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殺し屋少女と食人鬼  作者: 十三番目


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第三十八食 それ俺のことやんね


「列車を襲った目的は何ですか?」


 生き残った男たちは車内の座席に腰掛け、怯えた表情で俯いている。

 サヤの圧に押されたリーダーの男が、やむを得ず口を開いた。


「……金が、欲しかっただけだ」


「お金のために、わざわざ列車を選んだんですか?」


 サヤの疑問はもっともだ。

 単にお金が必要なだけなら、他にも色々と手段はあった。


 おそらく、金銭を求める以外にも、魔術列車でなければならない理由が隠されているのだろう。

 三等車を爆破するつもりだったのも、その理由と関係があるはずだ。


「……う」


「ブレイン!」


 意識を取り戻したブレインが、のろのろと身体を起こしている。


「サンギス……いったいどうなって……」


 リーダーの男をサンギスと呼んだブレインは、目覚めたばかりで混乱しているようだ。

 傍に立っているサヤに気づくと、ぴたりと動きを止めている。


「三等車の爆弾についても聞きたかったので、ちょうど良かったです。もう一度聞きますね。どうして列車を狙ったんですか?」


「爆弾!?」


 乗客の転移を終えたオラクルが、三等車から慌てた様子で戻ってくる。

 聞き耳を立てていたのだろう。


 先に教えてほしかったと嘆くオラクルを、サヤは無視している。

 サンギスは、サヤが爆弾のことを知っていると分かり、諦めた表情でため息をついた。


「俺はフリューレジアで、とある組織を率いていた。だが、別の組織の謀略にかかり、命からがらルシーリアまで逃げてきたんだ」


 情けないリーダーだと自嘲するサンギスを、ブレインが「いいえ」と否定している。


「あれは俺が油断したせいです。敵の真意を探り切れず、サンギスにも怪我をさせてしまいました。組織の参謀なんて肩書きは、俺には相応しくなかったようです」


「ブレイン……」


「こほんこほんっ。それで、列車を狙った理由は何なん?」


 サンギスとブレインの間に、怪しげな空気が漂い出す。

 いち早く異変に気づいたオラクルが、咳払いをしながら続きを話すよう促した。


「……ルシーリアまで逃げた後、俺たちは何とかして組織に戻る方法を探していた。そんな時、フォルレンシストに、転移魔法を得意とするエルフがいることを耳にしたんだ」


「あーうん。なるほどねぇ」


 オラクルの視線が、明後日の方に逸れていく。


「だが、フォルレンシストに向かったところで、俺たちは山岳地帯を越える力も、エルフに依頼するための対価も持っていない」


「ですから、列車の人質と引き換えに、山岳地帯を超えるための装備と、エルフへの対価を手に入れるつもりでした」


 サンギスの説明を補足したブレインは、計画の詳細について語っている。

 興味深げに話を聞いていたオラクルが、顎に指を当てた。


「フリューレジアって、無法地帯で有名な国だったよねぇ。そんで、爆弾は何のためなん?」


「追っ手を遅らせるためです。フォルレンシストへの路線は一本道なので、三等車は途中の橋で爆破させて、都心部からの応援を妨害するつもりでした」


 山岳地帯に近づくにつれ、住民の数は大幅に減っていく。

 列車の経路を塞ぐことで、山岳地帯を抜けるまでの時間を稼ぐ算段だったのだろう。


「とは言え、計画は失敗しました。今回も俺が至らないばかりに……すみません、サンギス」


「違う! ぜんぶ俺が悪いんだ! 頼む、俺はどうなってもいいから、ブレインだけは見逃してやってくれ……!」


「何を言っているんです、サンギス!」


 言い争う二人を半目で眺めるオラクルに対し、仲間の男たちは鼻水を垂らしながら号泣している。


「俺たちからも頼みます!」


「リーダーとブレインさんは、見逃してやってください!」


「おまえら……」


 心を動かされた様子のサンギスが、悔しそうに下を向く。


「けどまさか、列車に騎士団が乗ってたなんてな……。ほんと、運の神に見放されてるみたいだ」


「私たちは騎士団じゃありませんよ。それに、誰の依頼も受けていません」


「……なんて?」


 サヤの発した言葉に、サンギスは耳を疑っている。

 騎士団とは国に仕える兵士の一種で、中には凄腕の傭兵や魔法師など、様々なパーティーが所属していた。


 あれほどの実力があれば、列車から逃げることもできただろう。

 しかし、あえて渦中に飛び込んできたサヤたちを見て、サンギスは国に忠誠を誓う者だと判断したのだ。


「騎士団じゃないと言いました」


「でしたら、何だと言うんです?」


 言葉に詰まるサンギスに代わり、ブレインがサヤに問いかけている。


「殺し屋です」


 ブレインが呆気に取られた表情を浮かべた。

 殺し屋とは、暗殺や不意をつく攻撃を得意とした者たちだ。

 真正面から戦いに挑むなど、普通であれば考えられない。


 唖然とした様子のサンギスとは反対に、ブレインは何かを思案しているようだった。

 顔を上げたブレインが、サヤの目を見つめる。


「依頼を受けてないと言いましたね。それなら、俺の依頼を受けてもらえませんか?」


 

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