表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺し屋少女と食人鬼  作者: 十三番目


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/46

第十三食 何があったの?


 ディスタリアを出たサヤとアルヴィスは、隣国のゴルイドまで来ていた。

 ゴルイドは商業が盛んな国で、商人たちの行き交いも多い。


 国境での検問はあったものの、五つ星パスの前には無に等しく、指輪を魔法陣にかざすだけで難なく通過することができた。


「どうして薬指にしたの?」


 指輪には、サイズを自動調整してくれる陣が組み込まれている。

 アルヴィスは左手の薬指にはめることにしたようで、サヤは不思議そうにアルヴィスを覗き込んでいた。


「秘密」


「ええ……アルヴィスのけち」


 教えてくれてもいいのにと言わんばかりの顔をするサヤだったが、すぐに街中を見て目を輝かせている。

 すれ違う人たちは、アルヴィスの容姿に息を呑んだり、目を奪われたりしているようだった。


「こりゃあたまげた。ここまでの美丈夫は、初めて目にするわい」


 不意に声をかけられ、サヤは通りに並ぶ店の方を見た。

 杖をつきながら出てきた老婆は、人の良さそうな雰囲気を漂わせている。


「お兄さん、もしかしてエルフかい? いんや、それにしては耳の長さが……」


 アルヴィスをまじまじと見つめていた老婆だが、サヤの方を向くとにっかり笑いかけてきた。


「お嬢さんたち、ゴルイドには観光に来たのかい? それとも、新婚旅行かのう?」


「ち、ちち違います! 観光です!」


「おや、そうかい」


 サヤの言葉に笑みを深めた老婆は、自身の店を指し「寄って行かんかね?」と口にしている。

 骨董品の並べられた店内に、サヤは興味を惹かれたようだった。

 

「いきましょう、アルヴィス!」


 手を引くサヤと、引かれるがままのアルヴィスを、老婆が微笑ましそうに見ている。


「珍しい形の物が沢山ありますね」


「ここの通りは、(ゲート)に近いからのう。他国からの商人も、よく来るんじゃよ」


 商業が盛んなだけあり、様々な国の物が運ばれてくるのだろう。

 楽しそうに鑑賞していたサヤだったが、奥の棚に飾られた水晶を見て動きを止めている。


 透明な水晶は、綺麗な球体をしていた。

 サヤの視線に気づいた老婆が、水晶を手に取るとサヤの目の前に置いてくれる。


「この水晶はむかし、とあるエルフから譲り受けた物でのう」


「エルフ、ですか?」


「この辺りでは、とんと見かけんくなった。珍しがるのも無理はない」


 老婆は水晶の表面を指で撫でながら、懐かしむように瞼を閉じている。

 

「エルフが言うには、こうして触れることで、神々と交信できる魔法が込められているそうじゃ。まあ、わしにはさっぱりだったがのう」


 エルフは魔法に優れた一族だ。

 習得に年月のかかる魔法だが、長寿であるエルフには向いていたのだろう。


「どんな神様と話したかったんですか?」


「ゴルイドの初代の王は、鉱物の神から加護を授かっておった。一言だけでも声が聞ければと憧れはしたが、それほど期待はしておらなんだよ」


 行く先々で金や銀、宝石の数々に恵まれた王は、富に溢れた国──ゴルイドを建国した。

 王の加護は相当強かったようで、城の中には今も、王が集めた財宝が山ほど眠っていると言われている。


 ゴルイドにおける“加護”とは、ディスタリアで言う“異能”と同じようなものだ。

 しかし、全ての帝国民が異能を授かるディスタリアとは違い、ゴルイドの国民には加護を得られない者もいた。


「触ってみるかい?」


 好奇心を刺激され、サヤは老婆の方を見つめた。


「良いんですか?」


「もちろんだとも」


 それならと手を伸ばしたサヤが、水晶の表面を指でなぞる。

 ひんやりとしたガラスのような感触。


 これといって変化のない水晶を見て、サヤが手を引こうとした時だった。

 透明な水晶の中央に、闇のような黒が広がっていく。


 急速に広がった黒は、あっという間に水晶を真っ黒な球体へと変えている。

 ぼうっとした様子のサヤが、唇だけで言葉を紡いだ。


 内側の圧に耐えきれなくなった水晶が、嫌な音を立て始めた直後──水晶が勢いよく破裂した。


「サヤ!」


 アルヴィスの腕が、サヤの身体を引き寄せる。

 水晶の周りを空気ごと圧縮させたアルヴィスは、飛び散った破片を押し込み、水晶を一粒の塊に変えた。


 米粒のように小さくなった水晶が、テーブルの上にころりと転がっている。

 我に返ったサヤが、アルヴィスの腕の中で目を瞬いた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ