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第二部外伝・そのころ彼らは2

書いていて思ったこと。


「うわぁ、駄文だこれ」


……すいません。

「で、結局何なんスかこれ?」


 大惨事が発覚したオフィスビルのワンフロア。

 そこで気持ち悪い状態から復帰した残念部下はそう聞いた。


「あ、まだいたの?」


 そういえばいたなぁ、なんて言葉をさらっと言ってのける同期の主任。

 正直発覚した事件が大事すぎて、誰のおかげでその全容を把握できたのかなど綺麗さっぱり忘れてしまっていた。


 余談だが、人間の脳が行う情報管理は意外と面白い形式をとっていることをご存知だろうか。

 脳に入ってきた情報は、大きく分けて「誰」が「何」をしたかという情報で一旦脳内にそのままプールされる。

 それが時間の経過と共に、余分な情報は削除されて情報が整理されていき、「誰」と「何」の情報が分断され、個別に記録されていくのだ。

 結果、「誰」の情報も「何」の情報もしっかりと存在しているものの、「誰が何をした」という情報そのものは抹消されてしまう。


 つまりこの場合で言えば、残念部下が行ったハッキングという行為が分断され、「残念部下」と「ハッキングした」という行為に分かれている。

 そして彼らの脳内では残念部下をできればいなかったことにしたいというか話に参加させたくないという事情から、うまい具合に「ハッキングした」という情報だけが脳内に残される結果となった。

 それはつまり――――


「うわひでぇ、この人ひでぇッスよ部長」


「あ、まだいたの?」


 ――――おっさんのほうもこの部下の存在を綺麗さっぱり忘れていたということであった。


「うわひでぇ!? 味方が一人もいねぇッス!?」


 一番の功労者が一番ひどい扱いを受けるという現象が発生するのであった……



――――――――――



「ヒソヒソ(どうします部長?)」


「ヒソヒソ(どうする、って言ってもなぁ、現地人に情報公開しないのが原則だしなぁ……)」


「二人ともなんでヒソヒソって単語だけで会話できるッスか?」


 主任と部長は擬音とかではなく、真面目に「ヒソヒソ」という言葉で会話をしていた。

 実はこれ魔法の一種だったりするのだが、この世界に魔法は存在しないことになっているのでただの不思議現象だ。


「ヒソヒソ?(しかしこいつの能力「だけ」は本物ですよ?)」


「ヒソ、ヒソヒソ(うむ、電子精霊のプロテクト5分で破ったのはさすがに恐れ入ったな)」


「ヒソヒーソヒソ、ヒソーヒソ(ここは部分的にでも情報を公開して、協力してもらったほうがいいのでは)」


「なにこれこわい」


 しかも別段小声で話しているわけでもなく、普通の声量でヒソヒソ言い合っているのだ。

 ふざけているとかでない限り、いやふざけていたとしても、いい大人がそんなことをやっていればはっきり言って気持ち悪いだろう。


「ヒソ、ヒソォ……(仕方ないか、責任は俺が取ろう……)」


「ヒソヒソ?(私に任せてもらっても?)」


「ヒソ、ヒソヒーソ(ああ、好きにやってみろ)」


「ヒソッ(わかりました)」


 わりとマジでひき始めた残念部下の前に、彼が親しみと憎しみを放たずにはいられないアイテム担当主任が姿勢を正して立つ。

 やっとまともな会話が始まると安堵する残念部下に、主任は爆弾発言を放った。


「トロンさんと異世界旅行とかしてみたくないか?」


「何でもまかせろ」


 ガクッと体を揺らすおっさん含め社員一同。

 せめて内容くらい聞いてから返事をしろよと思わずにはいられない状態であった。


 返事をしたときの部下の顔は、誰も見たことが無いほどキリッとした真剣で男前な表情だったらしい。



――――――――――



「ほへ~ん、つまり部長達は異世界の人間で、剣と魔法なファンタジ~な世界の住人なわけだったんスね」


「まぁそういうことだ、言うほどファンタジーなわけでも無いけどな。

 ご都合主義なんて滅多に起こらないし、魔王もいるっちゃいるけど別に悪者ってわけじゃないし」


 結局当たり障りないことを話しつつ、自分たちが異世界の人間であることをカミングアウトした主任。

 しかし部下の反応は思った以上に薄く、むしろ話した主任達のほうが拍子抜けしてしまうほど納得している様子であった。


「まぁちょいちょい変かなとは思ってたッスからね。

 政府のパソコンより厳重なプロテクトがかかってるとか、いい年こいた大人が恥ずかしげもなく勇者勇者言ったりとか」


 前々から不審に思っている場面はあったようだが、彼としてはそんなことを言って職場を追い出されるような事態は避けたかったのであろう。

 自分の好きなパソコンを使って作業する、しかもそれがネットゲームの管理側という一度はなってみたかった立場の仕事。

 それを藪蛇でクビになるくらいなら、という程度には頭を使うことができたらしい。


「まぁ、そんなこたどうでもいいんスよ」


 そんなこと、と言ってしまうほど、彼にとっては重大な事件が起こっているようだった。

 それが何かなど、今更あえて語る必要など無いだろう。


「俺は何をすりゃいいんスかね?」


 トロンと旅行するためには、とつけないのはわざとであろう。

 おっさん達が何をしたいのかはわからないものの、やろうとしていることが結果的に異世界旅行ということになるのだろう。

 それを理解している部下は、無駄に言葉を使ったりはしない、むしろ自分の余計な感情を混ぜて話をこんがらがせてしまうほうがこの場合はマイナスなのだ。


「うむ、実はそこから相談したい」


 主任は自分たちが何も思いついていないことを含ませ、丸投げに近い形で部下に聞いてみる。

 一般的な会社の上司などであれば、メンツやらプライドやらの問題で何かしらの指示をしようとはするのだが、彼らはこの世界の人間ではない。

 事態の状況もあいまって、形振りかまっていられる状況ではないこともわかっている。

 藁にもすがる思い、平静を保っているように見えるものの、彼らの心情はまさにそれであったのだ。


「お前さんの今持っている情報だけで、何か対策は浮かばないか?」


「好きにやっていいんスかね?」


 主任はそこで即答をせずに、一度部長であるおっさんのほうを見る。

 おっさんはそれに対し、こくんと一度頷くだけで答えた。


「ある程度までなら、内容を教えてくれればこちらで判断しよう」


「そッスか。

 じゃあ先に聞いておきたいんスけど、このFGの内容って政府は知ってんスかね?」


 その言葉を聞いて、何か思い当たる部分があったらしい主任とおっさんは同時に目を見開く。


「いや……全員では無いが、関係する部署と総理大臣は一応知っているな。

 総理大臣も状況によっては伝えられないこともあるが、今の総理は知っている人物だ」


「そうか……政府の転移装置を使えば……いやダメだ、世界の壁そのものが変質してるんだ、こちら側にいる限り干渉は……」


 真面目に返答する主任と、思い当たることを実際に口に出して確認作業に入るおっさん。

 おっさんをガン無視して、部下は可能性の話を続けていく。


「例えばッスけど、話を聞いてる限りこっちと本来転移するはずだった世界はお互いに干渉不可なんスよね?

 ただ俺がハッキングした先からの情報を見る限り、こっちの世界と過去の世界は微妙なラインで繋がってるっぽいッス」


「え、マジ?」


「ただし、多分これは俺でも無理ッス。

 触んなければこのまんまッスけど、下手に触ったら即効切断ッスね」


 そういって部下が眺める画面には、一般人には何もわからない文字の羅列がずらりと並んでいる。

 一般人でもわからないが、その情報を読み取れる主任でさえ、その文字郡のどこを見たら繋がっているのか理解できなかった。

 だからあえてそのまま、素直に質問を投げてみる。


「……どうすればいい?」


「俺がもう一人……あ、俺魔法使えねーッスから魔法が使える状態の俺がもう一人欲しいッス。

 電子精霊ちゃんを改造とかできないッスか?」


 電子精霊を改造、はっきり言ってそれは彼らの常識からすれば、モラルに欠ける行為だ。

 彼らにとって精霊とは、便利な道具などではなく共存すべき一種の生命体だ。

 それを改造するということは、人体実験をする、と言っているに等しい。

 すぐに二つ返事をすることができないでいる主任、そこに声をかけたのはやはり、おっさんだった。


「電子精霊は生き物だ、内容によるが改造は認められん」


 その言葉を聞き、部下はあぁと何か納得したような表情を見せる。


「言い方が悪かったッス、改造はダメですけど、鍛えるのはアリッスよね?」


「き……鍛えるって……」


 精霊とは本来であれば、人智の及ばない超常現象に近い存在なのだ。

 それを鍛える、というのは、アスリートにスポーツを教えていいですか? と聞いているようなものだ。

 普通の人間が言えばただの無知でしかないはずの発言なのだが、今この場において、彼を無知だと言える人物はいなかった。


「……許可しよう、どれくらいかかる?」


「それは電子精霊ちゃん次第ッス……今は2月……旅行には春先がいい感じッスね。

 全部解決させるまでに2ヶ月ってとこでどうッスか?」


「いや異世界だからこっちの季節関係無いし……」


 こうして、不純な理由によってトライ救出作戦の計画は立てられたのだった。

すいません……


一応伏線的なもの出してるつもりなんです。

1日2話投稿は頭が疲労していてダメですね。

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