8/9
お出かけ?
「それを見てまたおろおろしちゃったんだよね、王子。『更、まだどっか痛いの』とか言って」
全く器用だか不器用だかわからない彼を思い出し、思わず笑ってしまった。まあ、アキバでもいいか。あの一件でまた彼のこと好きになったんだし…。言いながら段々と照れくさくなってきた私は、玄関のシューズボックスからあの時のサンダルを取り出した。
「明日はこれ履いて気合い入れて行くかー!」
あと、顔パックとトリートメント。
「ね、どこ行くの?」
電車に乗るまではアキバと疑わず付いてきた私だったが、乗った電車は明らかにアキバ方面ではなかった。
「着くまでは内緒、お楽しみだよー♪」
そういう彼だがいつも通りのスニーカーにリュックで、別の行き先が思いつかない。アキバとは逆方向の環状線に乗り、電車を乗り換える。都会の喧騒から段々と遠ざかっていく。
「さ。電車乗り換えてまだまだ行くからね」