量さなどはなく、

仲間思いの良いやつだった。

馬を並べ共に戦うのはそう、俺達にとっても誇りだった。」


「7人では無く5人ですか?」


「あとのお2人は王族に連なるものゆえ、比較するべくもない。」


「『当時なかった』と過去形なのは何か理由があるのですね。」


「ラファスは。。。

お前の父は

『リーフェルの戦い』にて、軍を敗走

させたばかりでなく、自身も『イフリー

トの加護』も失った。」


「貴族が貴族たらんとする、拠り所(精霊の加護)を失ったのだ。それまでの功績もあり、敗戦に対するおとが目は(まぬが)れたものの、すでに王軍に居場所はなく、下野せざる得なかったようだ。


その後、爵位も自ら降り、弟である現伯爵に譲位したと聞く。


幸いなことに現伯爵も『サラマンダー』の加護を持たれていた為、家格が没落に至っていないのは、お前の知っての通りだ。」


(俺は知らないし、叔父に会ったことすらない )

苦笑が浮かぶ。


「譲位後のお父上は?」


「お前の母と一緒になり、お前の母の一族がかつて治めていた旧ザンザニア国の跡地に隠頓していたと聞く。」


「『旧ザンザニア』とは初めて聞きます。」


「ここより北、かつて我ら(おうこく)が滅ぼし、併呑(へいどん)した国だ。今は『ザレス』と呼ばれている。

『精霊』を行使するのは自然の(ことわり)に反するとの教義を掲げた『ソロン教』を国教としていた国だ。」


「母上はそこの出なのですね。」


「滅ぼされた国の女性の王族が辿る道は二つある。

一つは、処刑。

もう一つは王の(めかけ)となり、国を円滑に併合する為の道具となるかだ。」


「お前の母は、王の妃になるより、処刑を選んだ。『国を滅ぼした相手であるばかりでなく、肥えているブタのような方はいやです。』と言ってな。


その際、立腹した王の側近は、処刑を申しでたが、王は処刑する事はせず、

お前の父に戦功の報酬として下婢した。


自分の国を滅ぼした男のもとに送られたのだから葛藤はあったとは思うが、

お前が生まれたことや、他にラファスが第二夫人などをめとらなかった事から考えるに、結果として良かったのだろうな。」


「王は今でも母上の事を怒っているのですか?」


「まさか。」

はっはっはと笑う。


「滅ぼした国が、いったいいくつあると思うのか。お前の母親のことなど覚えてすらいないわ。」


「そうですか。母上が何か警戒してるように思えたので。」


「今のお前の母親の願いは、

ラファスの忘れ形見であるお(アルト)が、成人の儀で

『力ある精霊に認められ』

『王より爵位を賜るようになる』

これだけだろう。」


「ちなみに、もし私が精霊の加護を得られなかった場合はどうなるのでしょう?」


「まあ、お前の場合、魔力が多い上、『オーガニクス』の名前持ちだから、まず得られない事は無いだろ。でも、もし得られなかったしたら。。。

オーガニクス一族にとって、『お前とお前の母を囲っている価値』はなくなるだろうな。」


「じゃあ、『加護』を得られるのが望ましいってことですね。」


「もちろん『加護を得られるだけ』それだけが重要な訳ではない。上位貴族の場合、加護を得られるのが最低条件なのでな。

なぜなら大概の名家は、特定の精霊族と古き血の盟約を結んでいる。故に余程のことがない限り加護を得られないことはない。


なので、『何によって選ばれたか?』

が一番重要なポイントとなるのだ。


貴族社会では、結局『精霊の格』=『家の家格』となる為、精霊の格が高い者が一門の当主となるのが慣わしだしな。」


「あれだけの人数を、MP薬があったとは言え、治療出来る魔力があるってことは。。。


少なくとも炎の3精霊、

『イフリート』、『フェニックス』、『サラマンダー』のどれかと契約できる可能性があるという訳だ。

お前の『母親』が危惧するのも分かる。」


「叔父上。。。ではなく?」


「伯ではないな。良く考えてみると良い。

伯は現在爵位を正当に得ている。なのに、今さらお前を目の敵にする必要はあるか?」


「ない。無いですね。なら?」


「その子供らが必ずしも優秀で高位精霊と契約を結べるとは限るまい?」


「。。。。」


「 伯には1人の正妻と2人の妾がいる。そして4人の子供も。


伯は短気だが愚かではない。

冷静に考え、お前に能力があれば次代はお前に託そうとするはずだ。

ただ、その妻達とその実家はどうだ?」


「それぞれの実家は由緒ある炎の門閥と聞くぞ。元伯爵の血を引く長男とは言え、お前の母親の素性は『精霊の民』ではなく。。。『ソロン教』の民なのだから。


この際、実際にお前の母親が『ソロン教』を信仰していたかどうかはこの際問題ではない。『ソロン教』を国教として保護していた国の王族だったと言うことが問題だ。」


「ならば、私に能力があると分かれば、爵位につくのを阻止するべく動くと?」


「私が、お前の競争相手なら、『精霊下ろしの儀』の前にこの世からいなくなってもらうだろうな。」


「幸い、今は田舎に籠っている為、その能力は預かり知られていない。


むしろ『能力の片鱗もない馬鹿ボンボン?』となっているのだろう?


だから『たまたま、こうして生きている』って訳だ。」


謎はすべて解けた。


(あと聞いておくべき事は。。。。そうだ。)


「最後に一つだけ」


「なんだね?」


「先ほど教えて頂いた『精霊』以外、精霊はいないのですか?」


「沢山いる。ただ、人間に有益かどうかで選別され、現在『血の盟約まで行われている種族』と言うのは限られているし、自らその姿を我々人間から隠した種族も中にはいると聞く。」


「『音の精霊』存在しますか?」


「それは『音楽の精霊』のことだろう。宮廷楽士の一族が契約を結んでいると聞く。何故そのような事を聞く?」


(答えるべきか悩むな。。。)


「『仮』にですが、もし私が『音の精霊』と契約を結んでいたとしたら、他の精霊と契約を結ぶのは可能でしょうか?」


「あくまで『仮』の話だな?

『複数の精霊と契約を結ぶこと』

それは。。。『不可能』ではない。

が、また『現実的』ではない。

神代の頃、人がまだ精霊と共にあった時代『複数の精霊と契りを結んだ者がい』と伝説では言われている。

ただ、数百年そのような事はなかった故、

『伝説』と言われているがな。」


「なら、一人一種族との契約が、この世界の常識なのですね。」


なんとなく、光明が見えた。


少なくとも『精霊と契約』している時点で

『爵位』は国より与えられる可能性はある。


(もっとも『子爵』、『男爵』の名ばかり貴族だろうな。)


しかも、『炎の精霊』では無く『音の精霊』なら、叔父一族との競合はないと考えられる。

はじめから、伯爵位継承を放棄する旨を公言すれば、きっといらない跡目争は避けられるはず。

(もっともお母様の期待は裏切ることになるだろうけど。。。

でも、もともと『炎』じゃなく『音』って分かっているんだ

からしょうがない。)


問題はどうやって、成人前に俺が『音の精霊の契約者』だと証明するかだ。


「質問は以上かね。」

興味深そうな顔で、辺境伯が俺の顔を見てる。


「仮に、あくまで仮に

どうやったかは別にして、『成人の儀』

前にすでに自分の契約すべき『精霊』が何か分かっていたとしよう。

その上でその者が『自分の血脈との争いを避けたい』と考えていたとする。


私が同じ立場だったなら、

きっと皆の前で

『その精霊のオリジナル魔法を使う』か、

『精霊をこの世界に召喚する』か

どちらかをするだろうな。


ちょうど、私の部下が聞いたと言う

大音量の『突撃音楽』なぞ、

良い(あかし)になると思うぞ。」

とウインクしてきた。


(えっ?ばれてる。。。??)








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