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つまりこの話はあれだ、ええっとなんだ、まあ読めばわかる話なわけだ

お久しぶりです。


初めましての方は本編を読んでからじゃないと意味がわかりませんのでご注意ください。


次回作考えてる時に「つまりこの話はVRMMO異世界転移テンプレものの【エピローグ】部分を具体的に書いたものだ」というまたアホなタイトルを考えた時に思いついたネタです。

時系列的にはトライが異世界転移して戻ってきた後の話としてイメージしています。


何のメッセージ性も無いので気楽にお読みください。

 白い光の中

 爆発しているかのような光の奔流は、瓦礫を巻き上げて光の中に黒い影を映し出す。

 光がもたらす破壊の影響で、黒い影はすぐに消えてしまう中、1つだけいつまでも消えずに残る影があった。

 

「なぜだっ! なぜ貴様は死なないのだ人間!」

 

 光の中心から響く低いエコーのかかった声、とても人の言葉を話せるとは思えない巨大な獣はそう問いかける。

 

 いつまでも消えない黒い影。

 今までその圧倒的な力で踏み潰し、虫けら程度にしか感じていなかった種族に。

 

「俺は貴様とは違う」

 

 黒い影から、そんな言葉らしき音が聞こえた。

 

「俺には、守るものがある。

 俺の力は、貴様のように破壊をするためのものじゃない!

 俺の仲間を、俺の後ろにいる人を、お前のような存在に脅えるみんなを守るための力だ!」

 

 影から響く音は、しっかりとした言葉になり、周囲に響き渡る。

 

 その言葉を聞き取った巨大な獣は言葉をさらに続けようとしたが、次の瞬間に起こった出来事のせいで言葉を失った。

 

 ズドーン!

 

 突然、光は影を中心に発生した見えない壁のようなものに押し返されていき、全てを破壊するまで止まるはずの無かった攻撃が一瞬で消え去る。

 それは全力だった、獣が持てる全ての力を使ったはずだった、虫けら相手に使うにはもったいないほどの全力だった。

 今、その全ては「だった」という過去形でしか語れなくなってしまった。

 

「バカな……」

 

 光の中にいて、黒い影にしか見えなかった「人間」という種族の男。

 弱いからこそ、自分以外の何かを利用することでなんとか強いと言える存在になる種族。

 獣は今までそう認識していたし、男が現れた時もそうとしか思わなかった。

 

 黒い巨大な剣。

 赤黒い悪魔のような鎧。

 

 それらがあるからこそ、この存在は「弱くは無い」とは思った。

 しかしそれは今回に限った話ではない。

 かつて踏み潰してきた虫けらの中には、同じような装備をしていた者がいた、むしろもっといい装備をしていた者だっていたのだ。

 そして獣は、そのことごとくを踏み潰してきた。

 

 そんな自分の全力を、この男は打ち消した。

 たかが虫けらでしかなかった、「人間」が。

 

 獣は、そんな存在を呼ぶに相応しい言葉を1つしか知らない。

 

「まさか……勇者」

 

 自らを倒せるほどの力を持つ存在、いつか訪れたはずの戦いが、知らぬうちに始まってしまっていたのかと獣は思う。

 

 そして今、その戦いが終わるのかもしれないということも……

 

「スペースバインド!」

 

 突如、竜巻のような黒い渦が獣の周囲に出現し、押さえつけるようにして拘束する。

 

「トロ……「早く! 長くは持たないわ!」……わかった!」

 

 走り出そうとする男の体に、光の粒子が狼のような形になってぶつかってくる。

 

「これは、ビーストソウル!?」

 

 男は咄嗟に、この力を使えるであろう人物のほうへと振り返る。

 そこにいるはずの、自分が一番大切に思う女性を見るために。

 

「……あとは、お願い……します」

 

 女性はガクガクと震える足で立ち、それでも最後の希望を男に託すために倒れようとはしない。

 

「おのれ人間があああぁぁぁっ!!!」

 

 今すぐ彼女にかけより、抱きしめてあげたい。

 だが彼女が本当に望むことはそんなことでは無い。

 

 男は、自分がするべきことをするために前を向く。

 

 目の前には獣が最後の悪足掻きで放った光のブレスが迫っている。

 だがそんなものは関係無い。

 彼はただ真っ直ぐに前へ進み、全力をあの獣に叩き込むだけだ。

 

「スキルインターセプト!」

 

 光の壁が男とブレスの間に入り込み、ブレスが壁とぶつかる。

 今度はわざわざ振り返る必要は無い。

 いつだって、一番男を理解して、いつでも助けてくれていた親友がやってくれたはずだから。

 振り返るという無駄な時間を使う必要など無い。

 

「行けぇっ!」

 

 声援に答える必要さえも無い。

 

「もう……ダメッ」

 

 例え拘束を打ち破られる寸前だとしても、もう止まる必要は無い。

 

 男は、弾かれるようにして飛び出す。

 

「うおおぉぉ!!!」

 

「ぐおあぁぁ!!!」

 

 軽いボッという爆発音と共に、ついに獣を拘束していた黒い渦が破壊される。

 自由を得た獣は、目の前に迫る男を睨む。

 もはや小細工も、なりふり構っていられる余裕も無いと本能で感じ取ったようだ。

 かつて無数の敵を葬り去ってきた、どんな破壊の力よりも信じられる絶対の一撃。

 

 自らの牙を持って、男の命を喰らおうと飛び出す。

 

 男と獣がぶつかり合う瞬間―――

 

「ぐっ……はっ……」

 

 ――― 一瞬だけ早く、獣の牙が男の脇腹をえぐりとった。

 腹と左足の左半分を失い、完全な致命傷。

 意識を失うか、あまりの痛みにショック死してもおかしくないほどのダメージ。

 

 決まった。

 

 獣はそう確信し、油断した。

 

 まだ男の目が死んでいないことを、獣の顔の位置からは見えなかったから。

 

「……ま……だ……だああぁぁぁあっ!」

 

 男は剣を降り下ろす。

 

 世界はゆっくりになった。

 

 驚愕の表情を浮かべた獣が息を飲む。

 

 ゆっくりと、ゆっくりと降り下ろされ、背中に隠された弱点へと吸い込まれるように迫っていく。

 

 鉄のような突起に隠された弱点、位置がわかっているかのように迫る剣が、突起に触れた瞬間。

 

 バキバキッ! パキィーン!

 

 鉄より遥かに硬いはずの突起は、まるで木の板を割ったかのようにあっさりと破壊されていき、その奥に隠された水晶を破壊した。

 

「バカな……人間ごとき……に……」

 

 獣の瞳は色を失い、地上へと降り立つ前に死を迎える。

 全身が灰色へと変わり、砂が風に舞うようにして削り取られていく。

 地面へとぶつかった時、そこに残ったのは灰のような白い砂だけだった。

 

「……イ……さん! ……トラ……さん!」

 

 しかし男も、すでに死に体の状態だった。

 立って着地することなどできず、勢いのままに無様な転がり方をして倒れている。

 

 それでも剣だけは放さないままであるのは、彼が本当の戦士であったことを証明しているかのようだった。

 

「イヤ! 死なないで!

 この戦いが終わったら結婚しようって言ったじゃない! お前がいる限り死なないって、約束したじゃない!」

 

 獣を倒した喜び、そんなものはどうでもいいと言わんばかりの勢いで男に駆け寄る女性。

 二人は、そういう仲だった。

 

「……悪い、俺は……死ぬみたいだ……」

 

「や、やだよ、そんな、そんなこと……っ、言わないで」

 

「先に……行ってるよ」

 

 男は、愛した女性に片手を伸ばし、彼女の頬に触れる。

 

 彼女は愛する男性の手を取り、自分の頬へとすりよせる。

 

 冷たくなっていく体と、少しでも温もりを伝えようとする二人が触れあい―――

 


 フッ

 

 

 ―――男の力が、唐突に無くなった。

 

「……あ」

 

 男の目は輝きを失い、虚空を見つめている。

 

「いや……いやぁ……」

 

 笑顔のままで。

 

「『イトラ』さん! イヤーーー!!!」

 

 イトラと呼ばれた男性は、死んでも剣を放すことは無かった。

 

 

 

 to be continued……

 

 

 

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 近日公開!

 

 

――――――――――

 

 

「「はぁ〜〜〜……」」

 

 長い長〜い溜め息を吐くのは、テンプレイケメンのテルこと光明院こうみょういん 照明てるあきと、これまたテンプレ美女の幼馴染みである宮澤みやさわ 綾華あやかであった。

 

「ううっ、ぐすっ、あうぅ〜」

 

 その隣で号泣しているのは、二人の1つ年下になる後輩、たちばな 莉奈りなだ。

 二人と違って成績も慎重も胸のサイズも残念ながら普通だが、綾華と違って美人系ではなく可愛い系の意味で整った顔をしている。

 

「リィンさん(イトラの相手役)の悲しみが伝わってきそうですぅ〜、うぅっ」

 

 ヒクヒクと口の端をひきつらせて苦笑いを浮かべる二人。

 

 ふと、その莉奈を挟んで向こう側にいる人物が目に入った。

 このメンバー以外からは「喧嘩番長」などと呼ばれる、いつも一緒にいるこの四人組の最後の一人。

 

 三神みかみ 従朗じゅうろう

 

 彼はこういった映画などに来るとすぐに寝てしまうタイプだ。

 今回も顔をうつむかせ、動こうとはしていない。

 どうせまた寝ているんだろう、仕方ない、そうテルは思い、起こすために手を伸ばして三神の太股を叩く。

 ビクッと体を震わせた意味もわかろうとせず、テルは話しかける。

 

「終わったぞ、起k「べ、別に泣いてねーし、ズズッ」……そうか、スマン」

 

 彼にしては珍しく起きていたらしい。

 よくよく見れば目のあたりが照明の明かりを受けてキラリと光ったような気がする、すぐにそっぽを向いてしまったのでテルには見えなかったようだ。

 というか見えなかったことにしたようだ。

 

 四人の前にある巨大なスクリーンには、エンドロールの最後、製作・総指揮の名前が表示されていた。

 

 

製作・総指揮 ANS・O・S

 

 

「とりあえずあのOSSANは一回シメたほうがよさそうだ」

 

「そうね、三回はやっといたほうがいいわね」

 

 二人の気持ちはさておいて、今日も映画「ファンタジーゲート・ザ・ムービー」は興行収入1位の連続日数記録を維持し続けるのであった。

 

 ちゃんちゃん♪


続く……のか?(笑)


投稿してすぐに字下げしてないことに気づいたので修正

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