口は災いの元。
麗子先輩が来られた翌朝。私は希望に胸を躍らせて出社しました。
麗子先輩が来られるまで、私はドキドキもんです。
「おはよう御座います。荻先輩。今日から宜しくお願い致します。」
「おはよう!皐月ちゃん。今日からしごくわよ!覚悟してね!」
「ハイ!しごいて下さい!」
私は勢いあまってつい「しごいて下さい!」と言ってしまった。
私の周りの先輩方は一斉にこっちを向いた!
ハッ!・・・しまった~~!!私は何て無謀なことを言ってしまったのか!自分のこの口が憎い!
そうなのです。麗子先輩は「女の中の男」と異名を持っている上司なんです。
私が入社した頃に先輩方が「もう直ぐ、アノ先輩が帰ってくるなぁ~~。怖いぞ~~。」と聞いた事を思い出したのです。そう、この方こそが「アノ先輩」だった事をすっかり忘れていたのです。
先輩方は私を見て何か言いたそう・・・
多分、「ガンバレ!」「おまえ、よく言った!」「ご愁傷様」とかの言葉を言われているみたい。
皆さんの「目」を見ていれば分かります。仕事が終われば皆さんは、私をさかなに一杯飲みに行かれるのでしょうね。ハァ~~~・・・・私の馬鹿!!
そして、今日から麗子先輩の指導が始まりました。
その仕事は器具のマニアルが全て頭の中に入っているのか専門用語の連語。
おまけに精密な機械の具合まで綺麗な長い指で器用にチョチョイがチョイ!と、まるでマジシャンのように分解。組み立てをされています。そして、麗子先輩の指が20本あるか?と思います。
だけど、私は悲しいかな指は両手を合わせて10本しかないのです。
まるで、手品を見ているようです。凄いです麗子先輩!
ウチの部署ではこのように出来る方はいません!多分ですが。
そして、馬鹿な私は麗子先輩に馬鹿な質問をしていたのです。
「先輩!凄いですね!その指さばき!!私にも出来るようになるのですか?」
「ハァ~~~!!!・・・皐月ちゃん。私を馬鹿にしてるの?それとも・・・・・」
「せ、先輩!決して馬鹿になどしていません!!悲しい事なのですが私にも指が10本。それに、そのような器用さは無し。ただ、自分が情けなくて。」
「・・・・・皐月ちゃん!あなた。私は器用では無いのよ。でも、出来るようになるまでは!努力よ!何事も努力!」
「ハイ!努力します。」
「当たり前でしょう。そんな事!」
ここで、止めとけば良かったのに馬鹿な私は、心の声が口から出てしまったのです。
「麗子先輩の指使いってまるでマジシャンのようですね。素晴らしいです~~」
麗子先輩は私の顔を見られて無言になられました。そして、その場に居た先輩方も下を向かれています。
もちろん、笑われておられるのです。私は「褒めた」つもりだったのですが、何がいけなかったのか?
「皐月ちゃん。あなた、私を馬鹿にしているの?」
「い、いいえ!違います。私はただ、先輩は凄いなぁ~と思ったもので。・・・すみません。」
私はある先輩から麗子先輩は何故?「馬鹿にしてるの?」と言われたことについて聞いてしまったのです。それは麗子先輩の手は大きいのです。私は気が付きませんでしたが。そして勿論、手が大きい分、指が長い&大きい(太い)その事が先輩の最大のコンプレックスだと知りました。
そして、「手」「指」のついては禁句だと。
先輩、知らずとはいえ、すみません!以後、気をつけたいと思います。
明日から、麗子先輩の顔が見れません!恥ずかしくって。それに、部署の先輩方のも思いっきり笑われて・・・私、暫らく立ち直れないかも・・・・・
今年、入社した皐月ちゃん。本当に参ったわ!私の指使いが素晴らしいって・・・・・
部署は誰も出来ないからこのわ・た・しが仕方が無いからしてるのよ!
マジシャン?誰がマジシャンなのか。素晴らしいって、どう言う意味よ!
本当に、この先、大丈夫かしら?この子。
そして、私の最大の関心事は・・・・・皐月ちゃんっていったいどのような家庭環境で育ってるの?
あまりにも、今まで入社した子達とタイプが違うから、興味あるのよね~~~。