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プロローグ

「ミ・ツ・ケ・タ・・・・」



そんな声が後ろから聞こえた気がした。


振り向いたものの、誰もいなかった。

(気のせいか。。。

ここの所、バイトのシフト入れすぎか。疲れて幻聴聞こえる様になったらおしまいだな)


両親が車の事故で亡くなってから半年ほど経つ。かけてもらっていた保険のおかげで、学費は何とか払えるが、生きていく上じゃあ、先立つもの(お金)はいくらあっても足りない。身体は小さな時から鍛えてきたおかげで丈夫なのが救いか。

バイトとアパートの往復暮らし。

早く『大学卒業』の資格だけ()て働きたい。


「ただいま」

誰もいないし、答えもないと分かっている暗い部屋に声がけして、テレビを付け、インスタント麺に卵と冷凍ほうれん草をぶちこみ掻き込む。


気付くとスマホが点滅していた。

(ミキハルからか)


◼このままじゃ単位落とすぞ。

明日の試験だけは絶対こいよ~。

ちなみに優しい優しい俺さまは、香里奈から

ノートゲットしてお前の大学のアカウントへ

送っておいた。あいつも心配してたぞ。

この借りはトン亭ランチ1回で手をうったる。

( ̄^ ̄)◼


(自分のノートじゃあないんだな。www。

でもありがたい。感謝感謝。香里奈にも礼がしたいな。)

PCを開き、とりあえず勉強を開始することにした。


****

気がつくといつの間にうとうとしてしまっていたらしい。


(やばっ、テスト。)

立ち上がり、水を飲もうとしたが、何か感覚が違う。


「?」


(夢?)


大きなホールに一人ポツンと俺はいた。


目の前に急に光球が浮かび上がってきた。


(人魂?)


触ってみても熱くもなんともない。

ただゆらゆら揺れている。

一回ぐるぐる回転し、通路らしきものに進んでいき、そこで止まった。

どうやら俺が来るのを待っているらしい。


暫く待ってみたが夢から覚める気配はない。

(ここにいても、何も変わらないか。行くしかなさそうだな。)


少し歩くと、人魂?も少し前に行く

それを繰り返し10分ほど歩いた。

(変な夢だな)


間もなく先に薄ぼんやりと大きな扉が見えた。


人魂は扉の前に来るとすっと吸い込まれるように消えた。


(ここに入れってことか。)

見るからに豪華な装飾がほどこされた重そうなドアだ。

力を入れ押してみると意外と簡単に開いた。


『ボッ』そう音がして、部屋中の松明に火が点灯した。


目を凝らしてみると、学校の教室ぐらいの部屋に真っ黒な机が置いてある。


机に近づいて見ると5つの玉?が浮いていた。


赤くゴーゴーと燃え盛っている玉、青く澄んだ玉、緑の中くらいの玉、白く光っている小さい玉、そして大きい漆黒の玉

それらが宙に浮いている。


「選べ」

突如声が響く。


「....」


(どれか選ぶのか。

色で選ぶとしたら、澄んだ青色の玉か、白い玉かな。

それと大きさに何か意味があるのか?

黒い玉だけなんだかでかい。

何故か黒い玉が気になった。)


「あい分かった」


「へっ?」


その声とともに『黒い玉』以外の玉は全て消えた。

『黒い玉』は俺に向かって飛んできて、

そして。。。身体に入りこんだ。


(あれで選んだことになったのか?

どれが良いなんて一言も口に出していないのに。。。

黒い光を纏った玉なんて『瘴気』とか何か『悪魔っぽい力』だったらどうしよう。


『ガツン』と頭を思いっきり殴られた感じがし、そして意識を失った。



※※※※

(ヤバっ。テスト。)

ガバッと起き上がると、いつもの見慣れた自分の部屋ではなく、先程の薄暗い部屋だった。


(夢の中で夢なんて見るものなんだろうか)


よく見ると先ほどと同じように人魂が目の前に浮かび上がっていた。


「ついてこい と?」


心なしか『頷いた』ような気がした。


(このままじゃ(らち)が明かないな。ついて行くか。)


暫く人魂について歩くと、赤い大きな扉の前に着いた。


扉を開けてみると、先ほどの部屋のような部屋があり、中央には同じように黒い机があった。自動点灯の松明まで一緒だ。


そして今度は先と違い5つの『置物』があった。

「選べ」


同じような声が部屋に響く。


「今度はじっくり選びたい。そして選んだ時には口にする」

ダメもとでそう叫ぶ。


「あい分かった」


(!!! 誰だか知らないが、意志疎通は可能と。)


ゆっくり机の上を見る事にする。

置物は5つ。それぞれ動物を模した形になっている。

ブロンズ製の『フクロウ』、鉄製の『隼』、黄銅製の『虎』、木製の『熊』、石に彫られた『狐』の5つだ。


「これは、何を意味しているのか?」

おそらく見ているだろう存在に問いをかける。


「答えるだけの権限は我になし。自分で決めよ」

その一言の後、いくら問いかけても答えはかえってこなかった。


(『フクロウ』はギリシャ神話だと『知恵』を表していたな。

だとすると『知恵の象徴?』

なら隼は『素早さ?』

熊は『力?』

狐はなんだろう『ズル賢さか?』)


結局良く考えた上、答えた。

「『フクロウ』を選びたい。」


「良かろう」

その声とともに身体に置物が吸い込まれた。


「次の部屋に急げ。もはや一刻も時間はない。」


その声に急かせられるように人魂が現れた。


前回と同じく人魂に(いざなわれる)こと5分ぐらいか?

今まで以上に大きな扉の前に至った。

今度は迷わずその扉を開ける。


開けると前には大きな玉座があり、そこには年老いた男がいた。

北欧系の深い彫りのある顔立ちに深い髭を蓄え、赤いビロード地と思われるケーブを羽織っている。頭には王冠、手には錫杖をもっている。一見小柄に見えるが、持つオーラにより一回りも二回りも大きく見える。


「久しぶりじゃの」


そう声がけをしてきた。

(知り合い?いやそんなことはない。)

初めて会った筈である。


なのに、ただその声を聞くだけで身体の『底』から震えた。

声に威厳を感じ、いつの間にか俺は片膝をつき(こうべ)を垂れていた。


もっとも『怖い』と言う感覚はなく、

会ったことも、話した事も無いはずなのに、

何故か懐かしさと

魂に刻まれた『絆』の様なものを感じた。


「覚えておらぬか。『転生』を繰り返すとは言え、

人の身は短いからの。『魂の記憶』もまた短いか。


なら言おう。かつての人生で我が身に仕え、皆が離れていくなか最後まで忠義を尽くしてくれたのがお主じゃ。

悪き(あしき)神々の封印が綻び、現世(うつしよ)に戻れた後

そちをまず探したのだが、

一度余から零れ落ちたものをあまたの世界から探しだすのは難しく、時間がかかってしまった。すまぬ。」


「.....」


人は『あまりに想定外の事』に遭遇すると声も出なくなると言うが、この時の俺がまさにそれであった。

ただ、言葉に心が震える(覚えている)ってことは

この人物が言っていることは本当なのであろう。


(けど。。。?)


「我が魂はここでの役割を終え、第328階層世界にて30年後に覚醒する。彼の世界では我を封印した悪神の一柱が侵攻しはじめている。討つために今一度お主の力を貸してくれ。」



しかし、、、。


「すみません」


そう言って俺は頭下げた。



怪訝な顔をされる。


「探してくれた、そのお気持ちは有難いと思います。

そして出来ることならば何らかのお役に立ちたい。

ただ、今自分には生きている場所があります。

どうしょうもなくしみったれて、厳しい世界で、

今自分が死んだとしても何も変わらない世界ではありますが。」


「なら?」


「しかし、こんな俺でも、それなりに思ってくれ、仲良くしてくれる友がいます。そして、昔がどうあれ今の私は力無き者。到底お役に立てるとも思えません」


「あい分かった。全てが終わった後、そちを元の世界に戻すこととしよう。力については先に授けた力以外に『天恵』を授けよう。だから頼む。お前の力を今一度貸してくれ。」


俺にはもう、、、この人に対して

「はい」 と(うなずく)しか道はなかった。


今さら後には引けない。。。


そう言えば『先に授けた力』って?

(さっきの選択か?。選んだのは『黒き玉』と『フクロウ』

英語で言うと『Black Owl』だな。

黒は結局何の『象徴』だったんだろう?黒魔法?闇魔法?

なんか。。。はずれっぽいな。)


「ガツン」

また後頭部を殴られと感じがする。

これって何かの『呪い』か?


声が響く。

「契約を()わした『聖霊』との相性は良さそうだな。

「真名」は『ブラックオウル』としたか。

では世界の源にその真名を登録しておくぞ。


あちらの世界にいったら、『真名』により聖霊と契約するのじゃ。そして、我からの『天啓』上手く使うのだぞ。」


『時間だ。』

そう言って

老人はいつの間にか手に持っていた錫杖を俺に向けた。



「また会おう」どこからか声が聞こえた。


そして、俺の意識は暗闇に飲まれた。


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