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雨の小夜曲  作者: 網田鏡磨
雨の小夜曲-ある日常の物語―
4/9

初デート

 あれは付き合い初めて間もない頃だった。あの時は「午前中で仕事上がりなんだよね」が、事の発端だった…様な気がする。それなりに彼の趣味は理解していたつもりだったが、まだ初々しい気持ちで舞い上がっていた私は、張り切ってお洒落をして待ち合わせ場所に急いだ。シフォンのワンピースに淡い色のカーディガン、ハンドバックにハイヒールという、自分なりのキレイめスタイル。我ながら頑張った、と思いつつ、彼の元へ行くと、彼は一瞬呆気に取られた顔をし、「大丈夫かな」と呟いた。その言葉にドキリとしたが、何が大丈夫なのかわからぬまま、電車を乗り継ぎ、降り立った駅が「秋葉原」だった。まさか、いや、ないない、デートだし。彼の背中の妙に大きなリュックを見つめながら、後を付いていくこと数分、急に彼はくるりと振り向き、私に告げたのだった。

「フィギュア店、回ってもいい?」

キラキラした瞳で頬を紅潮させて懇願してくる彼に、どこの誰が拒否できるであろうか。こくりと無言で頷く私の手を取り、彼は微笑んだ。

「早く行こうよ」

ああ、何てかわいいんだ。マニアだかヲタクだか知らないけど、このエンジェルスマイルは幸せすぎる。そう、この瞬間は間違いなく幸せだった。

「ねえ、どっちがいいと思う」

眉間にしわを寄せながら、彼が振り返る。わ、わからない。喜んで王子に付いてきたはいいが、何と答えたらよいか、全くわからない。どうやら今見ている「美少女フィギュア」なるものには、くびれとかラインとか、それぞれ特徴やら好みやらがあるらしいのだが、正直目の前の2体の美少女たちのうち、どちらが優れているかなど不明だ。とりあえず胸がふくよかな女子が好きと思われる彼の趣味を考慮して、右の美少女を指差した。

「わ…私はこっちかな」

すると頭から花が咲いた様な笑みを浮かべ、

「そうだよねー、やっぱこっちにするー」

と、彼はレジに向かって駆け出した。心なしか、軽く宙に浮いているようにさえ見えた。一方、正解を出したことでほっとした私は、この場にどっかりと座り込みたい気分だった。

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