フィンスター二スからの試練
光が収まり、周りを見渡す。赤いカーペットが敷いてある。
人の姿は見えない。それよりも――
「無駄に高級なのムカつくなぁ゙。迷宮のくせにぃ゙」
歯ぎしりする。
ギリギリィ゙
歯ぎしりしながら、歩いていく。その時だった。
軽く左足が沈んだ。よく見ると、床にトラップがあったみたいだ。
「こりゃあ…なんか始まるな」
眼の前に粒子が集まって固形化するのがわかる。
急いで武器を作った。ナイフっぽいものを。適当に90本ほど作ってみた。まだ、準備状態。今のうち倒したほうが良さそうだ。
ナイフを投げる。刺さった。けれども、あまり効いてないように見える。
「こいつも頑丈だな…なら、波爪!!」
ズドォォォン!!
豪快な音と共に、バラバラになった。
「準備が長いんだよ。こりゃ、この迷宮の制作者が悪いなぁ」
少し先の床が開き、階段が現れる。
■【210階層目】
「おお」
眼の前には扉があった。まるで、玄関のように、きれいな210階層。
『フィンスター二ス大迷宮210階層へたどり着いた君――私の名はリーア・フィンスター二スである。私は、この迷宮の制作者、そして元神の使徒である。君は、フィンスター二ス大迷宮作成以来、初めての210階層へ辿り着いた人である』
「あーそうかい。それで、なんだよ。元神の使徒ってのは」
『この扉の向こうにすべてが詰まっています。私の知識、スキル。人間に害が無い程度のスキルとですがね』
扉を開ける。
「最後の試練かよォ゙…まさか、自分との対決とはなぁ゙」
俺が言う。
「ははは。全くその通りだなぁ゙」
ムカつく。
「チッ…作り物の姿の俺がぁ゙、自我もってんじゃぁねぇ゙ぞ」
「錬成…」
俺は錬成を始める。錬成できる時間はあると考えたからだ。
「俺をナメてんのかぁ゙?」
めっちゃムカつく。
「偽物の俺が何言ってくれんだよォ゙…ムカつくんだよなぁ゙」
「ああ。もちろん偽物のお前だぁ゙、作り物だなぁ゙。それでもいいんだぁ゙。お前を殺して、本物になってやろう。こりゃぁ、良い案だなぁ゙」
バリムカつく。
「しねぇ゙」
今作った武器を出す。
「ピストルだぜ。魔力を弾丸化させて発射させる。リロードなんぞ、ねぇわ」
ドンッドンッ
「そんな物で自分を倒せると思っているのかァ゙?」
「そんな事はねぇわ」
ガッチャン
「こいつは、対物ライフルだァ゙。名前はヴァルグレイヴ。連射可能だぜぇ゙!」
「させるかァ゙!!」
にやりと笑う俺。もう遅い。射程範囲内。避けれると、思っている時点で、偽物丸出し。
魔力を貯める
バチッ
引き金を引く。
「しねぇ゙!!!!」
ズドン!!
「!?クソがァ゙!!!!!!!」
ドシャッ――
返り血が少しかかる。
「偽物のくせに、血まで、ちゃんとあんのかよ…気持ちわりいなぁ」
『おめでとうございます』
「お前か。随分めんどくさい試練を課してくれたな。めっちゃムカついたぜ――」
『ふふっ。まぁ、試練をクリアしたので、私の知識、スキルを与えましょう――今、姿を現します』
キラキラ――
「おお。随分と粋な演出だこと」
リーアの姿は、大人でもなければ子供ではない女。大人と子どもの中間層。高校生辺りだろうか。銀髪で、胸はそこそこ。瞳は水色。顔は可愛いが…見る限り、性格は…微妙。
「随分若いな」
ニヤニヤしながら、近づいてくる。
「私の魅力に惹かれた〜?」
「あるわけねぇ。早く、知識とスキルをよこせ」
不満そうにリーアが言う。
「つれないなぁ〜もうわかったよぉ。これスキルね。あと知識を頭にぶち込んだよ」
「頭痛がするな。目が、おかしいな…」
笑顔のままで。
「それもスキルの一部と思ってください」
少しムカついた。
「適当だな」
「うるさいな…我慢してよね」
少し睨んだが、落ち着く。
「はぁ。まぁいいや。スキルと知識をありがとう」
調子に乗るリーア。
「礼を言うなら、崇めたまえ〜」
「黙れ。帰るからな」
「幸運を祈るわ。くれぐれも神を崇めたりしないでね」
俺は笑う。
「ははは。俺は神なんぞ信じねぇ。じゃあな」
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