世界線
【朝】
「麗華。起きたか」
麗華は眠そうに言った。
「おはよぉ〜」
俺はいつもの様子の麗華を見て微笑んだ。
何もなくてよかった。もうすぐ出発する。今から向かうのは、この国の近くにある、砂漠?みたいなとこ。
そこで、俺は何かを感じ取った。そのために行く。
「もうすぐ出るぞ。じゅんびしろ」
「分かってるわよ。もうちょっと優しく言いなさいよ」
俺はまた、麗華の説教を30分聞くはめになった。
「麗華。行こう...」
「そうそう。その言い方が良いわ」
めんどくせぇ女だこった。
■
俺と麗華は国を出て、近くの砂漠地帯に来た。
「レイ〜ここになんかあるの?」
「まぁ、俺は、この辺りから、何かを感じたんだ。もしかしたら、未発見の迷宮。もしかすると、未発見の大迷宮の可能性もある」
麗華は驚いてる様子だ。まぁ無理もないが。
「だが、未発見の迷宮は超危険だ。俺が読んだ本には、新発見の迷宮には最低100人居ないと、全滅すると、書いてあった」
「あ...え...」
「怖いのか?」
「いえ。ここで、怖がっていたら、レイの隣に居れないもん」
俺は微笑んだ。
「そうか。では行こうじゃないか」
入口は見つけるのではなく。自分で作るもの。
神力を使った、闇炎をここに撃ってみよう。
「闇炎」
瞬く間に、闇と言える、漆黒が砂を飲み込み、入口を作った。
「れ、レイ...何をしたの...」
「教えないよ」
「あっそ」
どうでもいい話はさておき、入口は作れた。この先何があるかはわからない。麗華を守りながらの戦闘の練習になりそうだな。
「麗華。準備はいいか?」
断固とした表情で。
「ええ。もちろん。逃げることはしないわ」
「その言葉に嘘はないな?」
「もちろん」
俺は感じた。嘘はないと、はっきりと。
「では行こう」
■
入ってすぐに、分岐点があった・どちらに行くか。
「麗華はどっちにする」
「右に行きましょう」
「わかった」
右に行き、少し経った。眼の前には魔法陣。なんの魔法陣かはわからない。だが、行くしかないことには変わりない。
「麗華。行こう」
「うん」
麗華の返事には迷いがないようだった。
俺等は、魔法陣に乗った。その瞬間、視界が暗くなった。
■
「...ここはどこだ」
「レイ...!」
麗華が隣りにいた。だが、雰囲気が違う。罠かもしれない。だが、断定はできない。十分注意して、行動しよう。そしてここは...さっきの分岐点か。
「レイ。どっちに行く?」
「左に行こう」
「わかった」
左の道を歩いていると、大きな空間にたどり着いた。その時、龍が魔法陣から出てきた。
「なに!?」
麗華を見ると、足をブルブルと震わせて座り込んでいた。
「麗華!!立て!!死ぬぞ!!」
「た、立てない...」
龍を見ると、麗華にブレスを撃つ寸前だった。
「くそが!!」
俺は即座に、麗華の前に立ち、盾を展開した。
「おりゃあぁぁぁぁぁぁ!!」
バキバキ
骨の折れる音がする。もう限界だ。
「麗華逃げろ!」
麗華は泣いている。こうなるのだったら、無理やりでも国に残しとくべきだったな。
「ぁ...れ、レイ...ご、ごめんね...」
麗華は走って逃げた。これで良かったんだ。クソが...もし右を選んでいれば、こんなことには...
その時眼の前が割れた。
■
「ここ...は」
『ここは現世界線です。貴方は右の道に来たため、先程の未来にはならなかったのです』
「もし、左に行っていたらどうなんだ?」
『先程見た未来になります』
「そうか...」
麗華はいない。分断されたか。
「そんで、お前は誰だ。それと現世界線?何だそりゃ。教えろ」
『わかりましたよ。私はこの迷宮...正しくは世界線の部屋の創造者のアストレイアです。そして、現世界線。正しくは世界線に関してお話いたします。まず現世界線から。現世界線とは――貴方が今まさに存在している“唯一の現実”を指します。けれど、この世界は一本の直線ではなく、選択と可能性によって幾千もの分岐が生まれているのです。右へ進めば一つの未来、左へ進めばまた別の未来。分かたれたそれぞれの道は“世界線”と呼ばれ、互いに交わることはなく、ただ並行して流れてゆきます』
「矛盾だらけじゃねぇか?」
『貴方は右を選んだ。だから、今この瞬間は揺るぎない“現世界線”として確定している。けれど、左を選んだ可能性も確かに存在し、確かにどこかで流れている。それを矛盾と呼ぶのか、それとも摂理と呼ぶのか……それは、観測者によって異なるでしょう』
「なんか、俺にはわからないもんだな」
『分からなくてよいのです。世界線とは本来、人の理解を超えた理。そのすべてを知ろうとすれば、迷いに呑まれ歩みを失うだけ。大切なのは一つ――今この瞬間に何を選び、どう生きるか。それこそが現世界線を紡ぐ唯一の力であり、未来を形作る真実なのです』
「そうか。そんで...この後どうすれば良いんだ」
『もうすぐ、麗華さんが来ると思います。それと、これを貴方に。貴方には何かを感じる。この指輪を人差し指につけてください』
「これはなんだ?」
『レリックです。個名は未来視の指輪。最大30秒先の未来を見ることができます。魔力もあまり消耗しませんが、見た未来によっては、精神崩壊を起こす場合があるので、気をつけてください』
「わかった...」
『では、私はこれで。この場所を見つけてくれて、ありがとう』
アストレイアが消え、麗華がちょうど戻ってきた。
「レイ!」
走ってきた。
「お、おう。なんだ」
「怖かったよぉ〜」
「そ、そうか」
俺等は、この、世界線の部屋を出て、次の国に向かうことにする。
「レイ。どこの国に行くの?」
「ルミナリア魔導国に行って、学院に入ろう。新しい仲間も集めたいしな」
「...う、うん。いこう」
更新遅れてすみません