入学試験
入学試験の会場にやってきた。やはり人が多く、すぐ、はぐれてしまいそうになる。それだと、色々面倒くさい。だから、俺は麗華の手を掴んで、受付まで引っ張った。
「ちょっ...ちょっ!!無理やり引っ張んないでよ!!」
なんかキレた。しらんけど。
「あ〜すまん」
「なんかムカつく」
そんな会話をしていると、受付の順番が回ってきた。職員に色々と説明を聞かされる。まぁ、俺が頼んだだけだけど。
「試験合格に大切なものは、魔力量と実技の結果などです。試験内容は『魔法実技・魔力測定・筆記』です。筆記より実技が大事です。評価点の最大値は200です。クラスは下からD/C/B/A/Sと別れています。Dはギリギリ合格ライン。Cは平均より少し低い。Bは平均かそれより上。Aは平均よりかなり上。Sは年に一人か二人しか出ません。Sクラスの条件は、魔力が50000以上。実技が180点以上。筆記140点以上です。これで、説明は終わりです」
すごいな。
「ありがとうございます」
「では、お二人は番号440と441ですね。右に曲がって、門に入れば、試験会場になります。必ず、番号札を試験官に見せてから、入室してくださいね」
「はい。ありがとうございます」
俺等は、言われたとおりに行動し、無事、席に案内させられた。最初は筆記試験らしい。
試験官たちが合図をする。
「試験はじめ!」
筆記試験が始まった。時間は60分。余らすこともできる。だが、あえて、わからないふりをする。だって、別にSクラスにもなりたいわけでもないし、目立ちたいわけでもない。まぁ、決して陰キャではないが、目立つとめんどくさそうだからである。幸い、この筆記試験は本で見た知識がほとんどで、楽勝。満点を取るつもりはない。あえて間違う。この程度の、筆記試験なら、麗華も楽勝だろう。
■
筆記試験が終わり、解答用紙は回収された。次は魔力測定。俺は魔力が50000以上あるから、わざと抑えて、30000程度にしておこう。
「レイ〜!」
「麗華。どうした?」
「私、筆記自信ない〜!!」
「それは乙だな」
「ひどいってぇ〜慰めてよ〜」
あーメンドクサ。まぁ...慰めるくらいならね。
「はいはい。麗華は頭良いし、大丈夫だよ」
麗華の表情が明るくなった。
「ありがとぉ!!元気出たよぉ!!」
ちょろすぎだろこいつ...まぁいいか。
その時試験官に呼ばれた。
「440番のレイ・キノシタ。魔力測定を行う。前へ出なさい」
「はい」
「よろしい。では、ここに手を置きなさい。魔力数値がでるはずだ」
俺は、魔力を隠蔽し、30000ほどにした。
『32795』
「よろしい。次、441番、レイカ・ハナムラ前へ」
「はい」
「手をおいて」
麗華が手を置く。
『49982』
「おお。これはなかなか見ない数値だ。レイカさんはAクラスは確実だ。おめでとう」
「ありがとうございます」
俺は、気付いた。試験官がAクラス確定と言った時、他の試験官の表情が少し、怪しくなった。もしかしたら、優秀な人間をなにかに使うのか?まぁ...禁忌魔術研究をしてるとかの噂を聞いているから、考えてしまっているだけだろう。考えすぎか。
「麗華すごいな」
「えへへ!ありがと!」
■
最後は実技試験。内容は簡単。自分が得意な魔術や何かをやればいいと。俺は、職業が錬金術師だし、剣でも錬金しとくか。
その時ふと目に入ったのは俺の一つ前の439番。名前は確か...セレナ・クロウディア。今年の首席候補らしい。確かに雰囲気とオーラ、構え方はプロ並み。まぁ、実力はどうなのか。
「439番セレナ・クロウディア。始めてください」
「はい」
力強い返事。女子とは思えないほどの、言葉の圧?みたいなのが伝わってくる。ただの女子の声なのに。麗華とは大違い。セレナ・クロウディアも穏やかの声だが、言葉の重みが違う。セレナ・クロウディア...仲間にしてみたいな。ニヤッ。
「では。始めます...ふぅ...魔力よあつまれ。そして火の球を作り出せ、ファイヤーボール」
で...でかい。嫌な予感しかしない。
「麗華!!」
麗華を素早く、自分の後ろに。
「魔力結界」
セレナ・クロウディアが放ったファイヤーボールは的にあった瞬間、後ろの壁まで吹っ飛んだ。おまけに波動がすごい。破片もいくつか飛んできた。結界を展開しといてよかった。盾じゃ、麗華まで守れないしな。
そして試験官はというと...無事、地面にめり込んでいた...
「つ、次...440番、レイ・キノシタ」
「はい」
セレナ・クロウディアのあとだ。視線を引いている。普通の人ならば、緊張するだろう。だが俺は緊張しない。何個か披露しよう。満点や、高得点にならない程度で。
「まずは...質の良い剣を作ります。錬成...」
ガチャン
「できました。試験官さん。どうですか?」
試験官は驚いた表情をしている。
「お、おお。なんとも素晴らしい。これほどの質の剣は、この国にはないでしょう。他にできることはありますか?」
「もちろんです」
次は、火と水を混ぜた魔法を試してみよう。
「はっ...」
瞬時に水の玉が生成され、その中に炎を灯す。
「よし」
試験官は『は...?』と言った。
続けてこう言った。
「人間に可能なの...これ」
どうやら、これは、人間がやるのは困難らしかった。これで首席...Sクラスは確定。オワタ!
なんだよ。やり方なんて簡単だろ。右手に魔力を集中させて、火と水に使う魔力を分けて、使えばできることなのにな。このどこがむずいのかがわからない。まぁいいか。
■
無事に麗華も試験を終え、宿に変えることができた。
合格発表は明日。楽しみだ。
ねっむ。
寝てきます。